建設・土木業界
建設・土木業界には、現場で素早く意思疎通をするための隠語が多くあります。
隠語といっても、秘密の言葉というより、短く伝えるための職人言葉、または専門用語という意味合いが強いです。
用語は多岐にわたるため、一般人にとって面白そうなものや、意外そうなものを、独断と偏見で選びました。
親方・職長
現場責任者や班のリーダーのこと。他の業界に比べると、長の呼び方がやや珍しい。
縄張り
工事に着手する前に、設計図に基づいて、建物の正確な位置を、ロープを張って可視化する作業のこと。
建設予定地に、ロープが張ってある状態をよく見かけるが、あれが縄張りである。
たとえば、「ここは〇〇組の縄張り(勢力圏)だ」など、私たちが一般に使う「縄張り」という単語は、ここから転じている。
やり方(遣り方)
木杭と横板を使って、建物の位置や高さの基準を、工事中も失われないように設置する作業のこと。
これによって、敷地と建物の位置関係、柱・壁の中心線、水平の基準、高さの基準などが決まり、工事中における指標となる。
前述の縄張りが仮の位置だしだとすれば、この遣り方は正式な基準づくりに当たる。
たとえば、「〇〇のやり方を知りたい」など、私たちが一般に使う「やり方」という単語は、ここから転じている。

ネコ(猫車)
手押しの一輪車のこと。二輪の商品もある。
資材・土石などを効率よく運ぶために、建設現場や農作業などでよく使用される。
ネコの由来は、狭い足場(キャットウォーク)でも通れるから、または運搬時にゴロゴロと音がするからなど諸説ある。
ex. そこのガラをネコで運んでくれ。

ウマ
四本脚の簡易的な作業台のこと。
木材の加工や材料の仮置き、高所作業時の足場などに使用される。
形状が馬に似ていることや、人が乗って使うことに由来する。ベンチのようなイメージ。
モグラ
穴を掘るスコップ類のこと。
カラス
ウォーターポンプフライヤーのこと。配管工事では欠かせない工具の一つ。
横から見た形状が、カラスのくちばしに似ていることに由来する。

KY
危険予知活動のこと。
作業や業務に潜む危険要因を、事前に予測・発見して、事故や労働災害を未然に防ぐための活動。
安全のために、作業開始前にチームで行う。空気が読めるかどうかは関係ない。
ケツカッチン
時間が非常に迫っている状態のこと。終了時刻や締切りを「ケツ」と呼ぶ業界は多い。
ハツる
コンクリートを壊すこと。
ex. 駐車場のこの部分をハツって、バリカー(車止めポール)を埋めて欲しい。
打つ
コンクリートを充填すること。「打設」ともいう。
ex. 生コンを打つ。
当たる
寸法が合うこと。
逃げる
寸法が合わないこと。意図的に逃がす場合と、技量不足で逃げてしまう場合がある。
ex. やべっ、角が逃げちまった…。
逃げ/遊び
余裕寸法のこと。なんらかの目的で、わざと余裕を持たせる。
車両のハンドル操作で「遊びの部分」と言ったりするが、あれと同じ語感である。
ツライチ(面一)
二つの部材や仕上げ面が接する際に、段差や凹凸がなく、完全に平ら(同一平面)な状態に揃っていること。
ex. ここの間をツライチで仕上げてくれ。
殺す
丸めたり、抑えたり、消したりすること。
物騒な表現だが、建築・木工・金属加工などの世界ではよく使われる。
たとえば、角を〇すと言えば、面を取って丸めること。光沢を〇すと言えば、ツヤを抑えることを意味する。
ハメ殺し窓
開閉できないガラスをハメ込んだ窓のこと。
開けて換気することはできないが、景観を楽しんだり、採光したりすることはできる。
暴れる
制御できずに動いてしまうこと。
たとえば、水分を含んだ木材は、乾燥すると反ったり、曲がったりするが、これを「木が暴れる」と表現する。
なんらかの反応や事故によって、コントロールが外れてしまった時にも使用される。
たとえば、鉄筋が暴れる・配管が暴れる・ワイヤーが暴れるなど。
馬鹿棒
現場における簡易的な物差し。
ベテランから初心者まで、誰でも(バカでも)同じ寸法で正確に作業ができることに由来する。
巧みに作られた馬鹿棒は、その名に反して非常に有用であり、現場では「デキる大工ほど馬鹿棒を作る」とも言われる。

馬鹿穴
大き過ぎる穴、失敗して広がった穴などのこと。
たとえば、ネジ穴が潰れて、ネジが効かなくなることを「馬鹿になる」と表現する。
ナメる
ネジ溝が潰れてしまうこと。
ドライバーが引っ掛かる部分がなくなり、ネジを外すことができなくなる。
DIYを好む素人だけでなく、職人にとっても恐ろしい事態。穴が潰れる馬鹿穴より、溝が潰れるネジなめの方が数段怖い。
ネジ溝をナメた時の「やっちまった感」は半端ない。ドライバーは、ネジと垂直にッ!!

養生
テープやシートなどを張って、保護すること。
施工前に行う養生と、施工後に行う養生がある。
たとえば、塗装をする場合、塗装したい部分以外に塗料が付かないよう、シートなどを貼って事前に保護する。
一方、コンクリートや接着剤など、硬化までに一定の時間がかかる施工をした場合、誰かが触ったり、不純物が混じったりしないように、シートなどを貼って事後に保護する。
今日も生きて帰ろう
事故なく一日を終えようという意味。挨拶がわりに使われる。
危険な建設現場では、本当に命に関わる事故が起こり得る。コミュニケーションを兼ねているが、半分冗談・半分本気である。
手を食われる
機械に巻き込まれること。
ex. そこ気を付けろよ。ヘタしたら手を食われるぞ。
機械は腹一杯にならない
機械は人間を巻き込んでも止まらないという意味。非常に危険なので、戒めとして怖い表現になっている。
生コンは生き物
生コンクリートは待ってくれないという意味。時間と共にどんどん硬化していくことから。
生コンを積んだミキサー車は、ドラム(ミキシングドラム)の部分が常にゆっくり回転しているが、あれは生コンを攪拌し続けて、硬化しないようにするためである。
ドラムの中には羽根が付いており、正転させると攪拌になり、逆転させると排出になる。
工事の準備が整うまでは、正転で攪拌して硬化を防ぎ、いざコンクリートを打つ時は逆転して排出させる。

ふかす
高さや厚みを出すこと。
噛ます/噛ませる
部品と部品の間に、スペーサーなどの調整材を挟むこと。
スペーサー
スペース(隙間)を確保するための小さな器具のこと。
建設業界の場合は、鉄筋コンクリートのかぶり厚を取るために使われることが多い。
この時に使用するスペーサーは、中央に穴が開いていることから、「ドーナツ」と呼ばれる。
飲み込む
部材の中に収めること。
意図的に飲み込ませて、見た目スッキリに仕上げる場合もあれば、うっかり飲み込まれて器具を失う場合もある。
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