エアコンにありがちな誤解

エアコンの誤解 その他

 誰もがお世話になっているエアコンですが、その身近さのわりには、あまり知られていない基本知識があります。

 今回は生活に役立つ、エアコンの豆知識をご紹介します。

風量「弱」の誤解

 風量「弱」と風量「強」は、どちらが電気代がかかると思いますか?

 多くの方は「強」だと思うでしょう。私も長らく誤解していました。しかし、答えは「弱」のほうです。

 強と弱にはそれぞれ、次のような特徴があります。

・風量「弱」 電気代が割高な一方、稼働音は小さい。
・風量「強」 電気代が割安な一方、稼働音は大きい。

 つまり、風量「弱」は、電気代を抑えたい人ではなく、音が気になる人に適した選択なのです。

主役はコンプレッサー

 なぜそうなのかと言うと、鍵は「コンプレッサー/圧縮機」にあります。

 エアコンは、冷媒に高圧をかけて熱を集めたり、低圧にして熱を放出したりして、熱を移すことで空調しています。

 コンプレッサーはこの流れの内、高圧をかける役割を担っています。エアコンの核とも言える部材ですが、これが最も電気を食うのです。

 風量を増やしたり、減らしたりするのは、室内機のファンの役割ですが、こちらは大して電気を食いません。

 コンプレッサーによる消費は、最大1,000~1,500Wまで増えることがある一方、ファンの方はわずか10~40Wと大差があります。

 風量「弱」は、ファンを大人しくして、コンプレッサーを長く稼働するモードです。

 「弱」ゆえに、部屋が冷える(または暖まる)までに時間がかかり、コンプレッサーが長く働くことになります。結果として、電気代は割高になります。

 その代わり、ファンの音が小さく、静かに運転することができます。

 一方、風量「強」は、ファンを活躍させて、コンプレッサーを短く稼働するモードです。

 「強」ゆえに、部屋が冷える(または暖まる)までが早く、コンプレッサーが働くのが短くて済みます。結果として、電気代は割安になります。

 その代わり、ファンの音が大きく、人や環境によっては耳障りに感じるかもしれません。

最適なのは「自動」モード

 強・弱のどちらを選ぶのがよいかと言うと、どちらでもありません。

 最適なのは「自動」モードです。

 自動モードであれば、最初は風量を強くして早く空調を行い、目標温度になったら、勝手に風量を弱くしてくれます。自分でいちいち切り替える必要がありません。

 実際に多くのメーカー、たとえばダイキン工業・パナソニック・三菱電機などは、自動モードで運転することを推奨しています。

 特に要望がある場合、たとえば「静かに運転させたい」などの場合に限り、手動で設定するとよいでしょう。

換気機能はない

 エアコンに喚気の機能はありません。

 いかにも換気してくれそうなイメージがありますが、これもよくある誤解です。

 エアコンは、部屋の空気を集めて「熱交換」をして、部屋に戻しているだけです。外気と入れ換えているわけではありません。

 なお、熱交換については、「エアコンの熱交換とは?」をご参照ください。

 換気機能はないため、エアコンを稼働している時でも、換気はする必要があります。

CO2濃度に注意

 エアコンを終日稼働して、閉め切った部屋の中で過ごし続けると、CO2濃度が非常に高くなります。

 CO2濃度が高い環境だと、頭の回転が鈍ったり、睡眠の質が下がったりしますので、意識して換気した方がよいでしょう。

 エアコンを稼働したまま、窓と室内ドアを3cmほど開けて、二点換気するだけで十分に効果があります。

 これなら室内温度をほぼ維持したまま、CO2濃度を下げることができます。

 空気がしっかり通り抜けるには、二点を開けておく必要があります。

 一点換気だと空気が抜けにくいので、窓やドアを大きく開けなければ、あまり効果を期待できません。しかし、これだと室内温度がやや影響を受けます。

 もし部屋の中に換気扇があるなら、それを回すのが最良です。

