マレニアの長征
破砕戦争の前半、ミケラとマレニアの兄妹は、聖樹で沈黙を保っていましたが、後半になってマレニアが登場します。
しかし、その後の物語を見る限り、マレニアはエルデの王を目指したのではなく、ミケラの「約束の王」として、ラダーンを迎えに行った可能性があります。
禁域の奥にある聖樹に始まり、巨人たちの山嶺を越えて、アルター高原・湖のリエーニエ・リムグレイブ、そしてケイリッドと、彼女は驚くほどの長征をしています。
もう一つ別のゲームが作れそうな大冒険が、主人公の前にあったわけです。
しかも、それは第一部に過ぎず、第二部として貴腐騎士フィンレイの逃避行があるのですから、スピンオフ作品でも欲しいところです。

その翼を阻むものなし
剣碑 リエーニエ
・マレニア南進の碑 ミケラの刃 貴腐の騎士 その翼を阻むものなし
アルター高原までは味方の支配域ですから、マレニアの本格的な侵攻はリエーニエからです。剣碑によれば、彼女の南進は破竹の勢いだったようです。
そして、次に当たったのがストームヴィル城でした。
接ぎ木のゴドリックは、マレニアを女と思って侮り、しかし惨敗してひれ伏し、足の指を舐めて許しを請うたとあります。
剣碑 リムグレイブ
・黄金のゴドリック 屈辱の戦 ミケラの刃に散々と敗れ ひれ伏し 許しを請う
ケネス・ハイト
・そもそもゴリドックなど、君主の名に値せぬ余所者よ。
王都から、女どもに紛れて敗走し、ラダーンに怯えきって城に引き篭もり、マレニアを侮り、敗れ、その足指を舐めて服従を誓う。
まったくもって惰弱な、恥ずべき男よ。
いかに名家とて、黄金の一族ゴッドフレイの血は、いかにも薄いと見える。思えば憐れな者よ。
なんだか、ゴドリックが気の毒に思えてきます。
ストームヴィル城で初めてお会いした時、私は十分ビビりました。当時は、こんなに愛されキャラだとは思いませんでした。

伝説の相討ち
リムグレイブを突っ切ったマレニア軍は、目的地のケイリッドへ至ります。
ここでエオニアの戦いが起こり、当代きっての武人ラダーンと壮絶な相討ちになりました。
剣碑 ケイリッド
・エオニアの戦い ラダーン マレニアと相討ち 朱い腐敗の花が咲き誇る
破砕戦争のハイライトは、次の3つがあります。
・王都ローデイル防衛戦
・火山館攻略戦
・エオニアの戦い
しかし、私たちに最も強いインパクトを与えるのは、このエオニアの戦いでしょう。
朱い腐敗に侵されたケイリッドは、地形や景色が変わるほどの影響を受けました。
各地にある炎の壁は、ラダーンの赤獅子軍が、腐敗を抑えるために設置したものです。
元々のケイリッドは、緑が多くある美しい土地でした。
ありし日の姿は、ケイリッドの中で腐敗に侵されなかった地域、つまり「グレイオールの竜塚」を訪れると見ることができます。

天晴れ、貴腐騎士フィンレイ
マレニア軍は、狭間の地を端から端まで長征したわけですが、今度は同じ距離を、より悪い条件で踏破することになりました。
マレニアが相討ちで動けなくなったので、貴腐騎士フィンレイが彼女を抱えて、守りながら聖樹まで撤退したのです。
貴腐騎士フィンレイ
・「伝説の遺灰」のひとつ。貴腐の騎士、フィンレイの霊体を召喚する。
フィンレイは、エオニアの戦いの生き残りであり、眠れるマレニアを聖樹に持ち帰った英雄である。
彼女はたった一人、あらゆる敵を退けながら、遥かな道を歩んだのだ。
これほど厳しい殿(しんがり)はなかったでしょう。
野心あふれるゴドリックが、裏切って襲わなかったのが不思議ですが、往路の惨敗がよほどトラウマだったのでしょうか。
あるいは、フィンレイに敵わないと思ったのかもしれません。
長征の理由
さて、ここで改めてですが、マレニアはなぜ遥々ケイリッドまで赴いたのでしょうか?
マレニアが、エルデの王たらんとする野心を、見せたことは一度もありません。モーゴットのような、黄金樹を守るという気概もないでしょう。
彼女は神人たる資格と、腐敗の律に目もくれず、最後まで「ミケラの刃」を名乗りました。
マレニアは一貫して、双子の兄ミケラに寄り添うことを望んでいます。ミケラしか見ていないのです。
一方、ミケラも妹マレニアのために、黄金律を捨ててまで、彼女の腐敗を治そうとしています。
次代の王を争った破砕戦争において、最も印象深いデミゴッドの一人であるマレニアは、実は王を目指していませんでした。
若獅子の兜
・ミケラの刃、マレニアは、エオニアに腐敗の花を咲かせるその時、ラダーンの耳元で囁いたという。
ミケラが待っている。約束の王を。
どうやら、答えはここにあります。
マレニアはラダーンを、ミケラの「約束の王」として迎えるために、ケイリッドを訪れたのだと思われます。
オープニングをよく見ると、確かにぼそぼそと喋っています。
ミケラが待っている。約束の王を。
これを伝えに行って、相討ちして帰って来るのですから、デミゴッドは話し合いが苦手なようです。
周りの貴腐騎士たちも、こういうことはサポートしないのでしょうか。言葉の代わりに、光輪を飛ばしてしまうのかもしれません。

