ゴミの特徴
滝沢秀一氏の話があまりに面白かったので、前回に書き切れなかった情報をまとめてみました。
汚いゴミはテストの点数が低い
ゴミ袋を開封調査して、食品ロスの量を調べるNPO法人があります。
同法人の職員によると、汚いゴミから出てくるテスト用紙の点数は低く、名前も書いたまま捨てている人が多いそうです。
その逆はなく、綺麗なゴミから良い点数のテスト用紙は出て来ないと言います。
古紙回収に含めているのか、シュレッダーにかけているのか、その理由は分かりませんが、とにかくそのまま丸めて捨ててはいないようです。
性格的にまじめか、いい加減かが、勉強の成績にも影響するのでしょうか。
秋はお米が捨てられる
秋はお米が多く捨てられると言います。これは新米を買って、古米を捨てる人がいるからです。
「随分もったいないことをするな」とか、「そんなに大量に備蓄買いするのか」と驚いてしまいます。
ゴミ清掃員の間では有名らしいので、お米の値段が倍近くになる前は、そういう人が少なくなかったのでしょう。

これは賞味期限の長い穀物ならではの現象です。
私は豆が好きで常備しているのですが、豆でも同じことをする人がいるのでしょうか。
流行の末路
流行り廃り(はやりすたり)は、タイムラグを伴ってゴミに表れるので、テレビなどで騒がれた商品が、その後しばらくして大量にゴミになると言います。
たとえば、ひと頃ロデオボーイという健康器具が流行りました。
室内にいながら、乗馬のようなエクササイズを楽しめる健康器具で、揺れ動く鞍(サドルの部分)に踏ん張って乗り続けることで、手軽にトレーニングすることができます。
ダイエット目的で利用する人も多かったでしょう。
これがある時期から、粗大ゴミでよく目にするようになったと言います。
面白いのが、人間は諦める時期もだいたい同じらしく、しばらく経つと、粗大ゴミとして頻繁に捨てられたそうです。

このように、ゴミは社会現象を映す鏡の一つであり、たとえばコロナ禍の時期は、レモンサワーの空き缶が大量に出たと言います。これは家飲みが増えたからでしょう。
ゴミから見る景気
流行にはデマが意外に多く、本当は流行していないのに、さも大人気であるかのように、メディアで取り扱うことがあります。
しかし、ゴミとして出てくるのは、実際に消費されたものだけ。作られた偽の流行は、ゴミに反映されません。
そう考えると、ゴミには景気を表す一面があります。
「景気ウォッチャー調査」という、内閣府が行う調査があります。
これはタクシー運転手やコンビニの店長など、仕事を通じて地域の景気動向を観察できる立場にある人々から、景況感を調べるものです。
こうした職業と同じく、ゴミ清掃員は流行・社会現象・世相などを、少し遅れてゴミとして観察するので、一般人より景気を体感しやすいのかもしれません。

その一滴にご用心
コーヒー、エナジードリンク、ビールなどの空き缶は、ついそのまま捨てがちですが、これはよくないようです。
たとえ1本1滴でも、100本集まれば100滴であり、混ざると強烈な悪臭になります。
夏は腐臭がひどく、秋は糖の臭いを花と間違えた蜂が追いかけてくると言います。容器はぜひ洗って欲しいとのことでした。
自分が残した一滴が原因で、誰かが蜂に追いかけられるとは、さすがに想像しませんでした。

