幸福は「口福」でもある
美味しいものを食べたいけど、病気にはなりたくない。
病気にはなりたくないけど、美味しいものを食べないと日々が味気ない。
多くの方はこういう葛藤を覚えておられるでしょう。
私もそうでしたが、特に体調を崩して療養生活を送った後などは、健康重視の食事に傾きがちです。

最初はそれで問題なく、体調も優れていてよいのですが、途中からどことなく味気なく感じてしまいます。
それは健康食ばかり食べていると、「食の幸福」が少なくなってしまうからです。
幸福とは「口福」でもあります。
レコーディングダイエット
そんな時に出会った概念が「半分は健康のために、半分は幸せのために」でした。
これはオタキングとして有名な岡田斗司夫先生の言葉です。
彼は「レコーディングダイエット」という独自の手法で、大幅な減量に成功して、その内容が2007年に「いつまでもデブと思うなよ(新潮社)」として書籍化されました。
レコーディングダイエットとは、その日に食べたもの・体重・体脂肪などを毎日記録して、食生活を「見える化」する方法です。
自覚していない間食や、食べ過ぎを見える化することで、自分の食生活を客観視して、自己管理に役立てるというものです。

要は「記録するだけ」なのですが、実際にやってみると、これが意外に効果があります。
普段だったら何も考えず、何かをひとくち放り込んでいたものが、記録を見ることで「もうこんなに食べたのか」とか、「さっき食べたばかりだから、もう少し待ってみるかな」という風に、自然と自制が入ったりするのです。
面白いのが、ほんの少し何かをつまみたいと思っても、「記録するのが面倒だから」という理由でやめることがあります。
このあたりの微妙な心理は、理論一辺倒では出てこないものでしょう。
まず記録せよ
岡田先生は言います。「最初から食事を減らしたり、運動をしようと思うな。そんなことは辛くて続かない」と。
そんなことより「まず記録せよ」と。
彼はこの方法で、大幅な減量を成し遂げ、開始時に117kgあった体重は、なんと67kgまで減り、実に50kgも落としてしまったのです。
岡田先生は「ダイエットの最大の敵は無意識である」と喝破しました。
その無意識を見える化することが、無駄なひと口を防ぐのだと。
しかし、彼はその後のリバウンドもまた見事で、現在はすっかり元に戻ってしまいました。
減量をやめた理由は「飽きたから」だそうです。

半分は健康のために、半分は幸せのために
話を戻しますと、岡田先生の著作「レコーディングダイエット」の本旨とはズレますが、私が同書の中で目を引かれたのは「半分は健康のために、半分は幸せのために」という言葉でした。
私は岡田先生が大好きで、よく動画も拝見するのですが、彼の性格を考えるに、おそらく自分が言ったことを覚えていないでしょう。
しかし、私にとってはその後15年以上にわたり、現在に至るまで影響を及ぼす名言になりました。
三食すべてを幸福のために食べていては、いずれ健康を害する。
しかし、三食すべてを健康のために食べていては、人生が味気なくなる。
だから、基本的には健康のために食べて、人生を豊かにするために、一部を幸福のために食べればよい。

今となっては当然すぎる結論なのですが、これが若かった頃の自分には、視界が拓けたように感じたものです。
岡田先生が、ダイエットに苦闘する中で閃いたアイデアなので、実践者の知恵でもあります。
単に頭で考えたものではなく、現実として取り込みやすいのです。
これを意識したお陰で、その後は一度として、食生活を大きく誤らなかったのですから、個人的には非常に有り難いことでした。
自炊は健康を求め、外食は口福を求める
私は大学生の頃に一人暮らしを始めて、自炊の習慣も身に付けていましたので、自宅では「健康・コスパ・手軽さ」を重視しました。
美味しさを追求するのではなく、なるべく健康的で、なるべく安く、なるべく簡単に作れる料理を求めました。この方向性は今も継続しています。
これを徹底すると、スーパーなどで買える食材は、だいぶ限られてきます。
買える食材が少ない分、迷うこともあまりないため、スーパーであれこれ悩む時間が減りました。
もし迷ったとしても「健康的か?・安いか?・簡単か?」という軸が明確なので、「失敗した、買わなければよかった」とは滅多になりません。
コンビニに行く機会は激減しました。行ったとしても、買うのは食料品以外です。

一方、外食をする時は、幸福(口福、美味しさ)を重視します。
さすがに揚げ物やジャンク食品は避けますが、あまり我慢することなく、その時に食べたいものを食べています。
こちらは自炊とは逆に、価格より幸福を優先しますので、少々高くても選ぶようにしています。
その逆に、安い外食はしないようになりました。
「安さは自炊で求める。外食では味を求める」と決めているからです。
結果として、安い外食にありがちな「過剰な糖質・脂質・添加物」を防げるので、これもまた健康につながっています。
和食を軸にする
私は20代でよく体調を崩しましたので、若い頃から健康オタクになって、随分と長くそれを続けています。
お陰さまで同年代に比べれば健康であり、実年齢にしては容姿が若く、今のところ大病の気配すらありません。20代の頃が嘘のように健康体です。
様々な先生の著作を読むうちに、「日本人にとっての健康食は、ニアリーイコールで和食ではないか」ということを知り、自炊の軸足はやがて和食に移っていきました。
このあたりは語ると長くなるので、別の機会に譲りますが、和食をベースにして、適量のタンパク質を加えるのが、日本人にとってはどうやら最適なようです。

現在の私は、和食を6~9割の比率にして、残り1~4割の比率で好きなものを、節度のある範囲で楽しむようにしています。
自炊が多い時期は「9:1」に近づきますし、外食が多い時期は「6:4」に近づきますが、主従の関係だけは守るように注意しています。
健康法は数多くあり、先生によって言うことが矛盾する例も珍しくありません。
ですから、私たち一般人は情報に振り回されがちですが、「和食を過半にする」という点さえ崩さなければ、大きく間違えることはないと考えています。
食生活のタイムマシン
いつも思うのですが、中高年というのは、食生活のタイムマシンです。
その人が食べているものを、何十年と続けたらどうなるのかが、その人の容姿にてきめんに表れているからです。
現代は、特に日本においては、様々な国の料理があふれているので、やや分かり辛くなりましたが、少し前までは国ごとに、食生活がはっきり異なっていました。
その国の食事を食べ続けるとどうなるのか。
その答えは、その国の高齢者を見れば明白でした。

ですから、私は健康について学ぶ前から、「どうやら欧米食は、多食し続けてはいけないらしい」ということは意識していました。
欧米人の高齢者は、肥えて体型が崩れている人が多く、日本の高齢者に比べると、およそ健康的には見えなかったからです。
現在の日本は、世界で最も食が多様化している国の一つですから、日本人の間でも結構な差が生まれています。
実年齢より老けて見える人が食べているものや、実年齢より若く見える人が食べているものに注意を向ければ、食生活が及ぼす威力が良くも悪くも分かるでしょう。
もし「自分もこうなりたい」と思う人がいるなら、その人が食べているもの、食べていないものを見習うのも一つの案です。
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