「昼、眠い」の治し方 (3)

昼眠い (3) 「朝、起きれない」の治し方

体を軽く動かす

 長時間のデスクワークなどが続くと、体の中では次のような状態が起こります。

長く座り続ける。
→筋肉の動きが少ない。
→血流が滞りやすく、脳への酸素供給が低下する。
→眠気、だるさ、集中力低下を感じる。

 特に脚や体幹の筋肉は、血液を心臓に押し戻すポンプの役割をしています。

 前項では、ふくらはぎの重要性について触れましたが、ふくらはぎ以外の筋肉にも、血液の流れを促す働きがあります。

 動かさない時間が長くなるほど、筋肉のポンプ機能は弱まり、脳に十分な酸素が届きにくくなってしまいます。

 脳は酸素不足やCO2濃度に、非常に敏感な臓器ですので、わずかな変化でも生理的に反応します。

 昼間の眠気を防ぐには、とにかく体を動かすこと。

 まずは起床時間+8時間のリズムに注意することや、糖質の多い昼食・間食を避けることが重要ですが、それ以外の時間帯は、なるべく体を動かして、筋肉のポンプ作用を働かせることを意識してみてください。

 激しい運動は必要ありません。たとえば、次のような軽い動きでも十分です。

・軽く体操したり、ストレッチしたりする。
・椅子から立ち上がって、2~3分歩く。
・あえて「貧乏ゆすり」する。

 体を動かすと筋肉が収縮して、血流が促されます。

 そうすると、心臓へ血液が戻りやすくなり、脳への血流と酸素供給が増えます。これによって、自然に覚醒度が上がっていきます。

 眠気を無理に我慢するのではなく、血流を取り戻すという発想が大切です。

 面白いのが「貧乏ゆすり」です。これは名前の通り、日本だとネガティブイメージを持たれがちですが、英語圏ではジグリング(jiggling)、レッグシェイキング(leg shaking)などと呼ばれ、脚のリズム運動として捉えられています。

 同じ姿勢が続いた場合に、脚の筋肉を小刻みに動かして血流を保とうとする、無意識の反応とも言えます。

 これを積極的に利用して、あえて貧乏ゆすりをしてみましょう。座ったままできることが利点ですので、周囲の方に不快感を与えない程度に試してみてください。

 体を動かさないことの害は思う以上に大きく、酷い場合は「エコノミークラス症候群」という深刻な状態になります。

 飛行機のエコノミークラス席で、長時間座る乗客に多く見られたことから、この呼び名がつきましたが、正しくは深部静脈血栓症という疾病です。

 血流が悪い状態を放置してはいけません。

 私を含めてですが、特にデスクワークをする人は、「座り続けることは悪」という意識を、もっと持つ必要があります。

屋外を散歩する

 特にお勧めなのが、屋外の散歩。可能であれば、外に出て歩くようにしてください。

 理由は二つあります。一つ目は、空気中のCO2濃度です。

 室内は人間の呼吸によって、CO2濃度が上がりやすくなります。換気が不十分な環境では、簡単に1000ppmを超えてしまいます。

 「CO2濃度を管理する」でご説明した通り、CO2濃度が高いと、脳が敏感に反応して、覚醒を維持する神経活動が低下しやすくなります(室内の酸素濃度が低下しているのではなく、CO2濃度に脳が反応しています)。

 一方、屋外のCO2濃度は約400ppmですから、脳にとって呼吸条件が改善します。

 理由の二つ目は、太陽の光です。

 日光を浴びることで、脳内で覚醒を支える神経伝達物質が活性化します。わずか数分の散歩でも、頭がすっきりするのはこのためです。

 歩きながら、あるいはその場に立ったままで構いませんので、呼吸にも意識を向けてみてください。深呼吸や腹式呼吸をしてみましょう。

 胸式呼吸は浅く、肺の上部しか使うことができませんので、酸素の取り込み量が少なくなります。

 一方、腹式呼吸は深く、横隔膜が大きく動いて、肺全体に空気が入りますので、酸素の取り込み量が増えます。

 その結果、血液中の酸素が増える、二酸化炭素が効率よく排出される、脳の働きが安定するという効果が得られます。

 歩く。呼吸する。光を浴びる。この三つが揃う屋外散歩は、昼間の眠気対策として非常に理にかなっています。

ACTION
・体を動かして血流を促す。軽い体操、ストレッチ、散歩、貧乏ゆすりなど。
・可能であれば、太陽の光を浴びながら、屋外を散歩する。
・深呼吸する。腹式呼吸を心がける。

