「昼、眠い」の治し方 (1)

昼眠い (1) 「朝、起きれない」の治し方

 第1章では、朝にすっきり起きるための具体的な方法を紹介しましたが、第2章では昼間の眠気を飛ばす方法を紹介します。

 基本的に、睡眠をしっかり摂れていれば、昼間に強い眠気を感じることはありません。

 したがって、第1章の内容を実践することが、同時に昼間の眠気を抑えることになりますが、ここではそれに加えて、役に立つ小技をいくつか提案したいと思います。

CO2濃度を管理する

 CO2(二酸化炭素)濃度が1000ppmを超える環境では、眠気や集中力低下を感じやすくなることが、多くの研究と実験で確認されています。

 強い毒性が出る水準ではありませんが、人間の認知機能や覚醒度に影響が出始める境界として、1000ppm前後が一つの目安とされています。

 屋外は約400ppmですが、密室で人間が呼吸することで、徐々にCO2濃度が上がっていきます。

 空気中のCO2が増えると、脳は「呼吸の条件があまりよくない」と判断して、覚醒を維持する神経活動を抑制します。

 脳がエネルギー消費を抑える方向に切り替わり、頭をシャキッと保つ神経の働きを弱める結果、眠気やぼんやり感が出やすくなるのです。

 脳は、CO2に対して非常に敏感です。

 なぜ少しの変化でも影響が出るのかと言えば、CO2は呼吸の安全性を判断する重要な指標であり、危険になる前に、早めに反応する仕組みがあるからです。

 そのため、健康に害が出るほどではない、わずかなCO2上昇でも、脳の働き方や覚醒レベルが調整されてしまいます。

 酸素が足りないから、眠くなるのではありません。CO2濃度1000ppmでは、酸素濃度はほとんど変わりません。CO2の量が増えたことに、脳が鋭敏に反応することが主因です。

