対決して完敗
神威大帝と神威法王が工作されて、傀儡のようになったダグザ帝国の内部に、ミトラス修道会は着実に浸透していきました。
ソレルの側近ウイニキウスまで、ラクシャ導師の接吻を受けて手駒になっていました。
ウイニキウスは、ダグザの大釜を修復するために、大量のオリハルコンを帝都に搬入していたのです。

数々の事件を目の当たりにして、ようやく事態の深刻さを悟ったソレルは、ミトラス修道会との対決を覚悟しましたが、その時は既に手遅れになっていました。
ソレル
・…確かに、大釜の修復はダグザ大帝からラクシャ導師に直接下された勅命だ。
一連の不審な動きをもとに彼女を問い詰めても、それを名目に躱(かわ)される恐れがある。
なんとしても探らなければならない。…彼らの真の狙いを。
間違いなく何かが動いている…ダグザ帝国の影で、大きな何かが…
ソレル
・…実は、前回君(※レダ)と話した後、この件(※シドニア事変)についてこちらでも探っていた。
その結果判明したことは、これが帝国にとっても無視できない事件であるという事だ。
表面上のものよりも深いようだ。神殿の中のどこまで浚(さら)わねばならないか、正直底が知れない。
容易なことではないし、慎重に事を進める必要もある。
だが、私はそれと…ダグザ帝国の暗部(※ミトラス修道会)と対決する覚悟を決めたということだ。
次は私が応える番だ。必ず、シドニアにまつわる陰謀の全てを明らかにしてみせよう。

アンナ
・…ソレル様、貴方はまさか、ミトラス修道会と…
ソレル
・そうだ。彼らと決別のための戦いを起こすことになるかもしれない。
アンナ、ラクシャ導師に気づかれずに動かせる戦力はどのくらいだろう。
アンナ
・以前からその密命を受け、そちらも継続して調査を行っていますが、神殿の中にどこまで彼らの根が入り込んでいるか、完全には把握し切れていない状態です。
ですが、少なくともあと3カ月程度お待ちいただければ…何とか。
ソレル
・頼む。時間との戦いになるかもしれない。

対決を覚悟したソレルと、ミトラス修道会の間に、どのような攻防があったかは分かりません。
その経緯は本編はおろか、ナレーションによる説明すらないからです。
攻防の過程でマリアは死亡したようですが、一方でソレル自身は、眠りから覚めたダグザ大帝に処刑されてしまいます。つまり、ミトラス修道会が完勝したわけです。
ソレルは絶命して、おそらくはダグザの大釜で溶かされて肉体も失い、心臓だけが残りました。
その心臓を手に入れて、コンロンの里に持ち込むのが、運命の神フォトナです。
そこでソレルの心臓は、アガルタの技術で再び肉体を得て、調停者イシュマールとして復活することになります。
フォトナ
・吾は、この世界を救うための鍵となるもの(※ソレルの心臓)を持っておる。
それを、どうしても彼の地(※コンロン)まで届ける必要があるのじゃ。
フォトナ
・その様子を見るに、無事に「彼女(※神祖ソティス)」には会えたようじゃの。
よく聞け。お主(※ソレル)は一度死に、肉体は失われ、今や心臓だけの存在となってしまっておる。
今は手足どころか、お主の身体を構成するものがほとんどない状態じゃ。
さりとて驚け。彼らが今、お主のために新しい肉体を与えてくれようとしておるのじゃ。

