万紫千紅考察 イシュマールの正体 (4)

イシュマールの正体4 ブログ

対決して完敗

 神威大帝と神威法王が工作されて、傀儡のようになったダグザ帝国の内部に、ミトラス修道会は着実に浸透していきました。

 ソレルの側近ウイニキウスまで、ラクシャ導師の接吻を受けて手駒になっていました。

 ウイニキウスは、ダグザの大釜を修復するために、大量のオリハルコンを帝都に搬入していたのです。

 数々の事件を目の当たりにして、ようやく事態の深刻さを悟ったソレルは、ミトラス修道会との対決を覚悟しましたが、その時は既に手遅れになっていました。

ソレル
・…確かに、大釜の修復はダグザ大帝からラクシャ導師に直接下された勅命だ。
 一連の不審な動きをもとに彼女を問い詰めても、それを名目に躱(かわ)される恐れがある。

 なんとしても探らなければならない。…彼らの真の狙いを。
 間違いなく何かが動いている…ダグザ帝国の影で、大きな何かが…

ソレル
・…実は、前回君(※レダ)と話した後、この件(※シドニア事変)についてこちらでも探っていた。
 その結果判明したことは、これが帝国にとっても無視できない事件であるという事だ。

 表面上のものよりも深いようだ。神殿の中のどこまで浚(さら)わねばならないか、正直底が知れない。
 容易なことではないし、慎重に事を進める必要もある。
 だが、私はそれと…ダグザ帝国の暗部(※ミトラス修道会)と対決する覚悟を決めたということだ。

 次は私が応える番だ。必ず、シドニアにまつわる陰謀の全てを明らかにしてみせよう。

アンナ
・…ソレル様、貴方はまさか、ミトラス修道会と…

ソレル
・そうだ。彼らと決別のための戦いを起こすことになるかもしれない。
 アンナ、ラクシャ導師に気づかれずに動かせる戦力はどのくらいだろう。

アンナ
・以前からその密命を受け、そちらも継続して調査を行っていますが、神殿の中にどこまで彼らの根が入り込んでいるか、完全には把握し切れていない状態です。
 ですが、少なくともあと3カ月程度お待ちいただければ…何とか。

ソレル
・頼む。時間との戦いになるかもしれない。

 対決を覚悟したソレルと、ミトラス修道会の間に、どのような攻防があったかは分かりません。

 その経緯は本編はおろか、ナレーションによる説明すらないからです。

 攻防の過程でマリアは死亡したようですが、一方でソレル自身は、眠りから覚めたダグザ大帝に処刑されてしまいます。つまり、ミトラス修道会が完勝したわけです。

 ソレルは絶命して、おそらくはダグザの大釜で溶かされて肉体も失い、心臓だけが残りました。

 その心臓を手に入れて、コンロンの里に持ち込むのが、運命の神フォトナです。

 そこでソレルの心臓は、アガルタの技術で再び肉体を得て、調停者イシュマールとして復活することになります。

フォトナ
・吾は、この世界を救うための鍵となるもの(※ソレルの心臓)を持っておる。
 それを、どうしても彼の地(※コンロン)まで届ける必要があるのじゃ。

フォトナ
・その様子を見るに、無事に「彼女(※神祖ソティス)」には会えたようじゃの。

 よく聞け。お主(※ソレル)は一度死に、肉体は失われ、今や心臓だけの存在となってしまっておる。
 今は手足どころか、お主の身体を構成するものがほとんどない状態じゃ。

