「朝、起きれない」の治し方 (4)

朝起きれない (4) 「朝、起きれない」の治し方

鉄分とビタミンB群(特にビタミンB6)を摂る

 食べ物がメンタルを左右する、と言ったら驚くでしょうか。

 実際のところ、精神状態の半分以上は、食べ物によってコントロールすることができます。私がこれを明確に意識したのは遅く、40歳を過ぎてからでした。

 「あなたは、あなたの食べたもので出来ている」という言葉を聞いたことがあるでしょう。したがって、食べ物がフィジカルを左右することは、誰もが納得していると思います。

 しかし、フィジカルに限らず、メンタルをも左右すると言われると、にわかには信じ難いかもしれません。

 古来、「健全な精神は、健全な肉体に宿る」と言われます。

 これに先ほどの「あなたは、あなたの食べたもので出来ている」を組み合わせると、「食べ物→身体→精神」という流れになりますから、当然と言えば当然なのかもしれません。

 その理由は、脳内で分泌される神経伝達物質にあります。

 この神経伝達物質が、人間の精神状態に大きく影響するのですが、その原料になるのが、食べ物に含まれる栄養素なので、結果として「食べ物がメンタルを左右する」ことになるわけです。

 以下、詳しく見ていきましょう。

鉄分不足は不安になりやすい

 鉄分やビタミンB群(特にビタミンB6)が不足すると、不安を感じやすくなったり、悪夢を見やすくなります。

 これは気のせいではなく、脳内の神経伝達物質の働きと深く関係しています。

 鉄分は血液だけでなく、脳にとっても重要であり、感情を安定させたり、安心感を維持するセロトニンを合成するために必要となります。

 鉄分が不足すると、脳内でセロトニンが十分に作られません。

 セロトニンは、心を落ち着かせるブレーキ役の物質ですから、これが不足すると、些細なことで不安になる、理由のない焦りを感じる、夜に考えが堂々めぐりして止まらない、などの状態に陥りやすくなります。

 また、鉄分が不足して、血液の質が低下することで、酸素の運搬能力が下がります。

 脳が軽い酸欠状態になると、危険を察知する扁桃体が過敏になり、不安スイッチが入りやすくなります。

 血液は赤血球であり、赤血球はヘモグロビンです。ヘモが鉄分、グロビンがタンパク質ですから、鉄分が欠乏することで血液が劣化し、様々な弊害を生じます。

 その一つとして、特に夜に不安になりやすく、入眠を妨げてしまうことがあるのです。

ビタミンB6不足は悪夢を見やすい

 ビタミンB6は、神経伝達物質を作るための補助因子ですが、これが関わるものとして重要なのが、脳の興奮を抑えるGABA(ギャバ)です。

 GABAはセロトニンと同じく、脳のブレーキ役として働きます。これが不足すると、脳は眠っている間も興奮しやすくなります。

 その結果、眠りが浅くなり、レム睡眠が不安定になって、夢の内容が悪くなったりします。

 悪夢はレム睡眠中に、脳が過剰に活動している状態で起こりやすいと考えられています。B6不足だとブレーキ役が弱くなるため、恐怖や不安を伴う夢が出やすくなります。

 鉄不足とビタミンB6不足が重なり、同時に不足すると、影響はさらに強くなります。

鉄分不足
→セロトニンが低下する。
→不安が増す。

ビタミンB6不足
→GABAが低下する。
→脳が興奮して鎮まりにくい。

 結果として、夜にリラックスできない、寝ても脳が休まらない、不安感の強い夢を見やすい、という状態になります。

 不安や悪夢が増えると、睡眠の質が下がります。そうすると、夜に十分なメラトニン分泌が起こらず、朝の覚醒も弱くなります。

 単なる気持ちの問題ではなく、背景に栄養不足が隠れていることは珍しくありません。食生活が乱れている人は、どうしても睡眠が乱れがちになります。

 もし不安感や悪夢、朝の起き辛さが続く場合は、「体と心の材料が足りていないかもしれない」という視点も、ぜひ持ってみてください。

腸内環境を整えてから、鉄分とタンパク質を摂る

 鉄分を吸収するためには、その前提としてタンパク質が必要になります。鉄分は単体で働くのではなく、タンパク質と結合して作用するからです。

 そのまた前提として、鉄分とタンパク質を上手く吸収するためには、腸内環境が整っている必要があります。

 この「腸内環境→タンパク質→鉄分」という順番を無視して、いきなり鉄剤だけを飲んだりすると、逆に気分や体調が悪くなる可能性がありますので、注意してください。

 本書は睡眠の本ですので、栄養について深入りすることは避けますが、興味のある方は、鉄とタンパク質について解説した本を読んでみるとよいでしょう。

 特にうつ症状に悩んでいる方は、一読の価値があると思います。

 なぜなら、栄養素の不足が引き起こすうつ症状が、少なくないからです。うつ症状の人は、総じてセロトニンが欠乏していると言われます。

 十分に量を食べているつもりでも、そこに含まれる栄養素が足りていないことは、意外とよくあります。特にジャンク食品を多食する人は、そうなりやすいと言えます。

 量が足りていても、質が足りないことから「質的栄養不足」と表現されています。食生活を改めることで、うつ症状を改善できることは、実は多くあるのです。

胸の上に手を置かない

 最後に一つ補足しておきます。

 心臓の上に手を置くと、悪夢を見やすくなります。胸の上に手を置いて眠る癖がある人は、それをもう少し下げて、おなかの上に置くようにしてください。

 これは主に私の経験則であり、エビデンスがあるわけではないのですが、個人的には確信しています。

 手の重さなど、たかが知れていると思うのですが、それでも睡眠中の脳は、心臓に少しでも圧がかかることを嫌うようです。

 また、睡眠環境が暑過ぎる、または寒過ぎる場合も、悪夢を見やすくなるので注意してください。

 不安や悪夢は、自分が影響を及ぼせない、どうしようもないものと思うかもしれませんが、そのメカニズムを知れば、打てる手はあります。

 ここで説明したことに注意すれば、完璧とはいかないまでも、不安や悪夢を減らすことはできるでしょう。

ACTION
鉄分とビタミンB群(特にビタミンB6)が不足しないように、食生活を整える。
胸の上に手を置いて眠らない。
暑過ぎる、または寒過ぎる睡眠環境を避ける。

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