エルデンリング考察 マリカの大逆計画 (2)

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統一戦争の完了

 王配ゴッドフレイが巨人たちの山嶺を制圧して、半身ラダゴンが湖のリエーニエを傘下に収めました。

 敵だらけだった黄金樹勢力は、その支配域を徐々に拡大していきます。

 リエーニエを下した後は、再び王であるゴッドフレイが活躍して、リムグレイブとケイリッドを平定しました。

エルデ王の冠
・最初のエルデの王、ゴッドフレイの王冠。
 黄金樹の始まりは、戦と共にあり、ゴッドフレイは戦場の王であった。
 巨人戦争、嵐の王との一騎打ち…。
 そして、好敵手がいなくなった時、王の瞳は色褪せたという。

リムグレイブの剣碑
・モーン攻城戦 復讐の英雄 唯一人となって戦い ゴッドフレイ王に敗れる

ケイリッドの剣碑
・ゴッドフレイ王の戦 最後の地 黄金の軍勢は止まることなく勝ち続け だが祝福は失われ色褪せた

不可解な剥奪・追放

 この時期に残されたマリカの言霊は、統一戦争の初期に見られた勇ましい鼓舞ではなく、含みのある内容になっています。

マリカ
・我が王よ、王の戦士たちよ。お前たちから、祝福を奪う。
 そして、その瞳が色褪せた時、狭間の地を追放する。
 外に戦を求め、生き、そして死ぬがよい。

・お前たちが死した後、いつか奪ったものを返そう。
 狭間の地に戻り、戦い、赴くままにエルデンリングを掲げるがよい。
 死と共に、強くあれ。王の戦士たちよ、我が王、ゴッドフレイよ。

 この言霊を見て、戸惑った人は多いのではないでしょうか。

 なぜ多大な功績のある夫ゴッドフレイと、その精鋭たちの祝福を奪い、追放するのだろうかと。

 マリカは彼らに対して、外の世界で死ぬことを求めています。

 一見して冷酷かつ不可解なこの行動は、しかし大逆計画の一部であるとすれば、すんなりと理解できます。

 死後に祝福を返して、狭間の地に呼び戻すことを前提にしているからです。

褪せ人は外の世界の死者

 褪せ人とは「未だ死にきれぬ、死者たち」でした。

オープニング
・おお、だからこそ褪せ人よ。未だ死にきれぬ、死者たちよ。
 遠い昔に失くした祝福が、我らを呼ぶ。

 マリカは、不死のルールがある狭間の地ではなく、外の世界で戦って死に、そして褪せ人として戻って来いと、黄金樹勢力の最精鋭たちに告げているのです。

 これを「乱世に備えた仕込み」だと考えれば、不可解な言動が綺麗に収まります。

 好敵手を失ったゴッドフレイらが、更なる戦いを求めたということもあるかもしれませんが。

 マリカはこの時点で、既に大逆計画を持っていたと思われます。

 ゴッドフレイが征服事業を完了したのは、ラダゴンが分割された後ですから、時系列にも齟齬はありません。この頃はマリカに、黄金律への不信が芽生えています。

神殺しの武器

 マリカの計画は我々の身近な場所、すなわち円卓にも影響していました。

 鍛冶師ヒューグの発言を見る限り、マリカは彼に「神殺しの武器」を作るように命じています。

鍛冶師ヒューグ
・儂が虜囚であることは、あんたには何の責もないことだ。
 …それに、武器を打つのは嫌いじゃない。
 儂が何者だろうと、武器は強くなる。技と時間を裏切らぬ。
 …そして、一時忘れられる。あのお方の恐ろしさを。

・おお貴女、お許しくだされ、お許しくだされ。
 まだ、足りませぬ。神には、届きませぬ。
 けれどきっと、必ずや、貴女の願いを…。お許しくだされ、女王マリカ…。

・足りぬ、足りぬ、足りぬ。こんなものでは、神を殺せぬ。
 こんなものでは、神を殺せぬ!

・儂の武器で、神を殺してくれ。それが儂の、生きたすべて。
 そして、女王マリカとの誓約なのだ。

 また、マリカはマリケスを欺いて、封印した死のルーンの一部を回収しました。

黒き剣の追憶
・マリケスは、神人に与えられる影従の獣であった。
 マリカは影従に、運命の死の封印たるを望み、後にそれを裏切ったのだ。

 マリケスは義弟ではあるものの、呪いを付された影従の獣ですから、上位者の手先と言える存在です。

 これらを考慮すれば、マリカが神殺しを企図していたことは明白でしょう。

 こうした死の力によってラダゴンを、あるいは自分をも含めて、抹消しようとしたのだと思われます。

黒き刃の陰謀の夜

 謎の多い「黒き刃の陰謀の夜」ですが、これもマリカの大逆計画の一部だと捉えれば、かなり綺麗につながります。

 事件を首謀したラニは、大いなる意志の傀儡になるのを拒み、肉体だけを滅ぼして、魂の存在になることを望みました。

 マリカはラニと共謀して、マリカに近しい黒き刃を、実働部隊として貸しました。

 この時、肉体だけを滅ぼすラニの「対」として、魂だけが滅ぶ別のデミゴッドが必要になりますが、その対象としてマリカが狙ったのが、疎ましき半身であるラダゴンだったのではないでしょうか。