水分と塩分を摂る

 睡眠時間はそれなりに確保しているのに眠い。起きてから時間が経つのに、なぜかだるさが抜けない。そのように感じる場合、体の水分状態が適切かを疑ってみてください。

 私たちの体は、約60%が水分でできています。そして脳は、その中でも水分バランスの影響を受けやすい臓器です。

 これまで見てきた通りですが、私たちの脳というのは、わずかな血流条件・呼吸条件の悪化にも敏感に反応して、警戒モードに入ってしまいます。

 体内の水分が不足すると、脳は次のように反応します。

水分が足りない。
→血液量が減って、血圧が不安定になる。
→生命維持を優先するため、活動レベルを下げようとする。

 これが脱水によって、眠気や集中力低下が起こる理由です。脱水は脳にとって強いストレスになります。

 眠気は「この状態で活動し続けると危険です」という、体からのブレーキ信号だと思ってください。

水分脱水と塩分脱水

 脱水というと、水分不足だけをイメージしがちですが、実際には二つのタイプがあります。

 一つ目は水分脱水。水分も塩分も不足している状態であり、一般にイメージするのはこちらの脱水です。

 二つ目は塩分脱水。水分は足りているけれども、塩分が不足している状態であり、「隠れ脱水」になりがちなので注意する必要があります。

 水分脱水とは、汗や尿によって、水分と塩分の両方が失われた状態です。

 この場合は、喉の渇きや尿の減少、だるさなどによって、比較的自覚しやすいと言えます。水やお茶を飲むことで、ある程度は改善します。

 一方、塩分脱水とは、水ばかりを大量に飲んだり、汗を多く掻いた後に水だけ補給することによって生じる状態で、水分・塩分のバランスが崩れた状態(水分過剰・塩分欠乏)です。

 血液中のナトリウム濃度が下がることで、血液が薄くなり、神経伝達が低下して、脳が正常に働きにくくります。

 この時に現れやすいのが、強い眠気を感じる、頭がぼんやりする、集中力が続かないといった症状です。

 塩分脱水は、そもそもその概念を知らない人もいるので、隠れ脱水として盲点になりがちです。よかれと思って水を大量に飲み、逆に塩分脱水を悪化させてしまうこともあります。

 したがって、まずは「塩分脱水」という概念を知り、水分・塩分のバランスを崩さない意識を持つことが大切です。

 二つの脱水を防ぐためには、水分と塩分をセットで摂ることが基本になります。

 こまめな水分補給と、適度な塩分の補給を同時に行うことが理想ですが、特別なドリンクなどを常備する必要はありません。

 食事をしっかり摂ること、味噌汁やスープを飲む機会を増やすことで、塩分脱水は十分に防げます。

夕方以降のカフェインに注意

 眠気対策として、多くの方が頼りがちなのがカフェインです。

 しかし、カフェインの半減期(摂取量が半分になるまでに要する時間)は意外に長く、個人差はありますが約5~8時間とされています。

 しがたって、夕方以降にカフェインを摂ると、夜になっても体内に残り、入眠が遅れる結果、睡眠の質が低下してしまい、翌日さらに眠くなるという悪循環に陥りやすくなります。