温度を極端に下げても、早く冷えることはない

 たとえば、帰宅した時の室温が30℃だったとしましょう。

 早く冷やしたいと思って、18℃に設定したところで、所要時間が短くなることはありません。18℃だろうと、25℃だろうと同じことです。

 リモコンの設定温度は、飽くまで「目標にする室温」ですから、その目標に至るまでの運転に差はないのです。

 エアコンは、稼働した直後はほぼ最大能力で冷やします。

 そして、目標温度に到達した時、出力を落として室温を維持することになります。リモコンの設定温度は、何度をターゲットにするかという話でしかありません。

 もちろんですが、暖房の場合も同じことが言えます。

つけっ放しは条件次第

 「24時間つけっ放しの方が安い」という話をよく耳にします。これは半分正しく、半分誤りです。

 たとえば、30分程度の外出なら、つけっ放しの方が安くなることが多いでしょう。

 電気を食いやすいのは、エアコンを起動する時だからです。

 特に室温と設定温度の差が大きく、最大能力で運転している間は消費が増えます。

 室温が目標まで達した後、それを維持するための運転は、あまり電気を必要としません。

 したがって、「ちょっとした買い物」であれば、稼働したままの方が経済的ということになります。

 一方、6時間以上外出するなら、消した方が安くなることが多いでしょう。

 つまり、無条件に「つけっ放しが得」ではありません。

フィルター汚れは、意外と影響あり

 エアコンのフィルターが詰まると、空気が流れにくくなります。

 そうすると熱交換の効率が落ちて、主役であるコンプレッサーの負荷が重くなります。

 前述の通り、エアコンで最も電気を食うのはコンプレッサーです。ここに負荷をかけると、電気代が増えてしまいます。

 また、「冷えにくい・臭いやすい・霜付きしやすい」などの原因にもなりますから、思う以上に影響があると言えます。

 定期的に、最低でもひと夏に1回、ひと冬に1回ぐらいは、それぞれ掃除した方がよいでしょう。

 エアコンの蓋を開ければ、簡単にフィルタを外すことができます。それを外へ持ち出して、柔らかいブラシなどで軽く払ってください。

室外機の周りに物を置かないで

 室外機は、冷房においては熱を捨てる役割、暖房においては熱を集める役割があります。

 室外機の周りに、たとえば植木鉢・段ボールなどを置いたり、雑草が生い茂っていたりすると、能力が低下してしまいます。

 そうすると前述のフィルター汚れと同じく、主役のコンプレッサーに負荷をかけることになるため、やはり電気代が増えてしまいます。

 少なくとも前方30~50cm程度は、物を置かずに空けておくようにしてください。

 なお、室外機は基本的には掃除しなくて大丈夫です。雨水による自然洗浄でも、大きな問題ありません。

 ただ、落ち葉・綿ぼこりなど、吸い込み口を塞ぎかねないものは、取り除いた方がよいでしょう。

ドライの誤解

 ドライという運転モードもまた、誤解を生みやすい表現です。

 エアコンのカビ対策に関心がある方は、おそらく多いことでしょう。

 特に冷房運転の時は、どうしても結露が発生しますから、それを放置し続けるとカビが発生しやすくなります。

 そんな時、カビ対策と思ってドライ運転をすると、逆効果になります。

 なぜなら、ドライ運転とは「除湿運転」だからです。

 部屋をドライに近づける(除湿する)ものであって、エアコン内部をドライにする(乾燥させる)ものではありません。

 除湿運転は、言わばわざと結露を作るモードです。それによって、部屋の湿度を落とそうと試みるのです。エアコン内部は乾燥どころか、まったく逆の状態になります。

正しくは送風モード

 エアコン内部を乾燥させて、カビの発生源を抑えたければ、「送風モード」を使用してください。

 こちらであれば、風によって内部の水分を飛ばしてくれます。

 ただ、最近の家庭用エアコンは、送風モードがない機種が増えています。

