エルデンリング考察 死衾の乙女フィア (1)

死衾の乙女フィア (1) ブログ

死に生きる者

 死衾の乙女フィアは、独特の雰囲気を持つNPCです。

 円卓で唐突に主人公を抱いてくれたり、「死を狩る者・D」を狩ってしまったりと、何度かプレイヤーを驚かせます。

 ゴッドウィンは、設定上は極めて重要な存在でありながら、ゲーム中では一切活躍しません。

 しかし、死王子ゴッドウィンから発生した「死を生きる者」をめぐり、命を賭けた戦いをしたNPCがいます。

 それが死衾の乙女フィアと、死を狩るD兄弟(ダリアン&デヴィン)でした。

死衾の乙女フィア

 フィアの目的は何だったのでしょうか?

 それは死に生きる者、つまりアンデッドたちに、狭間の地における市民権を与えることです。

 黄金律において、死んだ者の生命力は黄金樹へ還り、大樹の根から吸収されるようになっています。

 しかし、黒き刃の陰謀の夜に、死の刻印のある短剣で殺されたゴッドウィンは、魂だけが死ぬという不完全な死に方をしました。

 このため、ゴッドウィンの生命力は黄金樹の根から吸収されず、彼に刻まれた死の力が「死の根」として拡大し、狭間の地に広がっていくことになります。

 その死の根から発生したのが、死に生きる者たちです。

 死に生きる者は、黄金律の世界では異端であり、認められない存在でした。迫害されるマイノリティです。

 死に生きる者たちを、この世界の住民として認めること。異端として排除せず、正当の中に含めて認めること。それが死衾の乙女フィアの願いでした。

 彼女は死に生きる者の母になろうとしたのです。

死を狩る者・D

 これに対して、死を狩る者・Dは、死に生きる者の存在を認めません。

 彼は黄金律の忠実な僕であり、黄金律の理から外れて、黄金律の秩序を乱すアンデッドを憎んでいます。

 死に生きる者を片っ端から狩り、黄金律の世界を守ることに情熱を注いでいます。

 フィアが守りたい存在は、Dが強く憎む対象でした。

 フィアが「死に生きる者も救済されるべきだ」と考えた一方、Dは「死に生きる者は、黄金律の秩序を乱す異端であり、滅ぼさねばならない」と考えました。

 両者は思想的に相容れません。対立する運命にあったと言えます。

死を狩る者・D
・俺は、黄金律に仕えている。
 この壊れきった世界を修復するために、偉大なるエルデンリングだけを、導きとしているのだ。
 …そして死に生きる者たちは、黄金律の理を外れた存在。
 奴らが存在するだけで、導きは穢れ、その正しさは陰る。
 …だからこそ、まず根絶せねばならぬのだ。一匹残らずな…。

 D兄弟は「二つの体に、一つの魂が宿る」という、奇妙な特徴を持って生まれました。

 兄ダリアンと弟デヴィンは、体は別々に存在しますが、一方が活動している間は、他方が眠っているという状態で、魂は一つしかありません。

 マリカとラダゴンは「一つの体に、二つの魂が宿る」ので、D兄弟はその対比となる存在です。

双児の鎧
・黄金と白銀、絡み合う双児を象った鎧。
 分かたれぬ双児、Dは二人いる。二つの身体、二つの意志、そして一つの魂。
 共に起きることはなく、言葉を交わすこともない。

分かたれぬ呪い

 D兄弟はその奇妙な特徴ゆえに、呪われた子として周囲から差別されました。

 そんなD兄弟が、黄金律の忠実な僕になったのは、黄金律が彼らを分け隔てなく受け容れたからです。

分かたれぬ双児の剣
・分かたれぬ双児は、黄金律に仕えた。それだけが、彼らを呪いと呼ばなかったから。

 D兄弟は黄金律の秩序を守るために、生死のルールを乱すアンデッドを排除しようとします。

 彼らが死に生きる者を狩るのは、それを認めない黄金律に忠義を捧げているからです。

 フィアとD兄弟の確執は続き、結局は共倒れに終わりました。

 フィアは兄ダミアンを殺害しますが、弟デヴィンに復讐されて絶命します。そのデヴィンも半身を失った影響なのか、復讐を遂げた直後に亡くなりました。

 D兄弟は、自らが呪いによる差別を受けた身でありながら、似たような境遇にある弱者を憎みました。

 黄金律を盲信した彼らには、近親憎悪に似た感情があったのかもしれません。あるいは、異端の立場を抜け出たプライドでしょうか。

 なお、死を狩る者・Dが、獣の司祭グラング(黒き剣のマリケス)と協力関係にあったのは、利害が共通したからです。

 D兄弟は死に生きる者を滅ぼすことを、マリケスは漏れ出た死を回収することを、それぞれ目指していました。

死王子の律

 死衾の乙女フィアは、一体どのようにして、死に生きる者を世界に認めさせようとしたのでしょうか?