 カフェインは、そもそも眠気の根本解決になりませんが、もし利用するとしたら、遅くとも16時までにしておきましょう。

 16時に摂ったカフェインも、24時時点でようやく半減するだけです。できることなら、カフェイン摂取は午前中に限りたいところです。

エナジードリンク、喫煙を避ける

 エナジードリンクを常用する方もいるかもしれませんが、これはまったく推奨できません。

 エナジードリンクは、大量のカフェインと、吸収の速いジャンクな糖質を組み合わせた飲料です。

 一時的に元気が出たように感じるのは、血糖値の急上昇して、中枢神経を刺激するからです。眠気の覚まし方としては、およそ健全ではありません。

 その後は、血糖値が反動で急降下して、強い眠気を感じてしまい、次のエナジードリンクに頼りたくなります。

 その上、多量に含まれるカフェインが、夜の入眠を妨げますので、ほんの一時の覚醒のために、大切な睡眠を犠牲にしているようなものです。

 さらに、栄養はほとんど含まれておらず、カロリーだけは高いため、太りやすい点もデメリットでしょう。

 ささやかの恩恵の割りに、受けるデバフ(マイナス効果)が多過ぎる不自然な液体と言えます。

 同じく喫煙も、眠気覚ましにはおよそ推奨することはできません。

 喫煙すると、一時的に頭が冴えたように感じることがありますが、これはニコチンによって毛細血管が収縮し、交感神経が刺激されるためです。

 しかし、その代償は非常に大きく、慢性的な血流悪化が生じる、動脈硬化のリスクが高まる、心肺機能が低下するなど、眠気以前に健康全体を損なってしまいます。

 タバコこそまさに、百害あって一利なしの典型であり、喫煙によって目を覚まそうとすることは、目先の100円と将来の1万円を交換するような、ひどく分の悪いトレードと言えます。

ACTION
・水分・塩分をしっかり摂る。
・味噌汁やスープを飲む機会を増やす。
・水分ばかりを摂って、水分・塩分のバランスを崩さないように注意する。
・カフェインを摂るのは、遅くとも16時まで。
・眠気を飛ばすために、エナジードリンクを飲んだり、喫煙したりしない。

サラリーマンの場合はどうするか

 サラリーマンの場合、勤務時間が決まっている、横になれる場所がない、周囲の目が気になる、休憩中も完全に自由ではないなど、多くの制約があります。

 こうした事情から、理想的な対策はなかなか取りにくいですが、サラリーマンでも実行しやすい現実的の手段を考えてみましょう。

非常階段の最上階を使う

 一つ目の案は、非常階段の活用です。

 非常階段は、その名の通り非常用の階段であり、エレベーターを利用する人が多いこともあって、多くの人は普段使いをしません。

 ビルの中で複数のフロアを借りている会社の場合、社内を往来するために、非常階段を使う人が時々いますが、基本的には人通りが少ないと言ってよいでしょう。

 お勧めは、非常階段を最上階まで昇ること。

 最上階まで来る人は、通常はいません。管理人などは行く機会があるかもしれませんが、ビルの屋上は閉鎖(施錠)されているのが普通であり、一般の人は行く用事がありません。

