いつも悲しそうだった
アウロラ
・ユファス母さまはバロール神殿に居た頃は、仮面で素顔を隠していたらしいの。
それは、素顔でいるとよくないことが起こるっていう、神祖さまの予言の関係らしいのだけど…
でも、父さまが嘆きの島を訪れた時に、たまたま母さまの素顔を見てしまって。
それで父さまは母さまに一目惚れしちゃって、頼み込んで島から連れ出してしまったらしいの。
その時の父さまの熱烈さに、母さまも根負けしちゃったって言っていたけど…
実際のところ、まんざらでもなかったみたい。
わたくしから見ても、お似合いの夫婦だったもの。
でも…母さまはいつも、心なしか少し悲しそうにしていた気がするわ。
わたくしは、当時、どうして母さまがそんな顔をなさるのかわからなかったけれど…
ソレルは理知的で穏やかに見えますが、意外なことに、一目惚れしたユ・ファスに猛烈にアタックしたようです。
気になるのは最後の部分です。
ユ・ファスは「いつも、心なしか少し悲しそうにしていた」とあります。この描写を覚えておいてください。

子供に聞かせちゃ駄目な話
次は、以下の発言をご覧ください。
アウロラ
・わたくし…今までずっと不思議に思っていたことがひとつあるの。
母さまが大帝様にダグシオン虜囚の助命を願った時に、どうしてそれが認められたのか。
母さまがあの恐ろしいおじい様(※ダグザ大帝)に、いったい何を差し出したのかって…
…ごめんなさい、あなた(※カイ)はまだ子供なのに。
本当はこんな話聞かせちゃだめよね。
帝国歴551年、ダグザ帝国は白き卵の民が暮らすコンロンを攻め落としました。
世にいう「フェザーンの戦い」です。
この時、勝利したダグザ帝国は、10万人にも及ぶ白き卵の民を帝都ダグシオンに連行し、ダグザの大釜で大量処刑しました。

虐殺に心を痛めたユ・ファスは、ダグザ大帝に懇願して、子供約5,000人に限り、文字を捨てることを条件に助命する約束を取りつけました。
この子供たちが逃れ、そして興した国がダマスカル王国ですが、ここでは割愛します。
ダグザ大帝は、子供約5,000人の処刑を見送りましたが、それは当然ながら単なる温情ではありませんでした。
彼は助命を嘆願するユ・ファスに、見返りとして「何か」を要求したのです。
ユ・ファスが差し出した、子供に話すべきではない内容のもの。それは素直に考えれば、ユ・ファスの身体でしょう。
これを強く支持する情報があります。
それはアウロラの生年です。
アウロラ
・え、わたくし? 生まれたのが確か553年だから…今年で896歳かしら。
アウロラは、帝国歴553年に生まれました。
上記のフェザーンの戦いは同551年です。時期的に、ぴったり合ってしまうのです。
ユ・ファスが、ソレルとお似合いの夫婦であるにも関わらず、いつも悲しそうにしていたのは、こういう裏事情があったからでしょう。
頭の中がぐちゃぐちゃ
アウロラは、自分の出生の秘密について、薄々勘づいていたようです。長らく次のような葛藤を抱えていました。
アウロラ
・わたくし、ずっと父さまの事から逃げ続けていたの。
あの時、母さまが処刑されてしまった時、わたくしは父さまのことが許せなかった。
父さまが守れなかったせいで、母さまが死んでしまったと思い込んで。
わたくしは、母さまが死んでしまった事をきっと、受け入れることが出来なかったのね。
悲しくて悔しくて…頭の中がぐちゃぐちゃになってしまって。
そのまま父さまの手を振り払って、自分の神殿に閉じこもってしまって…
だから、失踪事件のせいで謹慎を命じられたのも、その時はそれでよかったと思っていたの。
そうやって過ごしている内に、わたくしは自分にまつわることを色々考えてしまって。
わたくしが本当は誰の子なのかとか、父さまがずっと、何を考えていたのかとか。
そこに向き合うことを考えると、押し潰されそうになってしまっていたの。
そうしている内に、父さまに会うことが何よりも恐ろしくなってしまって…
そんな時、わたくしを連れ出してくれたのがカストールだったの。
…本当は一番つらかったのは、もしかしたら父さまだったかもしれないのに。
アウロラは、本当は真実にたどり着いていたのに、それを認めるのが嫌で避け続けました。
そして、思考の反芻(はんすう)を維持するために、謹慎状態が一役買ってしまうという悪循環に陥っていました。
しかし、息子カイとのやり取りを通じて、彼女は自らの「不都合な真実」を認める決意をします。
裏切ってしまった