 それは破砕したエルデンリングに、「死王子の律」を組み込んで、世界の理の中に死を含めることによってです。

 ここで「死衾」という、彼女の特殊能力が関係します。

 死衾とは、貴い人物の死体と同衾して、そこに生者のエネルギーを注ぎ、死者を生まれ変わらせることです。

 フィアは言うなれば、生者と死者を橋渡しする形で、生まれ直しを促す存在でした。

フィア
・故郷では、私は死衾の乙女と呼ばれていました。
 数多英雄の温もり、生きる力をこの身に宿した後、貴い方の遺体と同衾し、再びの偉大な生を与える。私はそのための存在だったのです。

 彼女は英雄(強者)たちから生命力を預かり、貴き死王子であるゴッドウィンと同衾して、そこに生命力を注ぎ込むことで、「死王子の修復ルーン」を生もうとしました。

 主人公が、破砕したエルデンリングを修復する際に、この死王子の修復ルーンを組み込めば、死に生きる者を認める世界が実現することになります。

 フィアは、そのために活動していました。

死王子の修復ルーン
・黄金律は、運命の死を取り除くことで始まった。ならば新しい律は、死の回帰となるであろう。

帳の恩寵

 フィアはどのようにして、英雄(強者)たちの生命力を預かるのでしょうか?

 それは英雄を抱くことによってです。

 フィアは円卓の一室で、これはと思う強い褪せ人を見ると、抱かせて欲しいと申し出ます。

 それは英雄の生命力の一部を預かるためです。

 フィアに抱かれると、消費アイテム「帳の恩寵」が付与されます。

 これを所持している間は、最大HPが5%減るというデバフがかかりますが、理由は生命力を預けているからです。

 しかし、生命力を「奪われた」わけではありません。その証拠に「帳の恩寵」を消費すれば、生命力が戻ってきます(デバフが解除されます)。

 フィアは生命力を蓄積して、やがて(貴き死者に)移転するための器のような存在と言えます。

 彼女が円卓に居たのは英雄、つまり強い褪せ人と会いやすかったからでしょう。

 加えて、「聖痕」に関する情報を集める意図があったと思われます。聖痕については後述します。

フィア
・英雄様、ほんの一時、私に抱かれてくれませんか。
 貴方の生きる力、意志を、私に分けて欲しいのです。
 そうすることで私は、英雄の温もりを知り、貴方には、帳の恩寵がもたらされるでしょう。
 …卑しいと、お思いですか?
 けれど私の故郷では、これが聖なるやり方なのです。

 なお、フィアを守るボス「フィアの英雄」は、彼女に抱かれた強者たちの霊、またはその生命力の顕現です。

 中には騎士ライオネルのように、フィアの保護者たるを望み、父親を自称した英雄もいました。彼女の思想と人柄は、一部の人を惹き付けたようです。

肉体と魂は一対一ではない

 ELDEN RINGという作品は、肉体と魂は必ずしも一対一ではないことを描く傾向があります。

 D兄弟は脇役ではあるものの、次の通り並べてみると、位置づけとしては貴重と言えるでしょう。

・一つの肉体に、二つの魂が宿るマリカ&ラダゴン。
・二つの肉体に、一つの魂が宿るD兄弟。
・魂が滅び、肉体だけが生きるゴッドウィン。
・肉体が滅び、魂だけが生きるラニ。

 これらすべてに、「黄金のゴッドウィン」が関係している点が、興味深いところです。

 黄金律を象徴したゴッドウィンが、死王子としてその秩序を乱すという、強烈な二律背反をなしています。

 彼は作中でまったく活躍しないのに、物語をかなり振り回しました。死して存在感を示す特異なキャラクターでした。

 つづく。

 注
 この記事は個人の考察であり、フロムソフトウェア社の見解ではありません。
 内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。

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