エルデンリング考察 マリカが嫌った炎と坩堝 (1)

マリカが嫌った炎と坩堝 (1) ブログ

炎は樹の天敵

 物語に影響を及ぼすほど、マリカが忌み嫌ったものがあります。それは「炎と坩堝」です。

 まず、分かりやすい炎から見ていきましょう。

 炎は樹の天敵ですが、次の三つの火はとりわけ、黄金樹勢力にとって恐ろしい存在でした。

・黒炎
・滅びの火
・狂い火

黒炎

 黒炎は、かつてマリカと神の座を争った神人「宵眼の女王」と、その配下が操った火です。

 黒炎は神殺しの炎であり、死のルーンの力は、おそらくここから来ています。

 義弟マリケスが、ライバル勢力の宵眼の女王を討伐したことで、マリカは晴れて神になりました。

 作中では過去の歴史になっていますが、黄金樹勢力にとっては強敵だったようです。

 ELDEN RINGにおいて、黒は死と結び付けられています。

 マリケスが「黒き剣」と呼ばれるようになったのは、死の力を取り込んだからでしょうか。

神狩りの剣
・かつて神肌の使徒たちを率い、マリケスに敗れた、宵眼の女王の聖剣。

黒炎の儀式
・神肌の使徒たちの、黒炎の祈祷のひとつ。その高位とされるもの。
 使徒たちを率いた、宵眼の女王。彼女は、指に選ばれた神人であったという。

薙ぎ払う黒炎
・神肌の使徒たちの、黒炎の祈祷のひとつ。
 黒炎とは、すなわち神狩りの炎であった。しかし、マリケスが運命の死を封じた時、その力は失われた。

神肌の使徒装備
・神狩りの黒炎を操る使徒たちは、かつて運命の死に仕えていたという。
 しかし、黒き剣のマリケスに敗れ、それを封印されてしまった。

マリケス装備
・女王マリカの忠実な義弟にして、その剣に運命の死を宿したマリケスは、すべてのデミゴッドの怖れであった。

黒き刃の陰謀の夜

 マリカが、エルデンリングから運命の死を取り除き、死のルーンをマリケスに管理させたことで、黒炎の勢力は抑え込まれました。

 そこから、神・王・デミゴッドなど特別な存在は不死となり、しばらくは盤石な支配が続くことになります。

 しかし、それが綻んだのが「黒き刃の陰謀の夜」でした。

 ラニが首謀したこの事件は、マリケスから死のルーンの一部を盗み、それを黒き刃に刻印して、久方ぶりの神殺しを、しかも歪な形で行いました。

 この後、マリカがエルデンリングを破砕して、狭間の地は乱世に入っていきます。

 見ようによっては、敗れて封じられた黒炎のリベンジとも取れます。

 そこにマリカ自身が絡んでいるのが、ややこしいところですが、その複雑な事情については、別記事「黒き刃の陰謀の夜」をご参照ください。

黒き刃の刻印
・陰謀の夜、何者かが黒き剣のマリケスから死のルーンの一部を盗み、暗殺者たちの刃にその力を宿した。
 これはその儀式の刻印であり、陰謀の真実が潜んでいるという。

黒き剣の追憶
・マリケスは、神人に与えられる影従の獣であった。
 マリカは影従に、運命の死の封印たるを望み、後にそれを裏切ったのだ。

マリケスの黒き剣
・運命の死を宿したマリケスの黒き剣。その大いなる抜け殻。
 陰謀の夜に、死の一部が盗まれた後、マリケスはこの剣を自らの内に封じた。
 もう二度と、誰にも死を盗ませぬように。

死王子の修復ルーン
・黄金律は、運命の死を取り除くことで始まった。ならば、新しい律は、死の回帰となるであろう。

滅びの火

 巨人族が有する「滅びの火」もまた、黄金樹勢力にとっては恐ろしい存在でした。

 マリカは、黄金樹を焼くその力を潰すために、巨人戦争を起こして、王配ゴッドフレイの軍を巨人たちの山嶺へ送ります。

 滅びの火には、外なる神の一柱「火の神」が関与しています。これは「大いなる意志 VS 火の神」という、上位者の代理戦争でもありました。

火付け
・滅びの火は、黄金樹の禁忌であり、預言者は信仰の内にそれを垣間見る。

火よ、迸れ(ほとばしれ)
・巨人の火とは、黄金樹を焼く滅びの火である。
 それ故に、巨人戦争の後に封じられ、監視者たちが生まれたのだ。

マリカ
・戦士たちよ。我が王、ゴッドフレイよ。導きに従い、よくここまで戦ってくれた。
 あの頂きに、巨人たちを打ち滅ぼし、火を封じよう。
 そして、始めようじゃないか。輝ける生命の時代を。エルデンリングを掲げ、我ら黄金樹の時代を!

