暑さ対策としては、エアコンをつけっ放しにするのが最良です。
しかし、何らかの理由でエアコンを使えない(使いたくない)場合は、前回ご紹介した「冷感タオルを濡らして肩や頭にかけた上、扇風機の風を当てて水分を蒸発させる」のが有効です。
水分が気化する時に、多くの熱エネルギーを奪うので(気化熱)、体感温度がかなり下がるからです。ここまでが前回のお話でした。
「濡れタオル&扇風機」だけでも効果的ですが、今回はこれと併用できる合わせ技をご紹介します。
太い血管を冷やす
太い血管が通っている部位を冷やすと、冷えた血液が全身を循環するので、効率よく熱を下げることができます。
太い血管が通っており、かつ冷やしやすいのは、具体的には次の部位です。
・首
・脇の下
・太腿の付け根
これらを冷やすことで、多量の血液が低温になり、それが心臓へ戻っていきます。
そして、心臓から全身に送り出されて、体温を少し下げてくれるわけです。

たとえば、保冷剤を当てて冷やす場合、保冷剤の冷気は体だけでなく、部屋の空気にも次々と奪われていきます。
冷却可能な制限時間がありますので、その持ち時間の間に効率的に血液を冷やすには、細い血管より太い血管を狙った方がよいのです。
爽快リングを首に巻く
ここ数年、素晴らしいアイテムが普及しました。
「爽快リング」という、首に巻く保冷剤のような商品です。ネッククーラーリング、またはクールリングなどとも呼ばれます。
安くて効果的な上、消費型ではなく、冷蔵庫で冷やせば繰り返し使用できます。
これは主に、PCM(Phase Change Material/相変化材料)を利用して、製造されています。
PCMは約28℃前後で、固体から液体に変化しますが、この時に大量の熱を吸収します。
液体が気体になる時に、大量の熱を奪うように(気化熱)、固体が液体になる時も、大量の熱を奪うからです。
これを「融解熱」と呼びます。

融解が熱を奪う理由は、気化と同じで、分子の結合(分子間力)を切るためです。
「固体→液体→気体」と気体に近づくほど、分子の結合が切られて弱くなりますが、状態変化する時に多くのエネルギーを必要とします。
融解熱&気化熱
首の体温は35~36℃ですが、爽快リングの温度は28℃前後です。
PCMが融解熱を吸収するので、少しずつ溶けて融解しながら、冷感を与え続けることになります。
氷のように冷たいのではなく、約28℃を長く維持しつつ、体から熱を奪うというわけです。
28℃というのは、冷たく感じる一方で、冷やし過ぎないという絶妙な温度です。氷を直接当てた時のような冷た過ぎる感覚、あるいは痛みのようなものがありません。
十分に冷感があり、冷却時間が長く、凍傷の心配がないなど、多くのメリットがあります。
唯一のデメリットは、装着していると結露して、水滴が付着することです。これがポタポタと垂れると、人によっては不快に感じます。
解決法は実に簡単でして、爽快リングにタオルを巻けばよいのです。
冷感は若干減ってしまいますが、これによって水滴が垂れない上に、タオルが吸収した水滴が、蒸発する時に気化熱を奪ってくれます。
つまり、爽快リングが融解熱を吸収した上、結露した水滴をタオルが保持して、更に気化熱を吸収してくれるので、トータルの冷却効果はむしろ高くなります。
濡れタオル&扇風機と、爽快リングを併用すれば、体感温度を随分と下げることができるでしょう。

保冷剤を脇の下に挟む
家庭用の保冷剤もまた、安くて効果的なアイテムですが、爽快リングに比べると、やや使用上の癖があります。
保冷剤は0℃付近から、周囲の熱を奪って徐々に温度が上がっていきます。
最初は「冷たい!」という強い冷感がありますが、10分も経つ頃には体温に近づいてきて、ぬるく感じてしまいます。
爽快リングは、冷感が適度な一方で、固体がすべて融解するまで約28℃を長く維持します。
それに対して、保冷剤は最初に強く冷却するけれど、時間とともに温度が上がって、比較的短時間でぬるくなります。
それでも氷よりはマイルドで、氷より冷却時間が長く、結露しにくい(水滴が付着しにくい)ので、繰り返し使える「氷的なもの」としては便利です。
最大の欠点は、基本的には手に持って、体に当てていなければならないという点です。
この点を和らげてくれるのが、「保冷剤を脇の下に挟む」という方法です。
前述の通り、脇の下には、首まわりと同じく太い血管が通っています。
脇の下に保冷剤を挟むことで、片手を取られることなく、太い血管を効率的に冷却できます。

