3グループの分立
Bloodborneには、「ビルゲンワース・医療教会・メンシス学派」という3グループが登場します。
あまり説明されないので、分かりにくいのですが、それぞれの立ち位置を知れば、ストーリーを理解しやすくなります。
始まりはビルゲンワース
すべての始まりは「ビルゲンワース」です。
ビルゲンワースは、学者と職人から成る学術機関です。地下遺跡(聖杯ダンジョン)を調査して、古代文明を研究するための拠点でした。
大学・調査団・秘密結社を合わせたような組織であり、ここから作中の主要勢力が派生していきます。
中心人物は、ウィレーム学長です。
その仲間として、ローレンスやミコラーシュがいました。
ただし、ミコラーシュはこの時点では一学徒で、おそらくまだ有力な存在ではありません。彼は次世代のリーダーです。
ウィレームは最後までビルゲンワースに残りますが、ローレンスは袂を分かって「医療教会」を設立しました。
ミコラーシュは後に、医療教会から更に分派して、「メンシス学派」を率います。独立ではありませんが、制御を外れた存在になっていきます。
この3グループの分立が、Bloodborneを構成する軸になります。
彼らの目的は同じで、「上位者を研究して、その力を手にすること」でしたが、やり方をめぐって「慎重派・急進派・過激派」に分かれました。詳しくは後述します。

古い血
Bloodborneの物語は、ビルゲンワースが古代遺跡から、聖体(上位者)を持ち帰ったことに端を発します。
そこから「古い血(上位者由来の血)」を取得したことが原点になります。
上位者とは、人類をはるかに超越した生命体です。
人間から見れば神のように見えますが、彼らはそれぞれ個性や目的を持つ存在であり、作中では「人類より進化した高次元の生命体」と描かれています。
なぜ、上位者の血が重宝されたのでしょうか?
それは次のような効果があったからです。
・病気が治る。
・肉体が強靭になる。
・生命力が高まる。
一方で、上位者の血に依存した人間は、「獣化する」という重大な副作用がありました。
一時的には優れた生命力を得ても、やがて人ならざる獣になるという、結局は人類を不幸にする血でした。
このハイリターン・極大リスクの遺物をめぐって、学者たちは分裂することになります。
慎重派「ビルゲンワース」
学者たちの目的は、上位者を研究して、人間をより進歩させることでした。
上位者の研究は、現代で言えば高度な遺伝子工学や、進化し過ぎたAI(人工知能)のようなイメージでしょうか。良くも悪くも、人類の範疇を超える可能性があります。
これらは無限の希望を秘めている一方、人間のあり様を破壊しかねないリスクを併せ持ちます。
社会の倫理・秩序を優先する慎重派の学者もいれば、そうしたことを一切考慮せず、技術進歩だけを目指すマッドサイエンティスト的な学者もいます。
それはBloodborneの世界でも同じでした。
最も慎重だったのは、ウィレーム学長です。
したがって、彼が居残ったビルゲンワースは、上位者の血を利用することに消極的でした。
これに不満を持つ急進派たちが、分離独立していくことになります。
ウィレームは、人類は上位者の血ではなく、啓蒙(知識)によって進歩すべきだと考えました。
次のようなリスクの方を重視したのです。
・上位者の血に依存した者は、やがて「獣化」する。
・啓蒙なくして上位者に近づけば、精神が破壊される。人々が大量に発狂する。
ウィレームは、次のような警句を残しています。
・かねて血を恐れたまえ。
・瞳(啓蒙)を求めよ。
・我々は思考の次元が低すぎる。もっと瞳が必要なのだ。
瞳とは、文字通りの眼球ではありません。世界を認識する能力、つまり啓蒙を指しています。

