「エアコンは熱交換をしているだけなので、換気の機能はありません」
よくこのように言われますが、過去の私は今一つしっくり来ませんでした。
換気機能がないことが分かります。だから、「エアコンを点けていても、換気は別にする必要がある」ということは理解できます。
生活する上では、これで解決してしまうため、前段の「熱交換をしているだけ」の方は、特に調べようと思いませんでした。知らなくても実害がなかったからです。

しかし、ある時に突然、「こんなにもお世話になっている、身近なハコのことを全然知らない」と思って、無駄に調べたことがあります。
少しだけ距離が縮まった気がしたので、情報を整理して共有したいと思います。
用語が分かりにくい
次のパーツを知れば、エアコンの仕組みはほぼ理解できます。
・冷媒
・熱交換器
・圧縮機
・減圧機
冷媒と熱交換器は、熱交換というカテゴリで括れますし、圧縮機と減圧機は、圧力機器というカテゴリで括れます。
したがって、実質的な要素は二つに過ぎません。
つまり、「熱交換&圧力」です。意外にシンプルなのです。
それにも関わらず、なぜこんなにも取っ付きにくいかと言えば、それはおそらく「用語が分かりにくい」からでしょう。
エアコンには下表の通り、機能名や通称が入り乱れています。これが私たち一般人にとっては、混乱の元なのです。

特に重要なのが「冷媒とコンプレッサー」です。この二つがエアコンの主役になります。
とりわけコンプレッサーは、価格差・性能差・消費電力差などに直結するため、よく名前が登場するのですが、これが目立ち過ぎる点も、大衆の理解を逸らす一因だと私は睨(にら)んでいます。
そこで本項では、名称を「機能名」に統一して使用した上、圧縮機(コンプレッサー)には少し大人しくしてもらって、全体像が見えるように解説していきます。
たったこれだけで、随分と理解しやすくなります。

熱は低きに流れる
エアコンの仕組みを理解する上で、知っておくべき法則があります。
それは「熱は低きに流れる」ということ。
温度差があると、高い側から低い側へ、熱エネルギーが移動します。温度差が解消するまで、この移動は続きます。
たとえば、熱いコーヒーを淹れた場合、徐々に温度が下がってぬるくなります。これはコーヒーの熱が周囲に移動して、やがて均一化するからです。
また、氷を室内に置いておくと、徐々に溶けて常温の水になります。これは氷が周囲から熱を奪って、やがて均一化するからです。
エアコンはこれと同じように、熱を周囲から奪ったり、熱を周囲へ捨てたりして、室内の温度を調整しています。
この「熱を奪ったり、捨てたり」することを「熱交換」と呼びます。
冷媒とは何か
エアコンは、室内機と室外機がパイプでつながれて、特殊な密閉空間を作っています。
そして、この密閉空間の中に、「冷媒」という冷たいガスのようなものが充填されています。
聞き慣れない名前ですが、冷媒はエアコンの主役の一つであり、この冷媒があるからこそ、エアコンの熱交換は成立しています。
冷媒は消費されません。製造時に充填されたら、それがずっと密閉空間の中を循環します。
経年によって微小漏れはするものの、基本的に減ることはありません。
ただし、室内機・室外機・パイプのいずれかが損傷して、密閉が破れた場合は流出してしまいます。
熱の運び屋
冷媒の役割をひと言で表せば、「熱の運び屋」です。
冷房の場合、室内から熱を奪い、それを載せて外へ運び(室内機→室外機)、屋外に熱を捨てて、また戻って来ます(室外機→室内機)。この循環を繰り返して、室内を涼しくします。
冷たい風を出して冷却するのではなく、室内の熱を奪う結果として、室温が下がる(涼しくなる)わけです。
暖房の場合、この流れが逆になります。屋外から熱を奪い、それを載せて内へ運び(室外機→室内機)、室内に熱を捨てて、また戻って行きます(室内機→室外機)。
こちらも温かい風を出して加熱するのではなく、室内に熱を捨てる結果として、室温が上がる(暖かくなる)わけです。
つまり、内の熱を奪って、外に捨てるのが冷房。外の熱を奪って、内に捨てるのが暖房です。
冷気や暖気を「作る」わけではありません。単に熱を「運ぶ」だけです。
「冬の屋外はあんなに寒いのに、どうやって熱を奪うんだ」と思うかもしれませんが、たとえ気温が5℃でも、絶対零度(-273℃)に比べれば十分な熱エネルギーを持っています。
5℃の外気であっても、それを圧縮して熱を高めれば、30℃の室温にすることは十分可能です。この点は後ほど解説します。
液体になったり、気体になったり
冷媒には「熱を運ぶ」という点に加えて、「液体と気体の間を頻繁に行き来する」という特徴があります。
不思議な感じがしますが、液体と気体が共存する時があります。
液体が多い状態でも、一部は気体になっていたり、逆に気体が多い状態でも、一部は液体のままだったりします。液体から気体へ、気体から液体へと、絶えず状態が変化しているためです。
たとえば、炭酸飲料をイメージしてみてください。液体と上部にある二酸化炭素は共存していますし、ボトルを開栓すれば発泡します。
また、単なる水の場合も、実は液体だけではありません。少量の水蒸気が混じっています。密閉空間においては、液体と気体が共存することがあります。
冷媒は、熱を奪う時は気体となり、熱を捨てる時は液体となります。
気体と液体を頻繁に行き来しながら、熱交換(熱を奪ったり、捨てたり)するわけです。