こうして大罪神のソレルと、大罪人のコウカが、冥界に呑まれる寸前の世界に、救世主軍として旗揚げしたわけです。
すべてを引き換えに
コンロンの長ゼノンは、イシュマールの製造に際して、里に残された最後の心核を提供します。
その心核とは、なんとゼノン自身の心核でした。
ゼノンはこの時点で、短くとも3,150年は生きています。長寿命は心核のお陰であり、これを取り除けばゼノンは死ぬことになります。
コウカ
・それにしても驚きました。まだ稼働できる心核が残されていたとは。
ゼノン
・そうだ、運がよかった。幸いなことに、あとたった一つだけ残されている。
最後の心核はここ(※自分の体)にある。これを使うのだ。
コウカ
・…!? しかし、それではゼノン様の命が…
ゼノン
・儂はジョカからの外部接続で、力の供給を受けることができる。
この者を生み出す程度の期間であれば、何とか持たせることができるだろう。
イシュマールを製造するジョカもまた、老朽化で限界を迎えていました。
ゼノンの命を代償に、ジョカの最後の仕事として、すべてを投じて生まれたのが、イシュマールという最後の調停者です。
ゼノン
・この心臓の持ち主がフォトナ殿の言う者なら、すべてを引き換えにするだけの価値はある。
救世主軍は、たった3人から始まりました。
つまり、最初の調停者トロイア、大罪人コウカ、そして大罪神にして最後の調停者イシュマールです。
歴史的な和解
風花雪月のファン以外には通じないかもしれませんが、簡単に述べておきましょう。
風花雪月は、ナバテア視点で描く、アガルタとの対決を描く物語でした。
今回の万紫千紅は、元アガルタのコンロンと、ナバテアが手を組んで、バロールと戦う物語です(バロールもナバテアですが)。
組織を外れたとは言え元アガルタと、その仇敵であるナバテアが手を組むのです。
特にコンロンは、ダグザ大帝に同胞を大量虐殺されており、深刻な被害を受けているにも関わらず。
そして、その象徴がアガルタの心核と、ナバテアの心臓を埋め込んだイシュマールでした。
彼は救世だけでなく、和解のシンボルでもあったのです。
この歴史的和解にゾクゾクできる人は、重度のエムブレム中毒と言えるでしょう。正常な人は素通りです。
フォトナ
・何としてもあやつ(※イシュマール)の肉体を完成させてくれ。
そして吾の元に連れてきて欲しい。
バロールめに反撃を始めるのはそこからじゃ。
お主らには、過去のわだかまりがあったにも関わらず、協力してくれたこと、誠に感謝しておる。
コウカ
・私もあなたに救われた。礼を言うのはこちらも同じだ。
それに、あなたは本気で世界を救おうとしている。
人間として、これに協力しない理由はない。
魂は神祖の元へ
神と呼ばれる神祖の眷属は、死ぬと魂がソティスに元へ還ることになっているようです。エンディングの描写を見てみましょう。
ソティス
・…ようやく帰ってきおったか。お主(※バロール)も、お主の娘たちも。
ようもわしの言いつけを無視し、好き放題暴れてくれたものよのう。
本当に、人の心というのは御しがたい…
腹立たしいが…まぁ、栓無きことか。
あぁ、待て、怯えずともよい。済んだことじゃ。
…ええい、よいと言っておろうが!
なに? 赦してくれじゃと?
…ふん、当然じゃ。わし以外の誰が、お主のような桁外れの大馬鹿者を赦すことができようものか。
…ふふん。この母の海よりも深ーい愛で、包みこんでやるとしようではないか。
ソティスは、あれだけ世を乱したバロールとその娘たちを、意外なほどあっさりと赦してしまいました。
なぜかと言えば、ソティスの一部だからでしょう。
人間でも誰しも負の部分がありますが、そうしたネガティブな部分を担当した眷属がバロールだったわけで、お仕置きはするけれども、全否定や抹消はしない(できない)ようです。
そのあたりは別の機会に触れるとして、ここで言いたいのは、眷属が死ぬと「魂が神祖の元へ還る」ことです。
フォトナ
・今となっては知らぬ者も多いが、ナバテアの民の魂は必ず彼女(※神祖ソティス)と繋がっておる。
なぜなら、ナバテアの民とは元来、彼女から別れた魂からなる存在だからじゃ。
それ故に…吾らの魂は、死を迎えても大いなる循環に回帰することは決してない。
いつかその時がくれば、彼女のもとに戻るだけのことじゃ。