 しかし、この陰謀は中途半端な結果に終わり、標的だったラダゴンではなく、寵愛した息子ゴッドウィンの魂が滅んでしまいます。

 任務に失敗した黒き刃は、王都を逃亡してリエーニエに逃げ込みました。

 これらは推測の域を出ませんが、相応の整合性があります。詳しくは「黒き刃の陰謀の夜」をご参照ください。

 陰謀の夜は、ラニにとっては成功しましたが、マリカにとっては失敗であり、おぞましい形で息子を失った衝撃から、彼女は狂乱してしまいます。

 マリカはその後、エルデンリングの破砕という最終手段に及びました。

エルデンリングの破砕

 寵愛した息子を失ったマリカは、どうやら心を壊したようです。

ラニ
・…冷たい霧の夜だった。死のルーンが盗まれ、黄金のゴッドウィンが、デミゴッド最初の死者となった時…女王マリカは狂ったのだろう。

 その後、彼女はエルデンリングを砕くという、決死の行動に出ました。

 黄金律に不信を抱くマリカは、エルデンリングを破砕しましたが、黄金律原理主義のラダゴンは、それをなんとか修復しようとします。

 同じ肉体を共有する別の魂が、次々と顕現しては、エルデンリングを壊そうとしたり、直そうとしたりする、奇妙なカットが描写されています。

マリカの槌
・狭間の外、稀人の地で作られたという石鎚。
 女王マリカがエルデンリングを砕こうとし、ラダゴンがそれを修復しようとした得物。
 リングが砕けた衝撃で、半ば壊れており、ルーンの破片が食い込んでいる。

 無論、これはマリカにとって命懸けの反逆であり、罰として磔(はりつけ)にされるのですが、ラダゴンを道連れにしようとする意図が見られます。

マリカ
・おお、ラダゴンよ、黄金律の犬よ。お前はまだ、私ではない。まだ、神ではない。
 さぁ、共に砕けようぞ!我が半身よ!

 「お前はまだ、私ではない」と発言していますが、これは裏を返せば、肉体を乗っ取られつつあったとも見れます。

 まだ自分が顕現できる間に、破砕を断行したのかもしれません。

大いなる意志の眷獣

 ここで改めてですが、エルデンリングとは何でしょうか?

 それは黄金律という世界の理を、狭間の地に適用する媒体ですが、同時に「エルデの獣」でもあります。

エルデの追憶
・それは大いなる意志の眷獣であり、律たる概念の具現であった。

エルデの流星
・かつて大いなる意志は、黄金の流星と共に、一匹の獣を狭間に送り、それがエルデンリングになったという。

 ここにある通りエルデの獣は、大いなる意志が狭間の地を支配するために、流星と共に送り込んだ眷属です。

 黄金律を具現する存在であり、エルデンリングそのもの。

 マリカは神とは言え、実質的にはエルデの獣の宿主でしかありません。

 大いなる意志はマリカを操りますが、しかし彼(?)は遠い宇宙に存在しています。作中でも、名前以上のものが登場することはありません。

 したがって、狭間の地で実際にマリカを縛るのは、大いなる意志の手先であるエルデの獣と二本指でした。

 エルデンリングは、マリカに神たる力を与えると同時に、マリカを支配する存在なのです。

 彼女はこの制約から逃れることを、強く希求しました。

内に巣食う手先

指読みのエンヤ
・女王マリカは、エルデンリングの宿主、その幻視を宿す者。すなわち神さね。
 けれど彼女は、エルデンリングが砕けた後、黄金樹に囚われておる。
 神として、律の砕け、その大過の罰としてね。

 …指様が仰っている。マリカの大過は、大いなる罰に値する。
 だが彼女は、罰せられてなお神であり、幻視の器なのだ。
 その器に大ルーンを捧げる時、お主は彼女の伴侶、エルデの王となろう。
 それこそが指の導きである。

 マリカは「エルデンリングの宿主」とあります。

 マリカが宿主であるなら、エルデの獣は内に巣食う寄生虫的なものになります。

 そして、破砕してエルデンリングが壊れ、世界の秩序が失われても、なお「神であり、幻視の器」だとされています。

 エルデの獣はおそらく、マリカという器なしには存続し得ないのでしょう。彼女の体を手放そうとしません。

 罰として磔にはするけれど、マリカを消滅させたり、器を乗り換えようとはしません。マリカを磔にすることで、同時に肉体を共有するラダゴンも封じられています。

 結果として、狭間の地は神も王もなく、秩序の失われた乱世に入りました。

破砕戦争を経て、褪せ人を呼び戻す

マリカ
・デミゴッド、我が愛し子たちよ。
 お前たちはもう、何者にもなれる。王であれ、神であれ。
 そして、何者にもなれぬ時、お前たちは見棄てられる。…そして贄となるのだ。

オープニング
・マリカの子たるデミゴッドたちは、エルデンリングの破片を得、
 その力に歪み、狂い、破砕戦争を起こし…、
 王なき戦いの末に、大いなる意志に見放された。

 神の子たちは、次代の王をめぐって潰し合いますが、誰も勝者になることができません。

 何者にもなれなかったデミゴッドは、マリカの言葉通り贄となりました。

 大いなる意志は、破砕戦争を経てデミゴッドたちを見限ります。外の世界から褪せ人を呼び戻して、エルデの王レースをさせることになりました。

 ここで先に触れた、マリカの仕込みが生きてきます。

 すなわち、統一戦争で黄金樹勢力を勝利に導いた、王配たるゴッドフレイとその精鋭たちです。マリカの「最大の武力」が還って来るわけです。

 ここまで想定して、何重にも計画していたのなら、大した策士だと言わざるを得ません。

 つづく。

 注
 この記事は個人の考察であり、フロムソフトウェア社の見解ではありません。
 内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。

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