 黄金樹勢力は、奪取した要所に第一マリカ教会を設立しています。

 剣碑によれば、巨人族の中のトロルが裏切ったことが、戦況に少なからず影響したようです。

巨人たちの山嶺
・巨人戦争 英雄たちの戦い トロルの裏切り 火の敗れ 黄金樹の時代のはじまり

トロルの黄金剣
・古い時代、巨人戦争において黄金樹に与した巨人たちに与えられた剣。

 この功績にも関わらず、後のトロルたちは荷車を引いたり、門番として使役されており、その待遇は決して良くありません。この理由については後述します。

 巨人戦争に勝利した黄金樹勢力は、しかし滅びの火を消すことはできませんでした。

 そのため、火の巨人一体だけを残し、彼に刻印の呪いを施して、永遠の火守りという役目を強要しました。

火の巨人の追憶
・火の巨人は、巨人戦争の生き残りである。
 釜の火が不滅であると知った時、女王マリカは刻印の呪いを施したのだ。
 小さき巨人よ。永遠の火守りとして生きるがよい。

 しかし、黒炎の場合と同じく、この滅びの火の封印も後に解かれ、黄金樹勢力にリベンジすることになります。

 そして、ここでもややこしいのが、マリカ自身がメリナに使命を与えて、黄金樹を焼かせていることです。

 マリカは、黄金律が繁栄した後に大逆を企てた時、かつて脅威だった黒炎と滅びの火を利用したことになります。詳しくは「マリカの大逆計画」をご参照ください。

狂い火

 もう一つ、恐ろしい存在があります。それはすべてを焼き尽くす「狂い火」です。

 二本指が大いなる意志の使いとして、黄金律を支配しているように、狂い火は三本指が支配しています。

 三本指が誰の使いであるかは不明ですが、やはり指示を与える外なる神がいるのでしょうか。

 完全な手だった五本指が、不完全な二つ(二本指と三本指)に分かれて争っているという説も興味深いのですが、裏付けとなるテキストは見当たりません。

 Bloodborneが「音」で世界をつないだように、ELDEN RINGは「指」で世界をつないでいます。

 異世界へ侵入したり、逆に侵入されたりする場合、指の名が付くアイテムを使います。

 また、二本指は宇宙にいる大いなる意志と交信します。

 そうであれば、三本指もどこかとリンクしているはずですが、詳しいことは分かっていません。

グレートリセット

 狂い火は、黄金律だけでなく、すべての律を拒みます。

 それどころか、生命すらも否定しており、すべてを焼き尽くすことを目指しますから、非常に危険な信仰と言えます。

 「全部壊してやり直せ」というグレートリセットの発想であり、主に弱者・負け組に支持されています。

三本指
・すべては、大きなひとつから、分かたれた。分かたれ、生まれ、心を持った。
 けれどそれは、大いなる意志の過ちだった。
 苦難、絶望、そして呪い。あらゆる罪と苦しみ。それらはみな、過ちにより生じた。
 だから、戻さなくてはならない。
 混沌の黄色い火で、何もかもを焼き溶かし、すべてを、大きなひとつに。

ハイータ
・私に、ブドウをくださった方々は、皆言葉なく叫んでいました。
 決して、産まれてきたくはなかったと。
 …彼らの 王に、おなりください。
 苦痛、絶望、そして呪い。あらゆる罪と苦しみを、焼き溶かす混沌の王に…。
 もう誰も分かたれず、産まれぬように…。

 巫女ハイータが語る三本指の言葉によれば、最初は「大きなひとつ」の存在だったようです。

 そこから生命が分かたれて、様々な種が生まれていきました。

 しかし、多くの種が誕生したことの当然の結果として、種の間には優劣・強弱・勝敗が生じました。

 勝ち組の黄金樹勢力からすれば、「輝ける生命の時代」であっても、負け組からすれば「苦痛・絶望・呪い」であり、「決して、産まれてきたくはなかった」と映ります。

マリカ
・あの頂きに、巨人たちを打ち滅ぼし、火を封じよう。そして、始めようじゃないか。輝ける生命の時代を。

 分かれたから、差が生まれた。差があるから、こんなにも苦しい。それなら、すべてを壊して分かれる前に戻せ。「大きなひとつ」だった原初に。

 これが狂い火を信仰する弱者たちの言い分です。

 彼/彼女らは、死を救済と考えています。それがこの苦しい現実を終わらせる、唯一の道であると。

 また、生来のハンディのほか、生後の事情で現世に絶望した人々も、狂い火を信仰する傾向があるようです。

放浪商人シリーズ
・かつて大隊商として栄えた商人たちは、異教の疑いにより、一族郎党捕らえられ、地下深くに生き埋めとなった。
 そして彼らは、絶望の呪詛を唱え、狂い火を呼んだ。