ゴミは凶器になる
ゴミは凶器にもなり得る、怖い一面があります。
たとえば、不燃ゴミの袋を持ち上げた瞬間、包丁の刃やアイスピックが飛び出してくることもあるそうです。これが手に刺さったら大ケガです。
捨てた人は、捨てた時点で終わりであり、その先のことや、回収してくれる人の安全をあまり考えません。
刃物や突起物であれば、ガムテープを貼ったり、ゴミ袋に「危険」と貼り紙するなどして、回収してくれるゴミ清掃員の方に配慮しましょう。
人生の節目はゴミに表れる
ゴミには、誰かの人生が垣間見えます。
子供が生まれれば、紙おむつが増えます。受験期には、参考書や問題集が増えます。引越しの時期は、家具や家電が大量に捨てられます。
高齢になれば、介護用品が増えます。そして、人が亡くなれば、遺品整理が始まります。
ゴミは単なる不要品ではありません。
そこには、誕生・成長・就職・結婚・別れなど、誰かの人生の足跡が刻まれています。
ゴミ清掃員という仕事は、単に地域の衛生を守るだけでなく、誰かの人生の断片に毎日触れているのです。
ゴミは現代の貝塚
皆様は「貝塚」をご存知でしょう。これは古代の人々が食べた貝の殻を捨てた場所で、要は現代で言うところのゴミ捨て場です。
考古学者は、貝塚を発掘して古代人の暮らしを研究します。
何を食べていたのか。どんな道具を使っていたのか。どのような文化を持っていたのか。
それらを捨てられた物から読み解こうとします。

そう考えると、ゴミ清掃員の仕事は、「現代の貝塚」を調べているとも言えて、少し不思議な気分になります。
私は歴史が好きなので、こういう流れになると、たとえば江戸時代のゴミなどにも、俄然興味が湧いてしまいます。
割れ窓理論
「割れ窓理論」という言葉をご存知でしょうか。
これは「小さな乱れを放置すると、大きな乱れを招く」とする理論です。1982年に犯罪学者のジェイムズ・ウィルソンらが提唱しました。
たとえば、ある建物の窓が1枚割れているとしましょう。
しかし、誰もこれを修理しない状態が続くと、周囲の人は「ここは管理されていない場所だ」と考えるようになります。
その結果、落書きが増える、ポイ捨てが増える、不法侵入が増える、犯罪者が集まりやすくなるなど、悪いことの連鎖が起きやすくなります。
割れた窓が無秩序を示すサインになり、まともな住民が去ったり、犯罪者が増えたりすることから、割れ窓理論という名が付きました。
割れ窓理論との関係で有名なのが、元ニューヨーク市長のルディ・ジュリアーニです。
ニューヨークの治安改善
彼が市長を務めた1990年代のニューヨークは、非常に治安が悪い状態でした。
地下鉄は落書きだらけ、無賃乗車が横行しており、秩序が及ばない場として、薬物取引も多発していました。
年間の殺人件数が2,000件を超える年もありました。
そこで、ジュリアーニ市長(当時)は警察本部長と相談して、「重大犯罪だけを追うのではなく、小さな無秩序をなくそう」と考えました。
当時の常識では、殺人や強盗を取り締まるべきで、無賃乗車など些細な問題だと思われていました。
しかし、警察本部は無賃乗車者を、徹底的に取り締まったのです。
すると驚くことに、逮捕された無賃乗車者の中に、指名手配犯・銃器所持者・薬物犯罪者が多数含まれていました。
軽犯罪の背後に、重犯罪者が潜んでいたのです。

ニューヨークの治安が改善したのは、これだけが理由ではなく、諸々の複合要因がありますが、このエピソードは割れ窓理論を一躍有名にしました。
ゴミの出し方が治安に繋がる
滝沢氏の話を聞いていると、この割れ窓理論が、ゴミ集積所によく当てはまる気がしてなりません。
ゴミ集積所が荒れて、汚ならしい状態を放置すると、人々は無意識に「管理されていない」「汚してもいいんだ」と考えるようになります。
こういう状態が続くと、ゴミ集積所が散乱していても、やがて誰も気に留めなくなり、ゴミ出しのルールを守らないばかりか、ゴミを路上に捨てる行為も横行していきます。
実際、たとえば繁華街の一部や、治安が悪いと言われている地域は、こうした状況に近くなっています。
自分が住む街を、そのような状態にしないために、私たちは各々が注意して、ゴミ集積所を綺麗に維持する必要があります。
そこをいい加減にした状態が続くと、徐々に街の衛生や治安が悪化していき、最終的に困るのは自分たちだからです。
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