なぜ減塩し過ぎは体に悪いのか? ナトリウム・カリウムポンプ 減塩食品の罠

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過度な減塩は体に悪い

 なぜ塩分の摂り過ぎは、体に悪いのでしょうか。

 逆に、なぜ過度な減塩は、体に悪いのでしょうか。人によっては、この質問自体が意外かもしれませんが。

 答えはどちらも同じで、ナトリウムとカリウムのバランスが崩れて、「ナトリウム・カリウムポンプ」の働きに悪影響を与えるからです。

 厳密には要因は多岐にわたり、これがすべてではありませんが、非常に重要な要素です。

 したがって、次のような観念はすべて誤解と言えます。

・塩分は体に悪い。
・減塩するほど健康になる。
・体によい自然塩なら、いくら摂ってもよい。

 確かに過剰は避けるべきですが、誤った減塩ブームの影響で、現在はむしろ不足の方を心配すべき人も多くいます。

 加工食品の利用が多いなど、食生活が乱れている人は過剰に偏りがちな一方、なまじ健康意識が高くて、塩を警戒し過ぎな人は不足に偏りがちになります。

 特に慢性的に疲れやすい、意欲が湧かないなどと感じている人は、塩不足が関係している可能性もあります。

人間は電気で動く

 人間の脳や筋肉、心臓は、どうやって動いているのでしょうか?

 人間の体は、実は「電気」を使って動いています。

 脳から筋肉へ命令が伝わるのも、心臓がドクンドクンと動くのも、すべて電気信号です。

 そして、その電気を作るために欠かせないのが、「ナトリウム・カリウムポンプ」と言われる、人体の基幹システムの一つです。

 名前は難しそうですが、仕組みは意外とシンプルです。

 ナトリウムとカリウムは、どちらもミネラルの一種。

 ナトリウムは食塩に多く含まれており、カリウムは野菜・海藻・果物・豆類・芋類などに多く含まれています。

 人間の体は、無数の細胞でできています。そして、細胞の内と外では、ナトリウムとカリウムの量が大きく異なります。

 細胞の外はナトリウムが多く、細胞の内はカリウムが多い状態が維持されています。これが正常な状態です。

 なぜ、この状態を保つのかと言えば、それは「電気を作るため」です。

正常な発電のために

 高い場所にある水は、下へと流れて行きます。たとえば、ダムではこの高低差を利用して発電しています。

 それと同じように、細胞もナトリウムとカリウムの量の差を利用して、電気を作っています。

 脳から何らかの命令が出る時、神経細胞ではナトリウムが一気に内に流れ込んで来ます。

 これを活動電位と呼びます。難しい名前ですが、要するに神経の電気信号です。

 神経細胞が働く度に、ナトリウムが細胞の内へ入り、カリウムが外へ出て行きますが、この状態が延々と続くと、正常な状態(外はナトリウムが多く、内はカリウムが多い)を維持できなくなります。

 こうなると、細胞内外の量の差を利用した発電ができません。

 そこで登場するのが「ナトリウム・カリウムポンプ」です。

 このポンプは、活動によって細胞内に流れ込んだナトリウムを外に出し、それと同時に細胞外に流出したカリウムを内に戻します。

 この作業を24時間体制で続けて、正常な状態(外はナトリウムが多く、内はカリウムが多い)を維持するのです。

 「活動」と言った場合、意識して体を動かすことにとどまりません。

 無意識に心臓が拍動するのも活動ですから、その度に発電は必要ですし、その度にナトリウムが細胞内に流れ込みます。

 つまり、生きていればそれだけで、24時間ナトリウムが細胞内に流入しますので、同じく24時間体制で、ナトリウム・カリウムポンプが元に戻している訳です。

 人間が大量のエネルギーを必要とする理由の一つは、このポンプを絶え間なく作動させるためです。

 無意識の活動を含めて、生理活動にはすべて電気が必要であり、その発電のためにはナトリウムとカリウムが欠かせません。

 もしこのポンプに異常を来たすと、神経が働かない、筋肉が動かない、心臓の拍動が乱れるなど、生命維持にすら影響を及ぼします。

 少し不具合が生じただけで、倦怠感が生じる、意欲が湧かない、筋肉に異常が起きる、痙攣(けいれん)する、不整脈を起こすなどの症状が出ます。

バランスが大事

 ナトリウムとカリウムは、協働して作用するため、どちらか一方の絶対量ではなく、両者のバランスが大事になります。

 ですから、塩だけを異常に警戒して、その分量に一喜一憂しても、カリウムに配慮していなければ、大きく的を外す可能性があります。

 一方、相当な量の塩分を摂っていたとしても、野菜や海藻などの摂取量が多かったり、肉体労働が多かったり、汗を大量にかく習慣がある場合は、大した問題がなかったりします。