 なぜなら、多くの機種で「内部クリーン」「内部乾燥」などの機能が搭載されたからです。

 こうした機能を備えている場合、冷房運転を終了したら、勝手に内部を乾燥させてくれます。最近のエアコンはさすがに優秀です。

 送風モードも、内部乾燥機能もない場合は、どうしたらよいでしょうか。

 これは面倒ですが、一時的に暖房運転するしかありません。

 お使いのエアコンのメーカーと型番から、どの機能があるかを調べてみてください。

6畳用と8畳用は大差ない

 エアコンには、6畳用・8畳用・10畳用・12畳用などの区分で販売されていますが、隣り合うモデルは多くの部品を共通化しています。

 たとえば、6畳用と8畳用は、同じシャーシ(筐体/きょうたい、箱のこと)を使うのが通例であり、おのずと似たような性能になりがちです。

 冷房能力は14%(暖房能力は12%)ほど、8畳用の方が優れていますが、逆に言えばその程度です。

 6畳用か、8畳用かで悩んでいる方は、その価格差に注目してみてください。

 もし数千円の差だったら、8畳用の方が合理的であることが多いでしょう。

 一方、もし数万円の差があれば、価格差に見合うだけの性能差はないかもしれません。

 これは使用環境にもよるので、断定はできないのですが、似たような性能になりやすい点は理解しておいた方がよいと思います。

他の区分はどうか

 6畳用と8畳用が小型シャーシを共有するのと同じように、10畳用と12畳用は中型シャーシを、14畳用と18畳用は大型シャーシを共有することが多いです。

 このため、こうした組み合わせはそれぞれ、類似の性能になりやすい特徴があります。

 ただ、「小型→中型→大型」になるに連れて、冷房能力の差は「14%→29%→40%」と開いていきます。

 したがって、小型シャーシを共有する6畳用と8畳用が、最も類似しやすい組み合わせだと言えるでしょう。

 個人ではそれほど縁がないかもしれませんが、14畳用と18畳用の場合は、シャーシや部品を共有していても、約40%もの性能差があります。

需要があるから、区分がある

 性能が類似してしまうのに、なぜメーカーは細かく区分しているのでしょうか?

 それは需要があるからです。

 身も蓋もない話ですが、営業マンは顧客が求めているなら、たとえそれが最良でなくても売ります。

 これは当然のことですから、非難の対象にはなりません。もしアドバイスしてくれる販売員がいたら、それは相当親切な方です。

 8畳の部屋に住んでいる人は、やはり「8畳用」を求めます。

 10畳用だと過剰スペックだけど、6畳用だと少し不安に感じる。部屋が8畳なのだから、8畳用が欲しい。そう考えるのは当然の心理です。

 しかし、6畳用と8畳用には、実は大した性能差がないと知れば、考えの前提が変わり得るでしょう。

業務用エアコンの罠

 業務用エアコンに憧れている人が、一部におられるかもしれません。

 オフィスや店舗でよく見かける、天井に埋め込んで設置する四角いエアコンです。

 確かにお洒落に見えて、なにやら特別感がありますが、私はお勧めしません。理由は単純に、やたらと高く付くからです。

 設置の時はもちろんですが、修繕でも家庭用の数倍はかかります。

 エアコンに限らず、電化製品というのは必ず劣化します。どれだけ大事に使用しても、壊れる時はあっさり壊れます。

 エアコンの場合は、10年以上を経過したら、いつ壊れてもおかしくないと思った方がよいでしょう。

 日本のメーカーは総じて品質が高いですが、電化製品にはどうしても当たり外れがあり、外れを引いてしまった時は、耐用年数の半分で壊れたりします。

 業務用エアコンの修繕または交換コストは、個人がおそれおののくには十分な額です。

 数十万円が簡単に飛んでいきますから、ちょっとした特別感は、何か他のもので満たした方がよいと思います。

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