神と王
ELDEN RINGは、ソウル本家による傑作ですが、クリアまでプレイしても、多くの謎が残ったりします。
そうした謎を調べたり、考えたりする、二次的な楽しみまで与えてくれるのが、フロムソフトウェア社が強く支持される理由の一つでしょう。
そして、考察に十分値する世界観が、緻密に練り上げられているのですから、調べるほどに驚かされます。
私がクリア時までよく理解していなかった、基本的な概念があります。
それは「神と王」です。
ELDEN RINGは、狭間の地の王となって、神を選ぶゲームなのです。そう言えば、確かに「王となれ」というキャッチコピーがありました。

神とは何か?
王はなんとなく分かりますが、それでは「神」とは何でしょうか?
神は「律」という世界の法則を構想して、これを適用する存在です。
ここで言う世界の法則には、私たちの世界における天然ルール(自然律)と、人工ルール(法律)の双方を含みます。
自然律まで影響が及ぶので、たとえば生命(あるいは死)のあり様まで規定できてしまいます。不死というルールも作れてしまうのです。
こうした世界の法則、あるいは統治理念・統治システムなどを規定できる存在が、狭間の地における神です。
神は一人だけであり、作中ではマリカが神になっています。
そして、神になる資格を持つ者、つまり律を構想する能力がある、次代の神の候補者を「神人/しんじん」と呼びます。
作中では、ラニ・ミケラ・マレニアの3名が神人とされています。
ラニ
・私は、かつて神人だった。
デミゴッドの中で、ミケラとマレニア、そして私だけが。
それぞれの二本指に見出され、女王マリカを継ぐ、次代の神の候補となったのだ。

神マリカと王ゴッドフレイ
それでは改めて、「王」の役目は何でしょうか?
これは抽象的だった神に比べると、随分とシンプルでして、主には武力をもって狭間の地を統べることです。
支配エリアを拡大して、反対勢力を切り従えて、自らが信じる神の傘下に収めるのです。
そして神の王配、つまり王たる配偶者として、神がつくる秩序を支えます。
神マリカと王ゴッドフレイの関係が最も分かりやすいでしょう。
マリカは神として「黄金律」という律を作り、世界の法則として狭間の地に適用しました。
正確には、エルデンリングが黄金律であり、マリカはエルデの獣の器であることが後に分かるのですが、ここはややこしいので別の機会に触れることにします。
一方、ゴッドフレイは軍を率いて敵を討伐し、黄金樹勢力の支配エリアを拡げていきました。
ゴッドフレイの最大の功績は、巨人戦争に勝利したことです。彼は巨人たちの山嶺に遠征して、火の神を信じる巨人族をほぼ殲滅しました。
巨人族は、黄金樹を焼く「滅びの火」を持つ勢力であり、黄金樹勢力にとっては脅威の存在でした。
この時、マリカも勇ましく鼓舞しています。
マリカ
・戦士たちよ。我が王、ゴッドフレイよ。導きに従い、よくここまで戦ってくれた。
あの頂きに、巨人たちを打ち滅ぼし、火を封じよう。そして、はじめようじゃないか。輝ける生命の時代を。
エルデンリングを掲げ、我ら黄金樹の時代を!
その後、ゴッドフレイはストームヴィル城で、嵐の王と一騎打ちをして、これを倒しています。
エルデ王の冠
・最初のエルデの王、ゴッドフレイの王冠。黄金樹の始まりは、戦と共にあり、ゴッドフレイは戦場の王であった。
巨人戦争、嵐の王との一騎打ち…。そして、好敵手がいなくなった時、王の瞳は色褪せたという。