空気と熱と冷媒と
空気と熱は恋人のようなものです。熱エネルギーは、空気に含まれる状態で存在しています。
エアコンは、そのカップルごと吸い込んで、二人の仲を引き裂きます。
冷媒が、室内の空気から熱を奪い取り、運び屋として外へ連れて行って、屋外に捨て去ります。
なお、これは冷房の場合です。暖房の場合はその逆、つまり外気から熱を奪い取り、運び屋として内へ連れて行って、室内に捨て去ります。
空気と熱と冷媒は、三角関係なのです。

熱は低きに流れる(2回目)
先ほどから、当たり前のように熱を奪うとか、熱を捨てるとか書いていますが、これは一体どういうことでしょうか?
ここで最初に明示した法則、「熱は低きに流れる」が登場します。
温度差があると、高い側から低い側へ、熱エネルギーが移動するという現象です。
冷房の場合、プロセスは次のようになります。
1. 冷房の場合、室内機にある冷媒は、約0~10℃の冷たい状態です。室温よりも低いので、室内の熱が冷媒に流れていきます(熱を奪う)。
2. 室内の熱を奪った冷媒は、それによって気体が多い状態に変化して、室外機へ移動します(熱を運ぶ)。
3. 圧縮機(コンプレッサー)で高圧をかけて、冷媒の温度を約70~90℃まで上げます。外気よりも高いので、冷媒の熱が屋外に流れていきます(熱を捨てる)。
4. 減圧機で圧力を抜いて、冷媒の温度を約0~5℃に下げます。熱を捨てて、かつ圧力が抜けた冷媒は、それによって液体が多い状態に変化して、室内機へ戻っていきます。
なお、圧縮機と減圧機は、基本的に室外機側にあります。
以上のプロセスによって、室内の熱が奪われ、外へ運ばれた上、屋外で捨てられることになります。暖房の場合は、これが逆回転します。
これによって、冷媒を介した熱の授受ができるのですが、幾つか新しい疑問点が出てくると思います。次はそれについて見ていきましょう。
冷媒の温度は、圧力で変わる
圧縮機と減圧機をさらっと登場させましたが、ここがエアコンを理解するための要諦の一つです。
温度は圧力によって変わります。
高圧をかければ高温になり、低圧にすれば低温になります。
なぜかと言えば、高圧によって圧縮されると、内部エネルギーが増加して、分子運動が激しくなり、熱が生じるからです。
たとえば、会社のオフィスを想像してみてください。
社員の数はそのままに、オフィスの空間だけを1/10に圧縮したら、なにやら暑苦しそうに感じませんか。
体温が上がって、活動量が増えて、狭い空間で他の人とぶつかったりして、熱やイライラが高まりそうです。
これは直観的なたとえなので、物理的には不正確なのですが、分子で考えるよりはイメージしやすいでしょう。
温度は圧力によって変わりますが、エアコンはこれを積極利用しています。
つまり、圧力を下げて(室内より)低温にすることで、室内の熱を奪います。
それを外に運んで、今度は圧力を上げて(外気より)高温にすることで、屋外に熱を捨てるのです。
冷媒は重力ではなく、圧力で循環している
先に記載したプロセスの4番目で、次のように書きました。
4. 減圧機で圧力を抜いて、冷媒の温度を約0~5℃に下げます。熱を捨てて、かつ圧力が抜けた冷媒は、それによって液体が多い状態に変化して、室内機へ戻っていきます。
ここで違和感を覚えた方がいるかもしれません。
室外機側で「液体が多い状態」になった後、どうやって高い所にある室内機側へ戻って行くのかと。「液体がパイプを昇るんかい」と。
答えを言うと、冷媒は重力で循環しているのではなく、圧縮機が生む「圧力」によって循環しています。したがって、液体が多い状態でも高所に昇ることができます。
水道水をイメージしてみてください。
水道管は地中を通っています。しかし、家屋内の蛇口はすべて、地中より高い位置にあります。2階建てなら2階に、3階建てなら3階に蛇口があることも普通でしょう。
この場合、水は重力によって動くのではありません。水道管という密閉空間の中で、圧力を受けて動きます。したがって、低い位置から高い位置へ動くことも可能なのです。
密閉されている限り、下から圧力をかけるか、または(ストローのように)上の圧力を抜くことで、低所から高所へ昇ることができます。
冷媒もこれと同じ原理で、圧力で密閉空間を循環しています。
冷媒の沸点は、圧力で変わる
先ほどから、冷媒は「液体になったり、気体になったりする」と書いていますが、「沸点を教えろよ、沸点を!」とイライラしていた方がおられるでしょう。
隠していたわけではなく、明確に書けなかったのです。なぜなら、沸点は圧力によって変わるからです。
たとえば、水で考えてみましょう。通常の沸点は100℃です。
しかし、圧力鍋で高圧をかけている時は、100℃を超えても水は沸騰しません。これのお陰で、早く煮ることができるのです。
一方、富士山などに登った時は、気圧が下がる高度になると、100℃より低くても水が沸騰します。
これと同じで、冷媒の沸点は圧力によって変化します。
こう書くと受動的ですが、実際はより能動的であり、エアコンは圧力を変えることで、都合よく冷媒の沸点を操作しているのです。