1人・6畳・1.2時間

 それでは、密閉空間だとどれくらい時間で、覚醒度が鈍ってしまうのでしょうか。

 以下は、成人男性1人が、密閉空間でデスクワークをした場合に、CO2濃度が1000ppmに達するまでの時間の目安です。

 基準として覚えるなら、「1人・6畳・1.2時間」がよいでしょう。

 人数が2人になれば、所要時間は半分(0.6時間)になり、広さが2倍(12畳)になれば、所要時間は2倍(2.4時間)になります。

 CO2濃度を計測する測定器を買ってもよいですが、これを基準して考えれば、ある程度の目安はつきます。

 密閉空間の場合、意外とすぐに到達してしまうことが分かると思います。ここで必要になるのが「換気」です。

正しい換気のやり方

 まず大切な考え方があります。換気とは、単に窓を開けることではありません。

 空気が入って来て、別の場所から出て行く流れを作ることが本質です。この流れを作れるかどうかで、効果は大きく変わります。

2点換気ができる場合

 2点換気とは、空気の入口と出口が別々にある状態です。「窓と窓」「窓とドア」または「窓と換気扇」の組み合わせが該当します。

 仕組みはとてもシンプルです。

外の空気が入る。
→部屋全体を通過する。
→CO2を含んだ空気が外へ出る。

 この流れができると、CO2は溜まりにくくなります。

 具体的には、次のような方法が推奨されます。

・窓を2か所、1~3cmほど開ける。
・窓を1~3cmほど開けて、部屋のドアも完全に閉めない。
・窓を1~3cmほど開けて、換気扇(弱)を回す。

 窓やドアを全開にする必要はありません。給気口は制限した方が、流速が上がります。また、弱くても連続した流れを保つことの方が重要です。

 ただ窓を開けるだけではなく、自ら「風を作る」ことを意識すると、より効果が高まります。

 扇風機やサーキュレーターを回して、排気を促してあげると、空間に負圧が生じて、外気が流入しやすくなります。

 よくある誤解ですが、エアコンには換気機能がありません。

 エアコンは室内の空気を使って、熱交換をするものであり、空気を入れ替える作用はないのでご注意ください。

1点換気しかできない場合

 窓が1カ所しか開けていない部屋では、空気が抜けにくく、CO2が残りやすいという弱点があります。

 同じ窓から、空気が入る動きと出る動きが混ざるため、部屋全体が入れ替わりにくいのです。

 それでも、工夫次第で改善は可能です。一つ目は、短時間の強換気です。

 窓を大きく開けて、数分間しっかり空気を入れ替えます。これによって、CO2濃度を下げることができます。

 二つ目は、擬似的な2点換気を作る方法です。

 窓を1~3cmほど開けた状態で、少し離れてしまいますが、浴室やトイレの換気扇(弱)を回します。

 これでも流れが生まれますので、単なる1点換気よりは、CO2が溜まりにくくなります。

換気時間は10~15分

 換気をした場合、CO2濃度はどう変化するのでしょうか?

 2点換気をした上、扇風機やサーキュレーターで風を作った場合、大まかに次のようになります。

 小まめに換気できれば理想的ですが、少し頭の回転が鈍ってきたと感じたら、積極的に換気してみてください。換気時間は10~15分で十分です。

 特に、起床時間+8時間後(多くの場合は14~16時)は、体のリズム的に眠気が生じやすい時間ですので、そこに合わせて換気するのも有効です。

 季節にもよりますが、気候がよければ窓を常時開放して、2点換気を継続するとよいでしょう。

CO2濃度は睡眠の質にも影響する

 CO2濃度は、昼間の覚醒度に影響するだけでなく、夜の睡眠の質にも影響します。

 人間は眠っている間も、当然ですが呼吸を続けています。その度に、CO2を吐き出しますので、密閉された寝室では、CO2濃度が少しずつ高まります。

 夜中から明け方にかけて、1000ppmを超えることは珍しくありません。

 では、CO2が増えると、なぜ睡眠の質が下がるのでしょうか。

 理由は、昼間の覚醒度が鈍るのと同じで、脳が「呼吸の条件があまりよくない」と判断するからです。

 そうすると、昼間の覚醒モードが乱されたように、夜の休息モードも乱されます。深くリラックスして眠る状態を維持しにくくなり、睡眠が浅くなりやすいのです。

 睡眠が浅くなると、夜中に目が覚める、夢を見る回数が増える、目覚めたときに疲れが残る、などが多くなります。

 これが積み重なると、朝は起き辛く、昼間は眠くなるという状態につながります。

 こちらの場合も、酸素濃度は関係ありません。あくまでCO2濃度に、脳が敏感に反応する結果です。

 整理しますと、CO2濃度が低い環境では、次のようになります。

呼吸が安定する。
→脳が安心して休める。
→深い睡眠が維持されやすい。
一方、CO2濃度が高い環境では、次のようになります。

呼吸が不安定になる。
→脳が完全に休み切れない。
→睡眠が浅くなる。

 もし、中途覚醒してしまう夜が多い、睡眠時間は足りているのに調子が悪い、冬の方が眠りの質が落ちやすい、朝のだるさが慢性的に続いている、などと感じているなら、寝室のCO2濃度が関係している可能性があります。

 CO2が高い環境では、脳は無意識のうちに覚醒レベルを下げます。その結果、夜は眠りが浅くなり、朝は起き辛く、昼間は眠くなります。

 努力や根性の問題ではなく、体質の問題でもありません。環境が、体のリズムを静かに乱しているのです。

 CO2を1000ppm以下に抑えるには、「空気の通り道」を作ることが最優先。可能であれば2点換気をしてください。

 1~3cmの窓開けでも、正しく使えば睡眠と覚醒はだいぶ変わります。

ACTION
昼は覚醒度を鈍らせないために、夜は睡眠の質を高めるために、部屋の換気を心がける。
2点の開口部(窓またはドア)を1~3cm開けて、CO2濃度を下げる。
2点が難しい場合は、1点+換気扇(弱)で、疑似的な2点換気を行う。

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