また、リムグレイブの南端、啜り泣きの半島のモーン攻城戦では、復讐の英雄を倒したと剣碑に刻まれています。
剣碑 啜り泣きの半島
・モーン攻城戦 復讐の英雄 唯一人となって戦い ゴッドフレイ王に敗れる
この復讐の英雄が誰を指すかは不明ですが、地理的には征服事業の終盤です。そして、ケイリッドの制圧をもって、総仕上げとなりました。
剣碑 ケイリッド
・ゴッドフレイ王の戦 最後の地 黄金の軍勢は止まることなく勝ち続け だが祝福は失われ色褪せた
主人公の神は?
主人公に求められるのは、ゴッドフレイと同じように、武力をもって狭間の地の「王」となることです。
そうなると、「神は誰なんだ?」という話になりますが、それを選ぶのがエンディング分岐と、そこに至るまでのNPCイベントです。
正確には神というより、「秩序のあり方」を選ぶことになります。
・現在の神マリカと、その黄金律を選択して、破砕したエルデンリングを修復するか。
・別の神ラニと、その夜の律を選択して、新しい世界にするか。
・律そのものを否定して、世界を焼き尽くす狂い火を選択するか。
基本的にはこの三択ですが、最初の「黄金律を選択して、破砕したエルデンリングを修復する」場合は、さらに細かく分岐することになります。
黄金律を基本にして、そこに修正律を組み込む選択ができるのです。
詳細は別の機会に触れますが、名前だけ挙げておくと、「完全律・死王子の律・忌み呪いの律」です。
これらの修正律は、我々の世界で言えば、法改正に相当すると言えます。
神しか創れない基本律と異なり、一部の褪せ人が修復ルーンを出力・結晶化できる扱いになっています。
こうした特別な褪せ人は、エンディング分岐に関わるという意味では、重要なNPCになります。

神ミケラと王ラダーン
神と王の組み合わせは、マリカとゴッドフレイだけではありません。
DLCは、神人であるミケラが、約束の王ラダーンと共に、黄金律に代わる「慈愛の律」を、世界の理にしようとした物語です。
ただし、慈愛の律はファンの間で用いられる呼称です。公式な用語ではなく、作中には「優しき世界」などの語句が登場するだけです。
神と王の追憶
・幼き日、ミケラはラダーンに王を見た。
脆弱な自分たちにはない、強さを。そして優しさを。
だから、ミケラは純真に願った。私の王に、なってください。
慈愛の律などと言うと、何やら美しい印象がありますが、実際はおぞましいものでした。
特殊能力の魅了を使って、すべての者を心酔させることで、憎しみ合いをなくそうというもので、なぜ上手くいくと思ったのか不思議でなりません。
実質は個人崇拝でしかなく、魅了が解けた瞬間に地獄絵図になるだけです。
実際、ミケラを慕うレダとその同志たちは、魅了が解けた途端に内部粛清を始めました。これと似たようなことが、大規模に発生するのは目に見えています。
ミケラは神マリカの子でありながら、妹マレニアの腐敗を癒せない黄金律に見切りをつけ、自ら次代の神となることを決意します。
ラダゴンの光輪
・幼きミケラは原理主義を捨てた。それが、マレニアの宿痾に無力だったから。
その時、王として選んだのが、昔から憧れた将軍であり、最高の武人と名高いラダーンです。
こう書くと何やら美しい印象がありますが、実際はおぞましいものでした。
ようやく救済されたラダーンの魂を儀式で呼び戻し、モーグの死体に植え付けるというもので、なぜこれが「優しき世界」なのか不思議でなりません。

ミケラの綺麗な建前と、実際にやったことの落差は、共産主義国の独裁者を思わせます。
もっとも彼自身は真剣だったらしく、肉体や精神を各地に捨ててまで理想を求め、そして当然のごとく失敗しました。
慈愛(公平な愛)のために、愛(個人的な愛)まで捨てるという珍プレーを見せています。
彼が捨てた半身のトリーナは、「ミケラを殺して彼を止めて欲しい」と、主人公に願うほどでした。ミケラの美しい妄想は、根本的に間違えていたのです。
つづく。
注
この記事は個人の考察であり、フロムソフトウェア社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
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