具体的には、冷房の場合、室内機側で気体になりやすいように、冷媒の沸点を下げています。液体が気体になる時、多量の熱(気化熱)を奪うからです。
また、室外機側では液体になりやすいように、冷媒の沸点を上げています。気体が液体になる時、多量の熱(凝縮熱)を捨てるからです。
すなわち、熱交換(熱を奪ったり、捨てたり)を効率よくするために、沸点を都合よく操作して、気体と液体の間を頻繁に行き来させるというわけです。
・圧力を下げる → 沸点が下がる → 気体化しやすい → 効率よく熱を奪える(気化熱)
・圧力を上げる → 沸点が上がる → 液体化しやすい → 効率よく熱を捨てられる(凝縮熱)
熱交換器とは何か?
ここで話を戻してみましょう。熱交換器とは何でしょうか?
これまで見てきた通り、冷媒と圧縮機(コンプレッサー)は、「マジシャンかよ」と思うくらい、見事な圧力&温度操作をするプロフェッショナルでした。
熱交換器もさぞスゴいのかと思いきや、こちらはただの金属、アルミフィンに過ぎません。
何か能動的な操作をする機械ではなく、拍子抜けしてしまいますが、単なる「場所」というイメージです。それ故に「機」ではなく「器」なのです。
何の場所かと言うと、熱の受け渡しをする場所です。
先ほどから、冷媒が熱を奪ったり、熱を捨てたりすると記載していますが、奪う場所と捨てる場所のことを「熱交換器」と言います。
さらに言えば、奪う場所を蒸発器(液体が気体になる場所/エバポレーター)と呼び、捨てる場所を凝縮器(気体が液体になる場所/コンデンサー)と呼びます。
熱交換器は、室内機と室外機の両方にあります。両方とも単なるアルミフィンです。
室外機側は見えませんが、室内機側は蓋を開けて、フィルターを取り外せば目視できます。好きなだけ見てください。

