死の力に冒された探究者
フィアと関わりが深い人物に、魔術師ロジェールがいます。
ボス「フィアの英雄」の一体として登場しますから、ロジェールもフィアに抱かれた英雄(強き褪せ人)の一人なのでしょう。
彼は、積極的に死王子の律を支持するというより、単に真実を知ろうとした研究者・探究者でした。
黒き陰謀の夜を調査する過程で、死王子ゴッドウィンが放つ死の力に触れてしまい、命を落とすことになりました。
ストームヴィル城の地下には、巨大な顔がありますが、これはゴッドウィンの本体ではありません。死王子の肉体から伸びて、成長した死の根です。

ロジェールは、これを調査している最中に、根に刺されて死の呪いを受けました。
単なる怪我では済まず、死の力に冒されて行動不能になってしまい、ほどなく円卓において、眠るように息を引き取ります。
魔術師ロジェール
・ストームヴィルの地下にあった、異形の躯ですか。
…あれは遺物なのですよ。黒き刃の陰謀、そう呼ばれる凶刃の夜の。
古い黄金樹の盛期、まだエルデンリングが砕ける前。
何者かが、黒き剣のマリケスから死のルーンの欠片を盗み、冷たい夜に、黄金のゴッドウィンを殺したのです。
それは、歴史上はじめてのデミゴッドの死であり、エルデンリングが砕け、破砕戦争が起こる、その切欠になったと言われています。
…私は元々、学者志望でしてね、その陰謀をずっと調べているんです。
現状の世界の歪み、それを正そうとするなら、その契機を知る必要があるのではないかとね。
…まぁ、お陰でこのあり様ですけどね。貴方も注意してください。あの躯に触れすぎないように」
名探偵ロジェール
ロジェールは前半で亡くなりますが、主人公を物語の核心へ導く案内役を果たしました。
黒き刃に宿された刻印に、ラニの名が隠されているのを暴いたのは彼です。
そして、主人公に対して、ラニに仕えて情報を集めるようにと進言しました。
ロジェールは、「ラニの滅んだ肉体には、ゴッドウィンの死と対になる、死の呪痕があるはずだ」と、かなり真相に迫る推理をしています。

魔術師ロジェール
・これは、まさか黒き刃の刻印ですか!まさか貴方が、手に入れられるとは…。
以前お話しした、黒き刃の陰謀の夜…。
その実行犯は、永遠の都の末裔たる、暗殺者だと言われています。
姿隠しの衣を纏い、銀の鎧に身を包んだ、女性ばかりの一団であったと。
そして彼女たちの武器、黒き刃には、儀式により死のルーンの力が宿っていたと。
お願いです。それを私に、一時預けて頂けませんか?
時間をかけて、調べてみたいのです。
欠片とは言え、死のルーンの力を宿すためには、それなりの儀式が必要です。
そして儀式の刻印は、その主の痕跡を、どこかに必ず残すもの…。
まして私は、半ば死に侵された身。きっと見えるものがあるはずです。
魔術師ロジェール
・やあ、貴方。お待ちしていました。調べは終わりました。この刻印はお返しします。
…それに、儀式の主、つまりは陰謀の夜の主犯も、見当がつきましたよ。
月の王女ラニ。王配ラダゴンと最初の妻レナラの、子供たちのひとり。将軍ラダーン、法務官ライカードの兄妹たるデミゴッド。
刻印には、彼女の名が隠されていたのです。
貴方には、感謝します。そして、不躾なことを願ってもよいでしょうか。
月の王女ラニが、陰謀の夜の主犯ならば、彼女の身体には、運命の死の呪痕が刻まれているはずです。
それを、手に入れてはもらえないでしょうか?
…それで、すべて分かると思うのです。私がずっと追い求めた答えが。
旧友Dと袂を分かつ
ロジェールは自分で発言している通り、元々は学者志望で真実を知りたかっただけです。
思想的な偏りはなく、感情的にはやや肩入れしているものの、フィアを積極支持しているわけではありません。
死を狩る者・Dとも、同じ道は歩めないけれど、別に敵視はしていないようです。
これに対して、黄金律の僕であるDは、死の力に冒された旧友ロジェールを憐れんでいます。
死を狩る者・D
・かつては、優れた魔剣士だった。
聡明で、飄々としながらも、何事にも動じぬ芯があった。
だが、今はどうだ。穢れた棘に貫かれ、世迷言を繰り返す。見るに耐えぬ半屍だ。
…貴公、覚えておくがよい。
あれが、死に生きる者たちに惑わされた末路。
導きの穢れは、人を蝕み…、壊すのだとな。

