メティアとは何か?
メティアは、作中では「願いを叶える星」ですが、その正体は最後まで明かされません。
明示されていることは少なく、次の情報くらいです。
・月の近くで輝く、小さな赤い星。
・古くから願いを叶える星として知られる。
・ジルが幼年期から祈っていた。
重要なのは、メティアそのものではなく、人がメティアに与えている意味です。
メティアは、ヴァリスゼアの民に広く知られた天体であり、我々で言えば北極星や流れ星のようなもの。
しかし、私たちが普段、北極星などをほぼ意識しないのと同じように、作中の人物がメティアに触れることは非常に稀です。
メティアはジルだけが、子供の頃から特別な意味を与え続けた対象です。すなわち、この星はジルの演出のために存在しています。
エンディングでメティアを見るのも、ジルだけです。
他の人間は、天体が一つ消えたというのに、不思議なほど反応していません。ジル以外は、メティアに意味を与えていないからです。

メティアはジルのもの
エンディングでは、メティアが光を失い、ジルが涙を流します。
その姿を見て、私たちは直観的に「クライヴに良くないことがあった」と誤解しますが、これは振りでしかありません。
夜明けに昇る朝陽を見て、ジルは微笑みます。
この朝の演出は、前夜の演出を打ち消していると考えるべきでしょう。そうでなければ、わざわざ見せる必要がないからです。
メティアが消えたのは、「ジル」を表現するためです。クライヴの生死を示すためではなく。
クライヴは作中において、ほとんどメティアに言及しません。ジルが注目していることは尊重しますが、彼自身がメティアを重んじている描写はありません。
長い道中で何の関連付けもせず、大事なエンディングにおいて、唐突に結び付けてくるでしょうか?
優れた脚本家なら、そんな乱暴なことはしないでしょう。
むしろ彼/彼女らは、文学的陶酔に毒されており、必要以上に暗示・メタファー・伏線回収・投影などを好みます。

星に祈る少女
冒頭、ジルは「星に祈る少女」として描かれています。
成長したジルの頼もしさから、つい忘れてしまいがちですが、シヴァのドミナントになる前の彼女は、可憐で弱々しい娘でした。
ジルは北部諸侯の王女でしたが、北部がロザリアとの戦争に敗れた結果、講和条件として人質になります。
ロザリアでは、姫として丁重に扱われたものの、立場的には弱い存在でした。
彼女が表面上は幸せに見えたのは、ひとえにロズフィールド家の家風によります。エルウィン、クライヴ、ジョシュアだからこその、良好な家族的関係だったと言えます。
故郷や家族と離れて、人質として異国の地で暮らすのですから、本当は心細かったことでしょう。
しかも、その後は鉄王国に拉致されて、アイアンブラッドで奴隷生活を送ります。ジルもクライヴ並みに過酷な人生です。
ジルの心の拠り所は、クライヴとメティアしかありませんでした。虜囚の時期に限れば、メティアだけです。

クライヴを帰してくれる
幼年期のジルは、クライヴが遠征に赴く度に、メティアに祈りました。
改めて、サブクエスト「白銀の君」の一文を引用しましょう。
”No matter how terrible the night, dawn would always come. That you would always come for me. And you have. Again and again.”
「どんなに辛い夜でも、必ず朝は来る。そして、あなたも必ず、私の元へ来てくれた。本当に、何回でも」
不安な夜にメティアへ祈る。朝になるとクライヴが帰って来る。この流れを、ジルは繰り返し経験しています。
ジルにとってクライヴは、夜が明ければ帰って来る存在でした。
そしてメティアは、それを叶えてくれるシンボルでした。ジルがメティアを大事にしたのは、クライヴを帰してくれるからです。

スティルウィンド遠征との対比
クライヴが、スティルウィンド遠征に赴く前夜も、ジルは彼の安全を祈って、メティアに祈りを捧げました。
そして、祈りながら「涙」を流します。
この時点で、ロズフィールド家を襲う悲劇は始まっていません。したがって、涙の理由は次のようなものでしょう。
・家族と離れて、異国の地で暮らす寂しさ。
・唯一、心を許せるクライヴを失うかもしれない不安。
・自分では何もできない無力感。
大事なのは、「メティアを見て、涙を流す」という描写です。
エンディングでも、同じように描写されます。涙の意味は異なりますが、対比であることは間違いありません。