オープニングを思い出してみてください。
ソティス
・わしの歌がようやく届いたか。
…久しいのう、お主(※ソレル)。
…何じゃ? もしやわしのことを忘れたのか?
ソティス
・此度、お主を起こした理由じゃが、今現在起こっている事態に対し、お主に動いてもらうことが最適であろうと、このわしが考えたためじゃ。
ソティス
・「はじまりのもの」の名において、わしは今、お主に命じる。
冥界の王バロールを討ち果たし、この地の闇を吹き払うのじゃ!
そしてこれは、お主自らが決着をつけねばならぬ業でもある。
この闇に閉ざされた地を再び光で照らすなど、お主(※太陽の神)にうってつけの仕事ではないか。
この場面は死んだソレルの魂が、神祖の元へ還っていたのでした。
以上、脱線込みで長々と説明しましたが、これでイシュマールの正体がソレル(とゼノン)であることが、ご理解いただけたと思います。
コウカの告白

最後に、少し長くなりますが、コウカの告白を記載しておきましょう。
ここには彼女の人生と決意が詰まっています。
作中ではやや冷たい印象を残したかもしれないコウカですが、その内に秘める熱さ、強さを感じずにはいられません。
彼女はある意味でイシュマールの鏡でした。
コウカ
・今のこの状況を招いた一因がお前(※イシュマール)にもあると、私はフォトナから聞いたことがある。
教えてくれ。それは…本当のことなのか?
いや、お前のことを責めたい訳じゃない。同じなんだ、私も。
私はかつて、フェザーンの戦いで重傷を負い、夫を失い、子供をも奪われた。
あの子は、まだ5歳になったばかりだった。
ダグシオンに虜囚として連れ去られてしまった。
それっきりだ。必死に調べたが、結局、息子のその後の消息は分からなかった。
ダグザの大釜で処刑されたのか、運よくダマスカルの地に連れ出されたのかも。
大帝への憎しみは一切色褪せていないが…
自分の子供の顔は思い出せなくなってしまった。
…哀しいことだな。愛情よりも、憎しみの方が勝っているなどと。
あの後、私は…戦死した夫の心核を移植され、かろうじてこの命を繋ぎ止めた。
なんとか身体が回復するところで、ダグザ大帝に復讐するためにダグシオンに潜入した。
そこでも私はヘマをした。
暗殺は失敗し、命からがら逃げだしたところで、ラクシャ導師に命を救われたんだ。
目的は同じだと彼女は言い、私は協力してきた。
だが、結局、彼女は私を裏切っていた。
…利用されていただけだったんだ、私は。
彼女の企みで、ダグシオンで平和に暮らしていた100万人もの人々の命が失われてしまった。
男も女も、年寄りも、かつての私の子供と同じくらいの歳の子供もたくさんいた。
そんなつもりは無かったと言ってみたところで、私がこの悲劇に加担した事実は変わらない。
犠牲になった者たちから私が赦されることなど、恐らく永遠にないのだろう。
かつて、私がダグザ大帝を決して赦さなかったのと同じように。
だが…失われた者は決して戻らないとしても、今生きている者達を一人でも多く救えと、ゼノン様は私にそう言ってくれた。
その言葉は、今でも私の中に響いている。
だから、それが私の償いだと…そう思うんだ。
私の罪は消えない。だが、だとしても…
感謝する。お前にだけは、聞いておいて貰いたかった。
注
この記事は個人の考察であり、任天堂及びインテリジェントシステムズ社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
【関連記事】 イシュマールの正体 (1)
【関連記事】 イシュマールの正体 (2)
【関連記事】 イシュマールの正体 (3)
【関連記事】 アウロラの本当の父親 (1)
【関連記事】 アウロラの本当の父親 (2)



コメント