アウロラは、次の発言をする頃には、ダグザ大帝がユ・ファスを略奪したことをほぼ確信し、その事実を受け止めていたようです。
アウロラ
・父さまは、わたくしは本当の子供ではないと、そうお考えなのではないですか?
ソレル
・馬鹿な…そのようなこと、どこから吹き込まれたのだ。
アウロラ
・誰も言っておりません。けれど、考えているうちに分かったのです。
記憶の中にある母さまは、綺麗で優しくて…
だけど、いつも寂しそうにしていました。
その時のわたくしは、どうして母さまがそんな顔をなさるのか、想像も出来ませんでした。
ソレル
・あの頃は、ダマスカルでの体験が、彼女の心情に変化を及ぼしたものだと思っていた。
アウロラ
・わたくし、今ならばよく分かりますわ。母さまは苦しんでいらっしゃったのです。
多くの命を救うためだったとはいえ、父さまを裏切ってしまったという自責の念で。

ユ・ファスは多くの命、つまり5,000人の子供を救うために、夫ソレルを裏切って、ダグザ大帝の要求に応じました。
その自責の念で苦しみ続け、いつも悲しそうな、寂しそうな表情をしていたわけです。
ソレルのことを愛していながら、自ら距離を取ろうとし、それが夫婦間の空気をぎこちなくしてしまったようです。
親子間のドロドロと、夫婦間の微妙な不和。
そこをミトラス修道会に浸け込まれて、最終的にダマスカルの8月事件、そしてユ・ファス処刑へと繋がっていきます。ここはまた一つ、別に取り扱いたい大事な問題です。
ソレルは、アウロラの出生をめぐる噂が広まるのを嫌い、アウロラ神殿で起きた失踪事件を口実にして、彼女に謹慎を命じました。
ソレル
・…失踪事件と同じ時期に、街ではお前に関するいくつもの噂が流れていた。
その中には…アウロラはソレルの本当の子ではない、というものもあった。
人々の好機の目がお前に向けられ、私はお前を人前から隠すことで事態の鎮静化を計った。

この処置は、娘アウロラのためでもあり、ソレル自身のためでもありました。
しかし、その後は謹慎解除のタイミングを掴めず、だらだらと何百年もその状態が続くことになります。そこに風穴を開けたのが、純真なる我らがカイでした。
わたくしは父さまの娘です!
覚悟を決めたアウロラの、以下の堰を切ったような発言をご覧ください。
間違いなく、カイ編のハイライトの一つです。あるいは、全体の中でも相当な名シーンかもしれません。
アウロラ
・父さまはバロールの娘である母さまを、ご自分の妻としてお迎えなさいました。
それは、たとえ世界が滅茶苦茶になっても一緒になることを望んだからでしょう?
それだけの覚悟がおありだったからこそ、神祖様の言いつけを破って、あの島から母さまを連れ出したのではなかったのですか!?
距離を置こうとする素振りを見せていたって、絶対に母さまは父さまのことを信じていたのに!
どうしてもっとちゃんと、側に居てあげなかったのですか!?
そうすれば母さまは、もっとずっと、幸せでいられたでしょうに!

