猛暑日・酷暑日
最近の夏は随分と暑くなりました。
昭和の時代は「真夏日」まででしたが、気象庁は2007年に「猛暑日」、2026年に「酷暑日」という表現を追加しました。
夏日 1日の最高気温が「25度」以上の日
真夏日 1日の最高気温が「30度」以上の日
猛暑日 1日の最高気温が「35度」以上の日(2007年新設)
酷暑日 1日の最高気温が「40度」以上の日(2026年新設)
暑さ対策としては、エアコンをつけっ放しにするのが最良です。

しかし、2022年にロシア・ウクライナ戦争が勃発して以降、ロシア産のエネルギーが急減してしまい、円安などの要因と相まって、光熱費が大幅に上がりました。
ここ数年は光熱費に加えて、生活物価までひどく上昇しています。
そのため、エアコンの利用をためらって、暑さに耐えている方もおられるかもしれません。
また、コスト以外の理由で、エアコンを苦手とする方も一部いるでしょう。
私も過去、コンタクトレンズを常用していた時期は、上から風が来るが嫌でした。目が乾きやすく、微妙な痛みや不具合を感じたからです。
その他、換気を重視しており、なるべく閉じ切りにしたくないという場合もあります。
そこで今回は、エアコンを使用しない、安あがりな暑さ対策をご紹介したいと思います。
「濡れタオル&扇風機」が最強
いきなり結論から言うと、効果的かつ安あがりな暑さ対策は次の方法です。
・濡らしたタオルを肩や頭にかけて、扇風機の風を当てる。
この昔ながらのシンプルな方法が、いかに優れているかを説明していきます。
人間の生理システムに合致しているため、一度そのロジックに納得したら、これ以外が物足りなく見えてくるほどです。

気化は熱を奪う
なぜ濡れタオルが効果的なのかと言えば、それは「気化熱」を活用できるからです。
気化熱とは、液体が気体になる時に必要とするエネルギーです。言い方を変えれば、液体は気化する時に多くのエネルギーを奪います。
お湯を沸かす時をイメージしてみてください。
コンロで加熱していると、やがて沸騰してきます。この時点でお湯は100℃に達しています。
しかし、そのまま加熱し続けても、お湯が100℃を超えることはありません。ぐつぐつする泡が増えて、蒸発が多くなるだけです。
これは加熱によるエネルギーが、ほぼ気化のために使われるからです。

液体が気体になる時は、それだけ大きなエネルギーを持っていくわけです。
この原理を利用するのが上記の方法です。
水分(液体)を含んだ濡れタオルを肩や頭にかけて、そこに扇風機の風を当てることで蒸発(液体→気体)を促し、その時に体から熱を奪わせるわけです(気化熱)。
気化熱を冷却に利用する
気化熱が奪うエネルギーは、非常に大きなものです。
水1gを1℃温めるには、約4.2ジュールのエネルギーを必要とします。
これに対して、水1gを蒸発させるには、約2,400ジュールのエネルギーを必要とします。その差は約570倍です。
液体を気体にするには、私たちが思う以上のエネルギーを必要とするのです。
数字や単位を覚える必要はありません。サイズ感をイメージしてもらうために書いています。
要は、「これを冷却に利用してやろう」と思って欲しいわけです。
ちなみに、なぜ気化がエネルギーを奪うのかと言うと、液体を気体にする時に、分子の結合(分子間力)を切る必要があるからです。切断の際に強いエネルギーが要求されます。
人工的な汗を作る
この手法は、人体の生理システムに合致しています。なぜなら、「人工的な汗を作っている」に等しいからです。
汗とは何でしょうか?
あまりにも身近すぎて、考えたことがないかもしれません。
汗とは、汗腺を通じて表皮に張る水分です。水だけでなく微量のミネラルも含みますが、ここでは水分だけに注目しましょう。