 実際、昔の日本人はこれに近い状況でした。

 冷蔵庫が普及する前は、塩蔵の保存食が多く、結構な量の塩分を摂っていましたが、一方で植物性の食品が多く、今より遥かに体を動かしていたので、塩分過剰はかなり相殺されていました。

 昔の日本人にとって問題になりやすかったのは、塩分過剰というより、タンパク質不足や微量栄養素不足などの方でした。

カルマグバランス

 人間の体には、連携して働くために、比率やバランスが大事になるシステムが幾つかあります。

 たとえば、「カルマグバランス」です。

 カルシウムとマグネシウムは、その比率やバランスが重要であり、どちらか一方の絶対量を増やしても、他方に無関心であれば、逆に体調を崩す可能性があります。

 したがって、カルシウムのサプリだけを過剰に飲むのは、逆効果になりますので注意してください。

 日本社会はひと頃、カルシウムの摂取を推奨する一方、マグネシウムをあまり意識しない時期がありましたので、(本人にとっては)謎の体調不良に悩んだ方も多いかもしれません。

オメガバランス

 また、近年では「オメガバランス」という言葉も有名になりました。

 これはオメガ3系の脂質と、オメガ6系の脂質のバランスを取ることの重要性を説くもので、健康意識の高い方であればご存知でしょう。

 オメガ3系の脂質は炎症を抑える一方、オメガ6系の脂質は炎症を促進します。

 したがって、オメガ3系を増やして、オメガ6系を減らすことで、体内の炎症を減らしましょうと言われています。

 炎症を「促進」すること自体が悪いのではありません。

 炎症は異常を知らせるサインであり、人体にとっては痛覚と同じくらい重要なものです。

 問題は、現代の食品にはオメガ6系があふれているので、何も意識しないと自然とオメガ6系に偏り、オメガバランスを崩してしまうことです。

 一方のオメガ3系は、意識して摂らないと不足しがちになります。

 飽くまでバランスを取ることを勧めているのであり、単純に「オメガ3系が善玉、オメガ6系が悪玉」とするものではありません。

ナトリウムとカリウムも同様

 話を戻しますと、ナトリウムとカリウムは、これらと同じように、比率やバランスが大事なのであり、どちらかが善玉、どちらかが悪玉というものではありません。

 強いて言えば、両方が善玉ですが、使い方を大きく間違えると、悪さをしかねないということです。

 そして、塩分を敵視して、無暗やたらに減塩を勧めるのは、間違った使い方を布教しているのに等しいと言えます。

減塩食品の罠

 昨今、スーパーには減塩食品があふれています。塩分を警戒している人は、好んでそうした食品を選んでいるかもしれません。

 単純に塩を減らしただけだと、塩味が足りず、薄くてまずく感じます。

 このため、多くの減塩食品では、減らした塩の分だけ、別の添加物や調味料を加えて、なるべくまずくならないように味を調整しています。

 減塩食品を食べることは、生理活動に欠かせないナトリウムを減らす代わりに、人体にどのような影響があるか、必ずしも明瞭ではない物質を取り込むということです。

 裏のラベル(成分表示)を見てみてください。減塩ではない同種の商品に比べて、よく分からない単語が多く並んでいるはずです。

 また、塩分であれば、表示されているので分量が分かりますが、添加物の場合は、ものによっては表示がなかったり、あったとしても分量が適切かどうか、よく分からなかったりします。

 つまり、塩分は自分で管理可能な一方、添加物だと途端に管理しにくくなります。

 減塩食品を選ぶくらいなら、カリウムが多い食品(野菜・海藻・果物・豆類・芋類など)を増やすか、運動量を増やした方がよほど健全だと思います。

 塩分が悪なのではなく、極端な偏りが悪です。過剰と不足は、同じくらい警戒する必要があります。

 なお、高血圧や腎疾患などで、医師から減塩指導を受けている場合は、その指示を優先してください。

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