アウロラ
・自分の血が誰のものだとしても、わたくしは父さまの娘です!
…わたくしはずっと、母さまを守れなかった父さまを許せないと思い込んでいました。
だけど、それは…そうしなければ、わたくしが自分の心を保てなかったからです。
それは…本当はわたくしの心が弱かったせいで…
父さま、わたくしは今ならばちゃんとわかります。
あなたが父親として注いでくださった愛情は、わたくしにとって一番大切なものです。
だから、わたくしは父さまの娘であることをやめるつもりはありません!
アウロラは立派でしたが、ソレルもまたナイスガイだったと私は思います。それは別の事例と比較するとよく分かります。
不義の子リンド
最後に別の事例、冥将リンドについて触れておきましょう。
アウロラとまったく無関係に見えるリンドは、しかしある共通点があります。それは彼もまた「不義の子」であるということです。
こちらも驚くべき設定で、なんとジュラとアラゴの子です。しかも、作中で明言されています。
リンド
・…私は、英雄アラゴとジュラの間の不義の子として産まれた。
タリムーン
・要するに、俺様とあんたは従兄弟同士ってとこか。
その上、あんたにも乱暴に計算して、4分の3ほど神様の血が混じってるときた。

ジュラはダグザ大帝の正妻、アラゴはダグザ大帝の側室の子です。側室かどうかもわかりません。良くて側室、悪くて行きずりでしょう。
アラゴは半神ですから、彼の母は人間だったようです。
神ジュラと半神アラゴの間に生まれた不義の子リンドは、4分の3神ということになります。
上記の二人はサラリと話していますが、その内容は驚愕のひと言です。タリムーンの返しも非常に気になるものの、ここではぐっと抑えてリンドに戻りましょう。
整理しますと、ダグザ大帝が人間の女に産ませた子(アラゴ)が、ダグザ大帝の妻(ジュラ)を妊娠させたわけです。
ジュラが浮気したのか、アラゴが求愛したのか、その真相は明らかではありません。
ダグザ大帝が、息子の嫁を妊娠させたことを考えれば、ジュラがリベンジ浮気をした可能性も十分にあります。
神々の愛憎劇は、人間のそれよりも余程ドロドロしています。
人間でも浮気は珍しくありませんが、親の伴侶・子の伴侶が相手となると、発想すらしなかったりします。時間軸が長い神々の場合、そのあたりの感覚が私たちとは違うのでしょうか。
疎んだダグザ、愛したソレル
リンド
・自らの生い立ちを隠し、ダグザ大帝に仕官した。
いつしか黒騎士と呼ばれるようになったが…
ある時、私の母(※ジュラ)に対する想いに気づいたダグザ大帝の怒りを買い、1,000年もの間牢に繋がれることになった。
今はかりそめの自由を得た身だ。
タリムーン
・ついでに教えてくれよ。あんたの欲しい物を。俺様は他人の欲しがる物に興味があるんだ。
リンド
・ただ、愛を。この戦いに勝利し、私は母の愛を独占したい。
タリムーン
・ほう。その気持ちも、まぁわからんではないよ。
リンド
・? この話をすると大概の者は奇異な目で私を見るものだが…
タリムーン
・俺様も似たようなもんだからさ。
冒険しながら顔も知らない母親(※マリア)を求めたが、いろいろあって…
母親をこの手に掛けちまうことになった。悲劇だろ?
ダグザ神族に冷遇された彼は、その敵であるバロールに信仰を見出したようです。
悪名高きリンドですが、彼は彼で気の毒だったとも言えます。
そして、リンドの不幸を思えば、アウロラの境遇はまだ恵まれていたようにも感じます。
それはリンドを疎んだダグザと、アウロラを愛したソレルの差でもありました。

ここまで見てきた通り、ユ・ファスの強過ぎる、おそらくは無自覚な色香は、本人の善良な性格とは裏腹に、ダグザ神族を大いに搔き乱しました。
ソレルをはじめ、ダグザ、アウロラ、クレール、ジュラ、リンドなど、神々の運命に影響したのです。
故に、危険性を理解していたソティスは、「仮面を外すな」と彼女に命じたのでしょう。
その仮面を外させたのがソレルであり、その業を因果にして乱れた世をただすのが、ソレルの生まれ変わりたるイシュマールというわけです。
注
この記事は個人の考察であり、任天堂及びインテリジェントシステムズ社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
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