ロジェールは、かつてはDと共に旅した間柄でしたが、陰謀の夜の真相を知りたいがために、徐々に死王子の調査に傾倒していきます。
そうして離れていく友の姿が、死に生きる者を嫌うDにとっては、道を踏み外したように見えたのかもしれません。
魔術師ロジェール
・ああ、Dをご存じでしたか。…あいつは、古い友です。
お互いに死を探っていた縁で、一時旅を共にしたことがあるんですよ。
けれど、道は別れました。もう、交わることはありません。
…けれど友とは、往々にそういうものでしょう。
死に生きる者を認めて欲しいフィア。黄金律を乱す存在を滅ぼしたいD。死そのものを封印したいマリケス。彼/彼女らの立場はそれぞれです。
一方、ロジェールは知的欲求に動かされており、死に対する態度は中立でしたが、徐々に肩入れするようになったようです。
思想的には中立ながら、調査活動を続ける中で、情が湧いたのかもしれません。
もちろん、自分が死の領域に入ってしまったこともあるでしょうが。
魔術師ロジェール
・死に生きる者たちをご存じですか?
黄金律の理から外れ、死に生きる者たち。
Dなどに言わせれば、その存在すら許されぬ、穢れた者たち。
…私が、呪痕を求めるのは、彼らを救いたいからなのです。
おかしなことを、と思われるでしょう。
けれど私は、陰謀の夜を調べる中で知ったのです。
彼らは何も侵していない。ただ懸命に生き、それ故に、律の傷に触れてしまっただけなのだと。
魔術師ロジェール
・Dが、私が今、何を求めているかを知ったら、きっと激怒してくれると思いますよ。
…それとも、少しは悲しんでくれるでしょうか。
まぁでも、そんなことにはなりませんよ。私は嘘つきですから。
祝福のごとき導き

魔術師ロジェール
・ラニの居場所は、少し思い当たります。
レアルカリアの学院の北に、ある城館があります。
そこは、ラニの生家たるカーリア王家の故郷なのですが、近年そこに王家の旧臣たちが集いつつある、という噂があるのです。
ラニは破砕戦争において行方をくらまし、以来その姿を見たものはいないとされていますが、もしかしたら故郷たる城館に戻っているのかもしれません。
魔術師ロジェール
・月の王女ラニが、陰謀の夜の主犯ならば、彼女の身体には、運命の死の呪痕が刻まれているはずです。
それを、手に入れてはもらえないでしょうか?
魔術師ロジェール
・…なるほど。ラニは肉体を棄て、共に呪痕も棄てたと、そういうことなのですね。
俄には信じにくいお話ですが、今の彼女の姿が、貴方の言うような少女人形であるのなら…あり得ないことではなさそうです。
…ふむ…率直な提案を許して頂きたいのですが
…貴方がラニの臣下になるのはどうでしょうか?
ああ、もちろん方便として、ですよ。
彼女の棄てた肉体がどこにあるものか、まだ見当がつきません。
ですから、彼女に仕え、身辺を探ることで、それを見出して欲しいのです。
貴方になら、できると思いますよ。
貴方は優秀な戦士だし、それに、どこか人を信じさせるところがありますから。
ロジェールの推理と助言は的確です。
まるで祝福の導きのように、正しく主人公を誘導しています。
主人公は、ロジェールの提案どおりラニの臣下となり、くだんの情報を得ることに成功しました。
しかし、ラニを「上手く欺いた」というわけではありません。以下のやり取りは、ラニの性格が見えて興味深いところです。

ラニ
・ほう、お前が私の役に立つと、そう言うのか。
そうすれば、呪痕の在り処が探れるとでも?
…よかろう。謀を持つ者は、嫌いではない。
それに過去の行い、その傷痕がお前を招いたのなら…その運命に興味もある。
許す。私に仕えるがよい。そして精々、探るがよい。
ラニ
・なるほど、よく調べたものだ。確かに、私は魔女ラニ。
死のルーンの一部を盗み、儀式により、それを神殺しの黒き刃となした。
すべて私がやったことだ。
…だが、お望みの呪痕はここにはない。
私は生来の身体を殺し、棄てていてな。呪痕もそちらに刻まれていよう。
手に入れた死の呪痕を、死に生きる者のために使うか、黄金律原理主義のために使うかは、主人公の選択に委ねられています。
忠義か、利用価値か
小心で狡猾な魔術師セルブスを、ラニが臣下として認めたのも、おそらく清濁より利用価値を見たのでしょう。
それでは、ラニが冷酷な人物なのかと言えば、そうでもありません。
彼女はどうやら忠義を捧げた部下と、互いに利用価値を見た者を、明確に区分しているようです。
そして、後者から始まった主人公は、やがて前者になり、その選択によっては「私の王」にまでなります。

ラニ
・私が二本指を拒んだ時、それでもブライヴは、私の味方でいてくれた。
フフッ、神人たる私の、特別な従者であるというのに。
二本指にしてみれば、とんだ出来損ないだったろうな。
ラニ
・見事な戦いだった。感謝する。手間をかけさせてしまったな。
だが、これでやっと、あやつに至れる。
…お別れだな、お前。ブライヴとイジーに、伝えてくれ。…愛していると。
ラニ
・お前が私の王だったのだな。忠告など無駄なことだったか。
…だが、嬉しいよ。私の王が、お前でよかった。
カーリア王家の女性は、どうやら情が深いようです。
ラニの母レナラも、政略結婚で結ばれた夫ラダゴンを、結果的には深く愛してしまいました。
ラニの叔母(レナラの妹)レラーナもメスメルを慕い、生家を捨ててまで「メスメルの剣」であることを選びました。
注
この記事は個人の考察であり、フロムソフトウェア社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
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