 最上階まで昇ること自体が、体を動かすことになりますし、最上階であればほんの数分、横になって血を巡らせても、誰かに見られることはまずないと言ってよいでしょう。

 長居してはいけませんが、眠気や疲れを感じた時に、一時的に避難させていただくことは一つの案です。

 階段を昇って最上階まで行き、2~3分だけ横になって休み、階段を下りてオフィスに戻る。それだけで「体を横にして血を巡らせる」と「体を軽く動かす」を実践できます。

 眠気に耐えて、だらだらと仕事するより、数分のリフレッシュで生産性を上げた方がよいと思います。

外食する

 二つ目の案は、昼食は屋外で摂ることです。

 弁当を持参したり、買ったりする人も多いですが、できれば運動と呼吸条件の改善のために、外食することをお勧めします。

 行き帰りに歩くだけで、血流は確実に改善しますし、屋外へ出ることで、CO2濃度が下がって、脳は警戒モードを解除しやすくなります。

 これだけでも、脳の覚醒度は大きく変わるでしょう。

 ここで注意したいのは、昼食の内容です。

 理想は糖質を控えめにした食事ですが、外食では選択肢が限られます。糖質制限メニューはないことが多いので、現実的な方法を取りましょう。

 具体的には、パン類や麺類を避けてご飯ものを選び、お米を少し残すことです。

 パン類や麺類は吸収が速く、血糖値が急上昇しやすい食品です。ご飯はこれらに比べると、比較的緩やかとは言え、その糖質はやはり眠気を招いてしまいます。

 ご飯を全部は食べず、半分を残すだけで、食事の量も糖質の量も適度に減り、血糖値の急上昇や、消化ストレスによる胃腸の負担を和らげることができます。

 試しに一度は、糖質をほとんど摂らない昼食にしてみてください。

 たとえば、肉や魚、豆などだけを食べて、ご飯・パン類・麺類に手をつけないようにすると、はっきり自覚できるほど眠気が弱まります。

 そのようにして、糖質の影響というものを一度体感として知ると、ご飯を半分残すことも実行しやすくなるでしょう。

 昼食を軽めにした場合、空腹が不安になることもあります。そんな時には、ナッツやチーズが役立ちます。

 これらは主にタンパク質と脂肪で構成されており、糖質が非常に少ない食品です。血糖値を大きく上げない一方、腹持ちがよいという特徴があります。

 少量を持参したり、コンビニで買ったりして、歩きながら少しずつ食べると、眠気を招くことなく、空腹感を紛らわせることができます。

 この方法は、軽い運動・血糖値の安定・眠気の予防を同時に満たせる上、サラリーマンにとって実行しやすいと言えるでしょう。

理想より「続けられる工夫」を

 昼間の眠気対策は、完璧である必要はありません。大切なのは少し動く、少し外に出る、少し食べ方を変えるなど、「少し」を積み重ねることです。

 自由に行動できない環境でも、自分の体を助けてあげる工夫はできます。

 眠気は、血流・酸素・血糖値などが、一時的に崩れた時に生じる、生理的な防御反応ですから、無理することなく、振り回されることなく、メカニズムに適合する対策を心がけましょう。

おわりに

 最後までお読みくださり、誠にありがとうございます。

 本書では、薬剤や特殊な方法ではなく、睡眠環境・光の使い方・血流・呼吸・食事・日中の過ごし方など、生活習慣を中心にして、朝にすっきり起きる方法や、昼の眠気を抑える方法を解説してきました。

 これらは、どれも体の仕組みに沿ったものです。特別な何かを必要とするものではなく、誰でも実行できるものばかりです。

 地味でつまらない方法だと感じた方もおられるでしょう。しかし、健康関連の真実とは、得てしてそのようなものです。

 いきなり完璧を目指すことはありません。全部を同時に変えようとすると、負担が大きくなり、続かなくなってしまいます。

 まずは「そういう仕組みなのか」と、概念を知ることだけで十分です。

 そして、本書で紹介したことの、どれか一つを試してみる。それで効果を実感できれば、自然と別の方法も試してみたくなるでしょう。

 最初は小さな違いかもしれません。しかし、朝に目を開けるのが楽になった、午前中に頭が重く感じない、昼過ぎの眠気が以前より軽いなど、こうした改善を積み重ねていけば、私がそうであったように、早起きすることや、日中に思考がクリアであることが、特別な努力を要しない普通のことに変わっていきます。

 今の私の状態は、若い頃にはおよそ考えられませんでした。

 昔の私は仕組みも何も知らず、必要以上に悩んだり、苦しんだりしていたようです。私と同じような変化が、あなたにもきっと起こります。

 最後になりますが、眠れないこと、起きられないこと、日中に眠くなることは、すべて体が発している大切なメッセージです。

 自分を責める必要はありませんが、無視したり、ごまかしたりしてもいけません。体の仕組みを知り、少しずつ整えていくことで、状態は確実によくなっていくでしょう。本書が、その第一歩となれば幸いです。

 ただし、睡眠時無呼吸症候群や低血糖、重度な睡眠障害など、病的な状態が背景にある場合は、生活習慣の改善だけでは十分な効果が得られません。

 そのような症状が疑われる時は、無理に自己判断することなく、医療機関を受診することも検討してください。

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  1. 555329 より:

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