冷房の場合、室内機側の熱交換器は「蒸発器」となり、室外機側の熱交換器は「凝縮器」となります。
暖房の場合は役割が逆転して、室内機側の熱交換器が「凝縮器」になり、室外機側の熱交換器が「蒸発器」になります。
ハードとしては同じですが、熱を奪う側になるのか、熱を捨てる側になるのかで、役割が変わるのが面白いところです。
ただのアルミの羽根
アルミフィンとは何でしょうか?
これは冷媒が通る鋼管の周囲に、びっしりと張り巡らされた、アルミの羽根が並んだ部品です。これのことを熱交換器と呼んでいます。
冷媒が通る鋼管は、室内機と室外機の中を蛇行しています。

この鋼管だけでは、空気と接する面積が少ないので、鋼管の周りにアルミの羽根をびっしり並べて、空気と接する面積を何十倍にも増やしているのです。
冷房の場合、鋼管の中の冷媒は約0~5℃くらいです。その周囲にあるアルミの羽根は、鋼管の冷気を受けて10℃くらいに冷えます。
そうすると、室内の温度より低いので、熱がアルミの羽根に流れていきます。
冷媒の冷気を、熱交換器(蒸発器)を通じて、より多くの空気に触れさせることで、効率よく室内の熱を奪うというわけです。
熱を奪った冷媒は、それを室外機に運びます。
そして、圧縮機で高圧をかけられて高温になり、今度は室外機側の熱交換器を通ります。
この時、鋼管の中の冷媒は約70~90℃くらいです。その周囲にあるアルミの羽根は、鋼管の熱気を受けて40~55℃くらいに熱くなります。
そうすると、外気の温度より高いので、アルミの羽根の熱が屋外に流れていきます。
冷媒の熱気を、熱交換器(凝縮器)を通じて、より多くの空気に触れさせることで、効率よく屋外に熱を捨てるというわけです。
熱交換器は反応が起きる場所
このように、熱交換器は何かの装置というより、反応が起きる場所のようなイメージです。
能動的に冷媒を操作をするのは、圧縮機(コンプレッサー)であり、これ以外はどちらかと言えば受動的な存在になります。
・圧縮機(コンプレッサー)は、冷媒を高圧高温にして、熱を捨てる準備をします。
・熱交換器(凝縮器)は、高温になった冷媒の熱気を、なるべく多くの空気と接触させて、熱を空気に移します。つまり、熱を捨てる場所です。
・減圧機(膨張弁)は、冷媒を低圧低温にして、熱を奪う準備をします。
・熱交換器(蒸発器)は、低温になった冷媒の冷気を、なるべく多くの空気と接触させて、空気から熱を移させます。つまり、熱を奪う場所です。
熱交換器は単なるアルミフィンですし、減圧機は圧力を抜くだけですから、圧縮機のような緻密な操作を必要としません。
エアコンの主役は冷媒と圧縮機であり、それ故に圧縮機の性能が、価格差や消費電力差に直結することになります。
四方弁で流れを逆転させる
これまで「暖房の場合は逆」という言い回しをしてきましたが、最後にこれについて触れておきましょう。
どのように逆にするかと言うと、冷媒の流れを逆にします。
たとえば、右回り・左回りで言うなら、右回りだった流れを、左回りの流れに変更します。
圧縮機の右側が高圧高温、左側が低圧低温だった状態が、流れを逆転させることで、圧縮機の左側が高圧高温、右側が低圧低温に変わるというわけです。
冷房の場合、室内機側に低圧低温の冷媒が来るようにセットします。室内の熱を奪う(涼しくする)ためです。
室外機側は高圧高温が来ます。屋外に熱を捨てるためです。
一方、暖房の場合は、室内機側に高圧高温の冷媒が来るようにセットします。室内に熱を捨てる(暖かくする)ためです。
室外機側は低圧低温が来ます。外気の熱を奪うためです。
この切り替えを行う装置が「四方弁(切替弁)」です。
私たちがリモコン操作で、冷房運転や暖房運転のボタンを押した時、運転モードに応じて冷媒の流れを調整するのです。
再掲
冒頭に示した一覧表を再掲しておきましょう。
ここまで読んでくださった、好奇心と知性のある貴方なら、各パーツの役割を最初より理解できるはずです。

なお、この記事は分かりやすさを優先して書いています。厳密には不正確な点を含みますので、一般人向けであることをご了承ください。
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