急進派「医療教会」
ウィレームと激しく対立したのが、師弟関係にあった盟友ローレンスです。
人間はどう進化すべきかを巡って、彼らの意見は真っ二つに割れました。
ウィレームは、上位者の血が持つリスクに警鐘を鳴らし、人類は啓蒙によって進化すべきだと主張しました。
徐々に啓蒙を高めていけば、上位者に健全に近づくことができる。それが人類を守る選択である。事を急いては、獣化と精神崩壊で人間は破滅してしまうと。
血を恐れたまえ、瞳(啓蒙)を求めよと、彼は言います。
それに対して、盟友ローレンスは「血こそ力」と考えました。
ゆっくりと啓蒙を高めている時間はない。ヤーナムは今、灰血病という重大な災厄に揺れている。
我々の手には上位者の血がある。それを上手く使えば、疫病を解決できるばかりか、人類をより進化させられると。
ローレンスは、上位者の血のリスクを認識していなかったわけではありません。
ただ、ウィレームほどは危険視しなかった、あるいは目の前の問題解決を重視したということでしょう。
獣化は確かに厄介だが、狩人によって対処できると踏んだのかもしれません。
結局、二人は袂を分かつことになり、ローレンスは医療教会を設立して、積極的に「血の医療」を進めることになりました。
ウィレームが理想論・慎重派だったのに対して、ローレンスは現実論・急進派だったと言えます。
結果としては、ローレンスは派手に失敗しました。詳しくは後述・別記しますが、彼のリスク認識はまるで甘かったのです。
しかし、この時点では不明瞭なことが多くありました。ローレンスは彼なりに、使命感に燃えていたのでしょう。
かねて血を恐れたまえ
ウィレーム先生、別れの挨拶をしに来ました。
ああ、知っている。君も裏切るのだろう?
変わらず、頑なですね。でも、警句は忘れません。
我ら血によって人となり、人を超え、また人を失う。知らぬ者よ、かねて血を恐れたまえ。
お世話になりました、先生。
恐れたまえよ、ローレンス。

情けない進化は人の堕落だ
「ウィレーム先生は正しい。情けない進化は人の堕落だ」
ビルゲンワースに残った学徒は、ウィレームを支持しました。
たゆまず啓蒙を高めようとする彼らにとって、血に頼って肉体進化しようとする試みは、人の堕落と映ったようです。
灰血病が流行しなければ、この考えはもっと理解されたのかもしれません。
灰血病
ヤーナムを襲った「灰血病」は、肌や血液が灰色になる原因不明の病気でした。
作中に明言はありませんが、ヤーナム全体を混乱に陥れたことから、おそらくは致死性でしょう。
白い丸薬(毒消し)によって、一時的に症状は緩和しますが、治療する手段はありませんでした。白い丸薬は鎮痛・解熱剤のような存在だったようです。
ゲームにはあまり関係しませんが、灰血病がヤーナムで流行したことは、設定上は非常に重要なことです。
この前提があればこそ、「血の医療」という、本来は怪しげな医療が普及したからです。
灰血病がなければ、血の医療が広く普及することはなく、その副作用である獣化も拡大しなかったはずでした。
そして、医療教会が発展しなければ、危険な儀式に手を染めたメンシス学派が、過分な力を持つこともなかったでしょう。
血の医療
ローレンスは、ビルゲンワースから分離独立して、医療教会を設立しました。
医療教会は、宗教団体と病院を兼ねています。彼らが提供した「血の医療」は、当初は華々しく成功したように見えました。
不治と思われた灰血病が次々と治り、いったんはヤーナムの救世主的な存在になります。
医療教会は、急速に人々の支持を得て拡大し、大きな組織へと成長していきます。
疫病の流行に苦しんだヤーナムは、一転して「医療の街」になりました。その噂を聞きつけて、外部から治療のために重病人が訪れるほどでした。
主人公も何らかの病に侵されて、治療のためにヨセフカの診療所を訪れた異邦人です。

獣化
上位者の血には、一時的に生命力を高めるメリットと引き換えに、依存すると「獣化する」というデメリットがあります。
したがって、血の医療が普及することは、獣化が広まることを意味しました。
ヤーナムは医療の街になったと同時に、獣の街になったのです。そして、獣を狩るために狩人が増えていきます。
医療教会は、この事実を隠蔽しました。つまり、ヤーナムの人々は、「血の医療=獣化の原因」であることを知りません。
街に増えた獣に怯える一方、医療教会と血の医療を良きものと信じています。実際は医療教会が、獣化の原因を作っているにも関わらず。
そして、上位者の血によって一時的に生命力が強くなるため、ヤーナムの民は特別という、ある種の選民思想を持つに至り、よそ者に冷たく当たるようになります。
事実を知らずに誤解したまま、妙なプライドだけはある。血への依存を深めながら、徐々に正気を失っていく。
こうした人々の態度が、ゴシックホラーの雰囲気を醸し出すのに一役買っています。
旧市街を焼き払う
医療教会が進めた血の医療は、ヤーナムを苦しめた灰血病を治療したことで、一時は成功したように見えました。
しかし、結果的には、疫病より酷い「獣化」という災厄を生んだだけでした。
教会狩人を増員して獣を駆逐しようとしますが、それでも追い付きません。
困った医療教会は、街全体を焼き払うことに決めました。旧市街を閉鎖して火にかけ、獣化した住民たちを焼いたのです。
ローレンスは、上位者の血が人間を救うと信じて、実際に灰血病患者を救ったのですが、その後により破滅的な災厄を招きました。
なまじ支持されて大組織になった分、不幸を拡大したことになります。
結果的には何ひとつ良いことをせず、分立した3グループの中で最も派手に失敗しました。
最終的にはローレンス自身が、巨大な獣になって滅んでいます。彼はかつての師・ウィレームの警句に還り着きました。
・かねて血を恐れたまえ。
啓蒙より血を重んじたローレンスは、自らの誤りを悟ったのでしょうか。この言葉が頭蓋の記憶に残ったのは、皮肉でしかありません。
この警句はまた、医療教会のある聖堂街から、ビルゲンワースのある禁域の森に通じる門を開く合言葉でもあります。

