隠語であそぼう 昭和編

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昭和編

 隠語シリーズ、今回は昭和編です。「火の鳥かよ」と突っ込まれそうですが、そう突っ込めるところが昭和生まれなんです。

 一部は今やすっかり定着していますが、当時の隠語表現ということで、生温かい目で見てください。

窓際族

 自発的な退職を期待される一族。

 日本は解雇規制が厳しく、米国のような大胆なレイオフができない。

 そのため、問題を起こす社員や仕事のできない社員は、「クビにはできないが、しかし仕事を与えない」という状況に置かれた。

 プライドさえ捨ててしまえば、ラクに給料を稼げるため、その快適さを皮肉って窓際と呼ばれた。実際に、窓際に配置された訳ではない。

新人類

 高度成長期に活躍した歴戦のサラリーマンたちが、最近の新入社員を揶揄した言葉。

 いつの時代もある現象で、ベースにある語感は「ゆとり世代」とも似る。

 おっさんのぼやきと言えばそれまでだが、実際に自分が中年になると、その心境を理解できたりする。

 特に、貧しい子供時代を過ごした当時のおっさん達にとって、生まれながらに豊かな時代に育った若手は、あたかも別人種に見えたようだ。

社畜

 会社に飼い慣らされた社員のこと。「会社の家畜」の略。

 昭和の隠語というより、昭和的な企業文化に対する反動として生まれた。自分のことを指して、自虐的に言う場合もある。

 昭和の企業戦士は、会社に忠誠を誓って、私生活を犠牲にする者が少なくなかった。

 同じことを暗に強要された時、「それって家畜ですよね」と冷静に突っ込んだ若手の感覚は、おそらく正しい。

サービス残業

 無給で行う残業のこと。

 サービスとは元来、顧客への奉仕であるはずだが、会社に無償奉仕させる文化を皮肉っている。業界や会社によっては、現在も普通に行われている。

 職人気質と前向きに捉えた時期もあった。

栄転

 昇進して配置転換されること。

 名目上は昇進とはいえ、実質は左遷だった場合もあるが、それも含めて栄転と呼ばれた。敗退を「転進」と呼ぶ感覚に近い。

飲みニケーション

 酒の席を通じたコミュニケーションで、人間関係を形成すること。特に、飲みたいだけの酒好きが(さも重要なことであるかのように)使う。

 実際は、別に一緒に飲まなくても、仕事を円滑に進めることは十分できる。

 昭和の異常さは、飲みニケーションが半ば仕事として、実質強要された点にある。無論、残業代など出ない。「飲めない奴は社会人失格」とまで言われた。

 この反動がアルコール・ハラスメントの概念につながり、現在は「若手を飲みに誘い辛い」という状況に逆転した。

モーレツ社員

 私生活を犠牲にして、猛烈に働く社員のこと。

 家に帰らない、休日も仕事をする、会社が最優先という企業戦士を指しており、むしろ誉め言葉として使われた。

 冷静に考えると、ワークライフバランスが崩壊しているだけだが、経済成長が当然だった時代は、屈強な漢(おとこ)として一目置かれた。

 実際、日本経済を支えた無名のエースたちである。家族の評判はよくない。

24時間たたかえますか

 ある栄養ドリンクのCMで使用された宣伝句。

 長時間労働も根性で乗り切れ、働けることは美徳であるという裏のメッセージが、当時の企業戦士たちに支持された。

ここからが本番

 終電の時刻を過ぎた時や、徹夜が3日目に入った時などに使われる。謎の大物感。

課長 島耕作

 弘兼憲史氏による、サラリーマンを題材にしたビジネス漫画。漫画雑誌「モーニング(講談社)」で連載された。

 当時は一世を風靡して人気を博し、映画化やテレビドラマ化もされた。

 接待ゴルフ・社内政治・派閥争い・愛社精神・深夜残業・出張文化など、昭和の企業文化が頻出する。

 今の若者には、現実離れしていてイメージできないらしく、「これって日本の話ですか?」と言われたりする。

コピー取り

 文書コピー・お茶くみ・灰皿交換・新聞整理など、昭和の新人は雑務が多く、とりわけコピー取りは、すべての者が経験するメジャーな雑務だった。

 先輩たちは「多くの雑務を与えることで、新人の耐性や根性を見極める」と、適当な言い訳をしていた。

 職場で喫煙できるのが当然だった環境も、今にして思えば信じ難い。

亭主元気で留守がいい

 亭主は元気で病気なく、しっかり働いて給料を稼ぎ、かつ家にいない方がよいという意味。当時の専業主婦たちの本音。

 これに加えて、認知症にならず、最期がぽっくりで、遺産が自宅と現金だけなら理想的と言える。

 女性バージョンとして、「女房と畳は新しい方がいい」がある。

男は黙って〇〇

 男なら、つべこべ言わずに黙ってやれという圧力。

 後輩にとっては単なる説明不足、あるいは理不尽だが、先輩は「背中で語る」と思って自己陶酔している。

 昭和の時代は、無口・我慢・不器用・忍耐などが男の美徳とされた。

 確かに気難しくはあるが、古き良き昭和の男という面もある。「言語能力が低いだけ」とは言わないで欲しい。

俺を男にしてくれ!

 誰かに何かを頼む時の昭和的な決めゼリフ。

 字面だけを見ると意味不明だが、「どうかあなたの力で、私を一人前の立派な男にしてください」という言外のメッセージがある。

 一部の昭和女子は、意外にこれが好物だったりする。

自分は不器用ですから

 国民的俳優である高倉健氏が言った名ゼリフ。

 元ネタは、映画「鉄道員(ぽっぽや)」、映画「幸せの黄色いハンカチ」、日本生命のテレビCMなど諸説ある。

 方々で言っていたのだとすれば、わりと器用である。

 彼の誠実で寡黙な人柄と、昭和的な価値観がマッチして、当時の視聴者の支持を得た。

 奥さんや彼女に詰められた時の逃げ技として、今でも稀に使う人がいるとか、いないとか。

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