この祈りの後、遠征に赴いたクライヴは、フェニックスゲートの事件に巻き込まれて、ザンブレク皇国の奴隷兵士まで凋落します。
約13年の時を挟みましたが、しかし結局、クライヴはジルの元に帰って来ました。
メティアを見る。涙を流す。夜が明けて、やはりクライヴは帰って来た。これがオープニングの描写です。
メティアを見る。涙を流す。夜が明けて、ジルが微笑む。これがエンディングの描写です。
前回は約13年かかりました。今回が何年かは分かりませんが、クライヴはジルの元へ帰って来るでしょう。これまでと同じように。

メティアはもう必要ない
オリジンへ発つ前、クライヴは「俺は必ず帰って来る」と約束しました。
ジルが夜明けに微笑んだのは、メティアの加護より、クライヴの約束を信じたからです。
これは何を意味するのでしょうか?
それまでの人生で心の拠り所にしたメティアより、クライヴの約束の方が重くなったということです。
つまり、「メティアがクライヴを帰してくれる」が、「クライヴなら約束通り帰って来る」に変わったわけです。
更に踏み込んで言えば、メティアが消えたのは、ジルがもうメティアを、心の支えとして必要としなくなったからでしょう。
ちなみに、スティルウィンドへ遠征する前夜はどうだったでしょうか?
若きクライヴは、この時は約束していません。冒頭、クライヴは運命に翻弄される少年であり、ジルは星に祈る少女でした。
オリジン突入の前に約束をしたのは、やはり対比と考えるべきでしょう。この時のクライヴは運命を切り拓く青年であり、ジルはその横を共に歩む伴侶です。
なお、本作において、クライヴが約束を違えたことはありません。

自分たちの力で生きる世界へ
ジルの心境の変化は、作品のテーマとも合致します。
FF16のテーマは、「人は自ら選び、自ら生きる」です。
アルテマもマザークリスタルも、人々が依存してきた存在でした。クライヴは、それらをすべて破壊します。
メティアは、エーテルや魔法と一緒に消えました。
これらはすべて、「自分たちの力で生きる世界」への転換を示唆しています。
新しい世界において、クライヴは剣と召喚獣を捨てました。もう必要ないからです。それでは、ジルは何を捨てましたか?
メティアと、星に祈ることです。
作中、一貫してジルのために存在したメティアは、最後はジルのために消えました。希望が失われたのではなく、もう星に祈る必要がないのです。
クライヴは、捨てたものの代わりにペンを執りました。それでは、ジルは何を取りますか?
もちろん、クライヴでしょう。
夜明けの映像と、テーマソング「My Star」の歌詞を見る限り、今回は「クライヴが帰って来る」というより、「ジルが探しに行く」のかもしれません。
クライヴが神(アルテマ)を乗り越えたように、ジルは星(メティア)に別れを告げて終わります。
彼女は、自分の本当の「星」は、暗い夜のメティアではなく、クライヴの炎だと確信したのです。
メティアが赤色なのは、炎のメタファーでしょう。
そして、星がその色を失ったのは、クライヴがイフリートを手放したことを重ねているのかもしれません。

実際は、なぜ消えたのか?
メティアは、演出上はジルのために消えましたが、演出以外の理由は何でしょうか?
これは正直分かりません。ただ、アルテマ、マザークリスタル、エーテルが消えたことによる影響と考えるのが、唯一あり得る要因だと思います。
つまり、実は天体としての星ではなく、「魔法的な存在だった」という理解です。
別にご都合主義でもかまわないのですが、説明を付けようとしたら、これ以外は思いつきません。
ジルにだけ見えていた幻覚だったと考えるのは、さすがに無理筋でしょう。それに近い演出ではありましたが。
おわりに
DLCの発売が報じられた時、ジルを操作キャラクターにして、クライヴを探す物語にして欲しいという声がありました。
書き手にもその誘惑はあったかもしれませんが、結果としては別の物語が提供されました。
制作陣は、エンディング後の余白を残すことを選んだようです。
一方で、わりと親切な伏線と対比を本編に含んでおり、無責任な投げ方はしていません。マイルドな物議を醸したのは、狙い通りだったのでしょうか。

私に言わせれば、FF16の最大の謎は、クライヴの生死ではありません。
クライヴ&ジョシュアという最高にカッコいい兄弟が、アナベラから生まれたことです。
最後になりますが、30年以上にもわたり、私たちを楽しませてくれるスクウェアエニックス社に、最大限の感謝と敬意を。
FF16は、個人的に最も好きなナンバリングタイトルになりました。ゲームで鳥肌が立ったのは、本当に久しぶりです。
FF17と言わず、18でも19でも首を長くして待っています。
注
この記事は個人の考察であり、スクウェアエニックス社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
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