 さりとて驚け。彼らが今、お主のために新しい肉体を与えてくれようとしておるのじゃ。

 こうして大罪神のソレルと、大罪人のコウカが、冥界に呑まれる寸前の世界に、救世主軍として旗揚げしたわけです。

すべてを引き換えに

 コンロンの長ゼノンは、イシュマールの製造に際して、里に残された最後の心核を提供します。

 その心核とは、なんとゼノン自身の心核でした。

 ゼノンはこの時点で、短くとも3,150年は生きています。長寿命は心核のお陰であり、これを取り除けばゼノンは死ぬことになります。

コウカ
・それにしても驚きました。まだ稼働できる心核が残されていたとは。

ゼノン
・そうだ、運がよかった。幸いなことに、あとたった一つだけ残されている。
 最後の心核はここ(※自分の体)にある。これを使うのだ。

コウカ
・…!? しかし、それではゼノン様の命が…

ゼノン
・儂はジョカからの外部接続で、力の供給を受けることができる。
 この者を生み出す程度の期間であれば、何とか持たせることができるだろう。

 イシュマールを製造するジョカもまた、老朽化で限界を迎えていました。

 ゼノンの命を代償に、ジョカの最後の仕事として、すべてを投じて生まれたのが、イシュマールという最後の調停者です。

ゼノン
・この心臓の持ち主がフォトナ殿の言う者なら、すべてを引き換えにするだけの価値はある。

 救世主軍は、たった3人から始まりました。

 つまり、最初の調停者トロイア、大罪人コウカ、そして大罪神にして最後の調停者イシュマールです。

歴史的な和解

 風花雪月のファン以外には通じないかもしれませんが、簡単に述べておきましょう。

 風花雪月は、ナバテア視点で描く、アガルタとの対決を描く物語でした。

 今回の万紫千紅は、元アガルタのコンロンと、ナバテアが手を組んで、バロールと戦う物語です(バロールもナバテアですが)。

 組織を外れたとは言え元アガルタと、その仇敵であるナバテアが手を組むのです。

 特にコンロンは、ダグザ大帝に同胞を大量虐殺されており、深刻な被害を受けているにも関わらず。

 そして、その象徴がアガルタの心核と、ナバテアの心臓を埋め込んだイシュマールでした。

 彼は救世だけでなく、和解のシンボルでもあったのです。

 この歴史的和解にゾクゾクできる人は、重度のエムブレム中毒と言えるでしょう。正常な人は素通りです。

フォトナ
・何としてもあやつ(※イシュマール)の肉体を完成させてくれ。
 そして吾の元に連れてきて欲しい。
 バロールめに反撃を始めるのはそこからじゃ。

 お主らには、過去のわだかまりがあったにも関わらず、協力してくれたこと、誠に感謝しておる。

コウカ
・私もあなたに救われた。礼を言うのはこちらも同じだ。
 それに、あなたは本気で世界を救おうとしている。
 人間として、これに協力しない理由はない。

魂は神祖の元へ

 神と呼ばれる神祖の眷属は、死ぬと魂がソティスに元へ還ることになっているようです。エンディングの描写を見てみましょう。

ソティス
・…ようやく帰ってきおったか。お主(※バロール)も、お主の娘たちも。

 ようもわしの言いつけを無視し、好き放題暴れてくれたものよのう。
 本当に、人の心というのは御しがたい…
 腹立たしいが…まぁ、栓無きことか。

 あぁ、待て、怯えずともよい。済んだことじゃ。
 …ええい、よいと言っておろうが!

 なに? 赦してくれじゃと?
 …ふん、当然じゃ。わし以外の誰が、お主のような桁外れの大馬鹿者を赦すことができようものか。

 …ふふん。この母の海よりも深ーい愛で、包みこんでやるとしようではないか。

 ソティスは、あれだけ世を乱したバロールとその娘たちを、意外なほどあっさりと赦してしまいました。

 なぜかと言えば、ソティスの一部だからでしょう。

 人間でも誰しも負の部分がありますが、そうしたネガティブな部分を担当した眷属がバロールだったわけで、お仕置きはするけれども、全否定や抹消はしない(できない)ようです。

 そのあたりは別の機会に触れるとして、ここで言いたいのは、眷属が死ぬと「魂が神祖の元へ還る」ことです。

フォトナ
・今となっては知らぬ者も多いが、ナバテアの民の魂は必ず彼女(※神祖ソティス)と繋がっておる。
 なぜなら、ナバテアの民とは元来、彼女から別れた魂からなる存在だからじゃ。

 それ故に…吾らの魂は、死を迎えても大いなる循環に回帰することは決してない。
 いつかその時がくれば、彼女のもとに戻るだけのことじゃ。

 オープニングを思い出してみてください。

ソティス
・わしの歌がようやく届いたか。
 …久しいのう、お主(※ソレル)。
 …何じゃ? もしやわしのことを忘れたのか?