 冒涜によって荒廃したゲルミア火山でも、絶望して狂い火を受けた騎士の姿が一部に見られました。

忌み捨ての地下

 黄金樹勢力は、当然ながら狂い火を危険視しました。

 対立・抗争した歴史は語られていませんが、三本指が「忌み捨ての地下」の最奥に居ることから、地下に追いやられた可能性は十分あります。

 しかも、そこへ至るまでのアスレチックは難解であり、落下死が大量に発生します。「どのボスよりも、ここで死んだ回数の方が多かった」という人もいるでしょう。

 盲目のハイータは、一体どうやって下って行ったのでしょうか。

 忌み捨ての地下は、忌み子を廃棄する黄金樹社会の暗部であり、そもそもが封印を目的にした場所です。

 黄金樹勢力は、自分たちが受け入れない存在を、地下へ隔離していたようです。

メリナの警告

 後に黄金樹を焼くことになるメリナも、狂い火に対しては嫌悪感を隠しません。炎を宿した彼女から見ても、狂い火は禁忌なのです。

 主人公が狂い火に近づくと、再三にわたり警告を発してきます。

メリナ
・貴方がもし、狂い火に向かっているのなら、それだけはやめて欲しい。
 あれは触れざるもの。全ての生を、その思いを喰らう混沌。
 この世界がいかに壊れ、苦痛と絶望があろうとも、生があること、生まれることは…きっと素晴らしい。
 だから貴方に、王を目指す貴方に、それだけは否定して欲しくない。

・もう一度だけ、言わせて欲しい。狂い火に向かうのは、やめて欲しい。
 貴方に、王を目指す貴方に、生があることを、生まれることを、否定して欲しくない。

・お願いだ。もう、やめてくれないか。
 狂い火の王など、王ではない。生なき世界に、王などいるものか。

 メリナは、母マリカの使命を受けていると思われますから、おそらくマリカも同様の嫌悪感を抱いていたのでしょう。

 警告を無視して狂い火を受領すると、メリナは敵対して殺害予告をしてきます。

・狂い火を、受領したのね。だったら、貴方とはもう相容れない。
 共に旅をするのも、もうこれまで。
 …そして、覚えておいて。
 もし貴方が本当に、混沌の王になったなら…私は貴方を殺すだろう。
 それが、貴方にルーンの力を与えた責任だから。
 さようなら、貴方。トレント…。

・狂い火の王…。必ず辿り着いてみせる…。そして、貴方に運命の死を。

忌み呪いの律

 余談になりますが、狂い火を信仰する人々と同じような発想を、まったく異なる手段で実現しようとした人物がいます。

 それは「忌まわしき糞食い」です。

 オープニングで初登場した彼に、衝撃を受けた人は多いでしょう。

 その不快な名前だけでなく、体中の角を切り落とされた姿、そして絞首刑に処される場面は、強いインパクトがありました。

 生まれながらに呪われていた彼は、狂い火を信仰するのではなく、「忌み呪いの律」の実現を目指しました。

 すべての者が穢れ、呪われていれば、そこに差別は生じないと考えたようです。

 狂い火が「すべてを壊してやり直せ」という発想なのに対して、糞食いは「全員が等しく呪われろ」という発想でした。

 ある意味で狂い火以上に醜悪で、危険な考えだと言えます。

忌み呪いの修復ルーン
・それは子も孫もその先も、永遠に続く忌み呪いの病巣である。
 律のすべてが穢れてしまえば、すべての穢れは穢れでなくなる。すべての呪いに祝福あれ。

ならず者
・あいつは、魂を永遠に呪うために殺す。
 死体を穢し、たっぷりと植え付けるのさ。あいつの呪いを。
 …俺は、あんなにも吐き気がする光景は、見たことがない。
 ただ怖くて、ガキみたいに竦みあがっちまってたよ。
 …友が、穢されていたというのに。

・俺は呪われたくない。死ぬのはいい、だけど今度こそ、真っ当に産まれたいんだよ…。

復讐のミエロス

 糞食いは「ミエロスの剣」をドロップします。

 これによれば、彼の名前はミエロスであり、そして驚くことに巨人族です。矮小に生まれた、酷く醜く、穢れた巨人族だったようです。

 同胞である巨人の背骨から大剣を作り、自らの得物としていました。

ミエロスの剣
・巨人の背骨から作られたという禍々しい大剣。
 ミエロスは巨人としては矮小であり、酷く醜く、穢れていたという。

 被差別部族に生まれた上、強烈な呪いを受けていた彼は、誰からも疎まれ蔑まれて、この世に絶望したのでしょう。

 そんな糞食いが光を見たのは、狂い火の信仰ではなく、世界に対する復讐でした。

 つづく。

 注
 この記事は個人の考察であり、フロムソフトウェア社の見解ではありません。
 内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。

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