しかも、濡れタオルや爽快リングと併用できます。
濡れタオルを肩や頭にかけて、扇風機の風を当てる。爽快リングを首に巻く。保冷剤を脇の下に挟む。
誰かに見られたら滑稽かもしれませんが、冷却効果は非常に高いと言えるでしょう。風呂上がり限定なら、悪くないかもしれません。
麻の衣類を着る
日本人は昔から、夏の暑さを和らげる優れた繊維を利用してきました。それは「麻」です。
よく麻の服は涼しいと言われますが、その理由は熱を通しやすいからではなく、汗を素早く吸い、素早く乾かし、気化熱を効率よく利用できるからです。
人体の冷却システムを効果的に利用できる衣類なのです。そのことを昔の人は、経験的に理解していました。
麻は汗をよく吸います。しかし、重要なのはよく吸うこと以上に、吸った汗を広げる能力が高いことです。
たとえば、汗1滴を吸ったら、綿(コットン)の場合はその場にとどまりやすいですが、麻の場合は広がって延びます。
そうすると、空気に触れる表面積が増えて、蒸発しやすくなる(気化で熱を奪いやすくなる)というわけです。

乾きやすい、ベタつきにくい、熱を奪いやすいということで、湿度の高い日本の夏では重宝されてきたのでしょう。
また、麻の生地は比較的隙間ができやすく、空気が通りやすいという特徴があります。
このため、体の表面付近の温かい空気が、それより低い外気と交換されやすく、加えて汗が蒸発しやすくなります。
汗を掻いた時、綿がベタっとしやすいのに対して、麻は密着しにくいので、着心地にもだいぶ影響します。
麻・綿混紡と機能性ポリエステル
麻の欠点は、価格がやや高いことです。
しかし、面白いことに、必ずしも麻100%がよいわけではありません。
たとえば、麻と綿の良いとこ取りを狙った「麻・綿混紡」は、麻100%より安価な上に、人によっては麻100%より快適に感じたりします。
また、化学繊維に敏感でなければ、「機能性ポリエステル」によって、麻に似た特徴を安価に享受することができます。

麻・綿混紡は、価格が下がる、シワになりにくい、肌触りが柔らかい、刺激が減るなどのメリットがあります。
麻は人によっては少し硬く感じるかもしれませんが、麻・綿混紡であれば、着心地の癖はだいぶ減ります。
天然素材を好む方には、価格と性能のバランスがよい選択肢と言えます。

また、化学繊維に抵抗がない方であれば、値段にわりに高性能なポリエステルが向いています。
特にスポーツ用に開発された機能性ポリエステルは、汗をよく吸い上げる上、水分を繊維の隙間に拡げるので、蒸発しやすいという麻に似た強みがあります。
軽くて速乾、気化熱を利用しやすい、丸めると小さくなる、洗濯がラクなど、よく体を動かす人には有り難い選択肢です。
対策パッケージ
これまで見てきた通り、次のような対策パッケージを利用すれば、エアコンなしでもかなりの程度、暑さを和らげることができます。
・濡れタオルを肩や頭にかけて、扇風機の風を当てる。
・爽快リングを首まわりに付ける。
・保冷剤を脇の下に挟む。
・麻(または速乾性)の衣類を着る。
上記に加えて、次のような点に意識すれば、なお効果的と言えるでしょう。
・なるべく薄手の衣類を選ぶ。
・密着系ではなく、ゆったりしたサイズの衣類を選ぶ。
・なるべく白系の服を選ぶ(熱を集めない)。
・水分と塩分をしっかり補給する(汗を出しやすくする)。
・外出する時は、帽子や日傘を利用する。
最近の夏は、時に危険なレベルまで暑くなります。
辛く感じるほど暑い時は、なるべくエアコンをつけっ放しにするようにしてください。
コストより健康の方が大事ですし、病院にかかることになれば、節約した分は一発で吹っ飛びます。

折衷案による節約も可
なお、ここまでエアコンを使わない条件で、代替手段をご紹介してきましたが、エアコンと併用してももちろん大丈夫です。
前提として、エアコンと扇風機は、使用時間が同じだとした場合、電気代に10~20倍の差があります。
扇風機がモーターを回すだけなのに対して、エアコンはコンプレッサーによる圧力操作を行うため、仕事量が遥かに多いからです。
ここで「エアコン OR 扇風機」という二択ではなく、併用するとなかなかの折衷案になります。
つまり、エアコンの設定温度を高めにした上、扇風機・濡れタオル・爽快リング・保冷剤などを使って、体感温度を下げるのです。
これだと、エアコンだけを使用する場合に比べて、電気代を節約することができます。
エアコンの設定温度を高くした場合の、削減できる電気代のイメージは次の通りです。使用環境にもよりますので、目安と考えてください。
1℃上げた場合 7~13%
2℃上げた場合 14~25%
3℃上げた場合 20~35%
30%オフくらいは、十分に狙えるのではないかと思います。
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