人体実験
医療教会は、表では宗教団体 兼病院でしたが、裏では上位者の研究を続けており、その内容はビルゲンワース時代より過激になっていました。
人体実験をためらわず、実験棟という施設まで建設して、多くの犠牲者を生んでいます。
医療教会は、ウィレームの「瞳(啓蒙)を得よ」という言葉を、脳に「瞳に相当する物理的な何か」があると曲解しました。
そのため、頭蓋を割って脳を解剖したり、逆に脳に液体を注入したり、異物を移植するなどの恐ろしい人体実験を行って、怪物を量産してしまいます。
血の医療にしろ、人体実験にしろ、医療教会は肉体改造に活路を見出そうとこだわり、そしてことごとく失敗しました。
当時の研究チームは、後にメンシス学派を形成する一派を含んでいますから、やりたい放題だったようです。
過激派「メンシス学派」
大組織に発展した医療教会には、様々な部署がありました。
・メンシス学派
・聖歌隊
・処刑隊
・教会狩人
・工房
これらの部署はそれぞれに重要なのですが、ここでは「メンシス学派」について解説します。
Bloodborneの世界は、前述のとおり次の3グループが分立しています。
・慎重派 ビルゲンワース
・急進派 医療教会
・過激派 メンシス学派
メンシス学派は、医療教会に属する一派ですが、より過激な手段を志向して、独立色を強めていくことになります。
分離して別の組織になったというより、暴走して制御を外れた存在になりました。
この三者を比較してみましょう。

医療教会は数々の罪を犯しましたが、最大級の罪の一つは、なまじ発展したことによって、メンシス学派を資金・人員面で育ててしまったことかもしれません。
生贄と再誕
メンシス学派は、「上位者研究のためなら、どんな犠牲が出てもかまわない」とする、過激なマッドサイエンティストたちです。
六角形の形をした、タテ長の檻を頭にかぶっているので、ひと目で分かります。この奇妙なかぶり物は、彼らに言わせれば、上位者と交信するのに役立つそうです。

医療教会の時点で、上位者研究は既に十分、おぞましい領域に達していました。ヨセフカの診療所や実験棟では、変わり果てた人々の姿が確認されます。
しかし、メンシス学派はここから更に過激になり、拠点のヤハグルにおいて、大勢の人間を虐殺して生贄としました。
ヤハグルの住民に限らず、人さらいが各地で誘拐した人間も利用しました。
いったん生贄として殺害し、鐘を鳴らす狂女が呼び出すことで、上位者として生まれ変わらせることを狙ったようです。
しかし、呼び出された「上位者」は、死体を継ぎ接ぎしただけの無惨な代物であり、名前だけは立派な「再誕者」ですが、どう見ても失敗作でした。
医療教会が焼き払った旧市街は、それでも獣と狩人が残りましたが、メンシス学派が全滅させたヤハグルには、死体とそれを漁る豚、犬しかいません。
街の体をなしておらず、比較にならないほどの惨状です。
ろくなことをしなかったメンシス学派ですが、一方で研究成果という意味では進捗しました。
彼らは上位者の精神世界に侵入して、赤い月を示現することに成功しています。すなわち、本編の最終ステージ「メンシスの悪夢」です。
上位者の目前に迫ったのですから、これは上位者研究という意味では、母体の医療教会を超える功績だったと言えるでしょう。
つづく。
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