汗や汗腺の重要な機能の一つは、体温を調整することです。
しかし、「汗を掻くこと」自体に冷却効果はありません。汗を掻くことは、冷却の準備をしているだけです。
汗によって肌の表面に水分を張り、それが蒸発することで、気化熱が奪われて冷却効果が生じます。
体温調整という観点で見た場合、汗腺は冷却装置ではなく、水分を供給するポンプです。人体の散水システムと言ってもよいかもしれません。
大事なのは「汗を蒸発させる」こと。
汗とは、言わば天然の冷却材です。極めて重要ですが、それだけでは材料でしかありません。汗を蒸発させることで、初めて冷却効果が生じます。
したがって、流れ落ちた汗には意味がありません。蒸発せずに落ちた汗は、気化熱を奪わないからです。
たとえ滝のように汗が流れても、それを上手く蒸発させない限り、冷却効果は生じません。熱中症や塩分脱水のリスクが高まるだけです。

体に打ち水するようなもの
扇風機は、なぜ涼しく感じるのでしょうか?
冷たい風が当たっているからではありません。それも少しはありますが、主には肌表面の水分が蒸発する時に、体の熱を奪うからです。
打ち水は、なぜ効果があるのでしょうか?
水で地面を冷やすからではありません。それも少しはありますが、主には撒いた水分が蒸発する時に、地表の熱を奪うからです。
どちらも気化熱が主役なのです。
濡れタオルを肩や頭にかけるのは、体に打ち水をするようなもの。扇風機の風を当てることで、その水分の蒸発を促して気化熱を奪わせます。
別の表現をすれば、体に人工的な汗を付着させて、体温調整を補助するとも言えます。

たった1枚の濡れタオルが、扇風機の効果を大いに高めてくれるのですが、しかし湿度が高すぎる時は効果が鈍ります。
湿度が高すぎる環境は、水分が蒸発しにくいからです。
したがって、なるべく二点換気をして、湿度を外気と平準化しながら利用してください。閉め切った空間で水分を飛ばすと、その中の湿度が上がります。
「冷感タオル」
濡れタオルは、普通のタオルを濡らすだけでよいのですが、専用の商品も発売されています。
それは冷感タオル(または冷却タオル)というもので、より快適に、そして効果的に使えるように設計されています。
気化熱の効果を実感して、日々の習慣になったという方は、冷感タオルを検討してみてもよいかもしれません。
普通のタオルと何が違うのかと言うと、より蒸発しやすく、より軽く、より肌触りが良くなっています。
これはポリエステル・ナイロン・高機能繊維などを利用しているからです。普通のタオルはコットン(綿)です。
繊維が細いため、表面積が大きくなり、そのぶん蒸発しやすくなります。
蒸発しやすければ、効率的に気化熱を使えるので、それだけ冷却効果は高まります。
また、肌触りがサラッとしていて、水分を含んだ状態でも比較的軽いので、肩や頭に載せている時に違和感が減ります。
要するに、使いやすいわけですが、一方でお風呂用としては劣ります。吸水という点では、コットンの方が優れています。
汗の機能
汗の機能は、水分を表皮に供給することだけではありません。
汗には微量なミネラルが含まれており、これが皮脂と混ざることで、皮脂膜(酸性皮膜)が形成されます。
皮脂膜には、次のような大事な機能があります。
・乾燥を防ぐ。
・細菌や真菌の増殖を抑える。
・皮膚のバリア機能を維持する。
体温調整の機能に比べると副次的ですが、適度に汗を掻くのは大事なことだと言えます。
なお、汗には有害物質をわずかに排泄する機能もありますが、ここに過大な期待をしてはいけません。
デトックスの主役は、肝臓・腎臓・胃腸の働きを高めることですから、無理に大量の汗を掻こうとはしないでください。
風呂上がりの冷却
私は風呂上がりに氷を一つ口に含み、体を拭いたタオルを肩や頭にかけて、扇風機に当たるようにしています。
たったこれだけで、単に扇風機に当たるより、随分と冷却効果が上がります。
氷を口に含むのは、清涼剤のようなものです。冷却効果としては子供だましであり、大して期待はできません。
体を冷却するというより、口内の冷感を楽しむ感じです。
重要なのはやはり、濡れたタオルの水分を、扇風機の風で蒸発させて、気化のための熱を体から奪わせることです。
注意したいのは、バスタオルではなく、普通サイズのタオルを使うこと。
バスタオルだと、含んだ水分より布の量が多くなってしまうため、風呂上りに服を着るように暑く感じてしまいます。
一方、普通サイズのタオルであれば、全体に程よく水分を含みますし、肩や頭に載せるだけなので、暑さや鬱陶しさをあまり感じません。
たった一枚の濡れタオルがあるだけで、ただ扇風機の風に当たるのに比べて、数度の体感差が生じます。
お風呂は普通サイズのタオルで!
普通サイズのタオルは、これ以外にも利点があります。
バスタオルに比べて、体を拭く時によく手足を動かすことになるため、自然と体操のようになるのです。
ちょっとしたことですが、この習慣を持つことによる効果は侮れません。ほんの少しであれ、毎日の運動効果の蓄積は、必ず健康に影響します。
体を拭くだけですから、運動している感覚もほぼなく、運動不足になりがちな方には特によいでしょう。