星砕きのラダーン
数あるデミゴッドの中でも、ラダーンの存在感は、私たちにとって格別と言ってよいでしょう。
最高の武人と名高い彼は、しかし破砕戦争では振るいませんでした。少なくとも主要な戦いにおいて、目立った功績はありません。
彼の武名を高めたのは、剣碑によれば破砕戦争の前、サリアにおける「星砕きの戦い」でした。
剣碑 ケイリッド
・星砕きの戦い ラダーン サリアの護りとなり 唯一人星に対し それを砕く
これは魔術街サリアで重力魔法を修めたラダーンが、それによって隕石の落下を食い止めた事件でした。
星砕き
・若きラダーンが極めたという重力の技。師よ、感謝する。今こそ我れ、星に挑まん。
恵まれた体躯と圧倒的な武力に加えて、愛馬のために重力魔法を学ぶ人格や、それによって星すら止める魔力などが合わさり、ラダーンは高い名声を得たようです。

ラニを縛った星砕き
星砕きは当時の問題を解決する、英雄的な行為だったのかもしれませんが、一方でラニの運命を停滞させる原因になりました。
星の粉砕によって、星の動きが止まったことが、後に影響を及ぼしたのです。
以下の発言によれば、「カーリア王家の運命は、星によって動く」とされています。
したがって、結果的には星砕きが、ラダーンの武名を高めた一方、カーリア王家の嫡流たるラニを縛ることになりました。
魔術師セレン
・カーリア王家の運命は、星によって動く。お前の仕える、ラニの運命も同じことだ。
だが、かつて将軍ラダーンが流れる星に立ち向かい、打ち砕いた時、星の動きは封じられた。
…あの男は、星の封印なのさ。
だから、将軍ラダーンが死する時、星もまた動き出す。きっとラニの運命もな。
ブライヴ
・聞いたのだろう? 星砕きのラダーンが、ラニの運命を留めていると。
そしてラダーンが倒れる時、ラニの運命も、また動き出すと。
軍師イジー
・カーリア王家の運命は、星によって動きます。
カーリア王家正統の王女たるラニ様の、運命もまた同じはずです。
そして、将軍ラダーンは星砕きの英雄。
かつて流れる星に立ち向かい、打ち砕いたとき、星の動きは封じられた…。
であれば、将軍ラダーンが死するとき、星はまた動き出します。きっとラニ様の運命も。
そうすれば、あるいは現れるかもしれません。ノクローンに至る道が。

戦祭りでラダーンが名誉の死を遂げた後、彼が重力魔法で止めていた星が動きだし、リムグレイブに落下して大穴を開けました。
そこから地下都市ノクローンに至る道が拓け、ラニの運命が回転していきます。
半狼のブライヴが戦祭りに参加したのは、強者を求めてではなく、こちらが目的だったようです。
破砕戦争の戦績は振るわず、星砕きは妹ラニの足を引っ張るなど、ラダーンは最高の武人なのに、今ひとつ勝ち切れません。
DLCではラスボスとして、最盛期の雄姿を見せてくれましたが、これもモーグの死体を依り代にして、かつミケラに魅了されるというケチが付きました。
それでもラダーンを推す人は多いのですから、不思議な魅力を持つデミゴッドだと言えます。
注
この記事は個人の考察であり、フロムソフトウェア社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
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