ソティス
・此度、お主を起こした理由じゃが、今現在起こっている事態に対し、お主に動いてもらうことが最適であろうと、このわしが考えたためじゃ。

ソティス
・「はじまりのもの」の名において、わしは今、お主に命じる。
 冥界の王バロールを討ち果たし、この地の闇を吹き払うのじゃ!

 そしてこれは、お主自らが決着をつけねばならぬ業でもある。
 この闇に閉ざされた地を再び光で照らすなど、お主(※太陽の神)にうってつけの仕事ではないか。

 この場面は死んだソレルの魂が、神祖の元へ還っていたのでした。

 以上、脱線込みで長々と説明しましたが、これでイシュマールの正体がソレル(とゼノン)であることが、ご理解いただけたと思います。

コウカの告白

 最後に、少し長くなりますが、コウカの告白を記載しておきましょう。

 ここには彼女の人生と決意が詰まっています。

 作中ではやや冷たい印象を残したかもしれないコウカですが、その内に秘める熱さ、強さを感じずにはいられません。

 彼女はある意味でイシュマールの鏡でした。

コウカ
・今のこの状況を招いた一因がお前(※イシュマール)にもあると、私はフォトナから聞いたことがある。
 教えてくれ。それは…本当のことなのか?

 いや、お前のことを責めたい訳じゃない。同じなんだ、私も。

 私はかつて、フェザーンの戦いで重傷を負い、夫を失い、子供をも奪われた。
 あの子は、まだ5歳になったばかりだった。
 ダグシオンに虜囚として連れ去られてしまった。

 それっきりだ。必死に調べたが、結局、息子のその後の消息は分からなかった。
 ダグザの大釜で処刑されたのか、運よくダマスカルの地に連れ出されたのかも。

 大帝への憎しみは一切色褪せていないが…
 自分の子供の顔は思い出せなくなってしまった。
 …哀しいことだな。愛情よりも、憎しみの方が勝っているなどと。

 あの後、私は…戦死した夫の心核を移植され、かろうじてこの命を繋ぎ止めた。
 なんとか身体が回復するところで、ダグザ大帝に復讐するためにダグシオンに潜入した。

 そこでも私はヘマをした。
 暗殺は失敗し、命からがら逃げだしたところで、ラクシャ導師に命を救われたんだ。
 目的は同じだと彼女は言い、私は協力してきた。

 だが、結局、彼女は私を裏切っていた。
 …利用されていただけだったんだ、私は。

 彼女の企みで、ダグシオンで平和に暮らしていた100万人もの人々の命が失われてしまった。
 男も女も、年寄りも、かつての私の子供と同じくらいの歳の子供もたくさんいた。

 そんなつもりは無かったと言ってみたところで、私がこの悲劇に加担した事実は変わらない。
 犠牲になった者たちから私が赦されることなど、恐らく永遠にないのだろう。

 かつて、私がダグザ大帝を決して赦さなかったのと同じように。

 だが…失われた者は決して戻らないとしても、今生きている者達を一人でも多く救えと、ゼノン様は私にそう言ってくれた。
 その言葉は、今でも私の中に響いている。
 だから、それが私の償いだと…そう思うんだ。

 私の罪は消えない。だが、だとしても…

 感謝する。お前にだけは、聞いておいて貰いたかった。

 注
 この記事は個人の考察であり、任天堂及びインテリジェントシステムズ社の見解ではありません。
 内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。

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