洗濯したり、干したりする時もラクで、場所も取らないので、メリット尽くしと言えます。
浴室内で使ったタオルを絞って、脱衣場でバスタオル代わりにするので、2枚を1枚に減らせます。布の量的には、3~4枚分が1枚に減るイメージです。
女性だと抵抗があるかもしれませんが、男性の方であれば、お風呂用のタオルを普通サイズに変えるのは、十分検討に値する選択肢です。
バスタオルは、子供の頃から当然のように使っているので、これは意外と盲点になります。
しかし、いったん認知が変わってしまうと、逆に「なぜバスタオルである必要があるのだろう」と思うほどです。
冷静に考えてみると、バスタオルが優れている点は、体に巻いて秘部を隠す機能しかありません。
なお、使わなくなったバスタオルは、私の場合は枕に巻いて、枕カバーの代わりにしています。
猫ちゃん・ワンちゃんは?
最後に小ネタを紹介しておきます。人によっては重要かもしれません。
犬の場合
犬や猫には、人間のように全身に及ぶ汗腺がありません。
たとえば、犬の汗腺は足裏にしかありません。暑い日に、犬の足跡が床に湿って残ることがありますが、これは足裏から出た汗です。
犬には人間のように、体で汗を掻いて体温調整する能力がありません。
それではどうするかと言うと、パンティングをします。つまり、舌を出してハアハア呼吸します。これによって、舌の水分を蒸発させて冷却するわけです。

犬の散歩は、朝方か日没後にしろと言われますが、それは日中だと、犬にとっては暑すぎるからです。
人間は全身で汗を掻けますが、犬は舌と足裏くらいしか主な冷却装置がありません。ずっと舌を出していたら、それは暑くて辛いというサインです。
なお、汗腺のほかにも、犬が暑さに弱い理由があります。
それは地表の反射熱です。太陽熱はアスファルトに反射しますから、背の低い動物ほど暑く感じています。
子供の体感も大人より暑いはずですから、家族で外出する時は意識してあげてください。
猫の場合
猫好きの人が怒らないように、猫についても触れておきます。犬と違って散歩をしないので、あまり関係ないかもしれませんが。
猫にも、人間のような広範な汗腺はありません。肉球や鼻の周辺にはありますが、あまり使用していません。

それではどうするかと言うと、自分の体を舐めます。
これは毛繕いであると同時に、唾液を体に付着させて、蒸発させる冷却作業でもあります。
天然ではない汗を作るという点では、先にご紹介した濡れタオルを利用する方法と共通しています。
その他、日陰に移動したり、体を広げたりして冷却しています。猫はこうした避暑に優れています。犬と違ってパンティングはあまりしません。
総じて毛の多い動物は、保温機能に優れる一方、汗腺があまり発達しないようです。
人間は体毛が少ないので、保温は衣服で補うことにして、汗腺がよく発達したのでしょう。
これによって、人間は持久力を獲得したとも言えます。汗を掻けなければ、私たちはすぐにへばってしまいます。
つづく。
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