坩堝の騎士
マリカは、神殺しの力を持つ炎に加えて、坩堝を嫌いました。
それは「嫌う」という表現では足りず、「憎悪」すら超える強い拒絶でした。坩堝の特徴を持って生まれた我が子を、忌み捨ての地下に廃棄するほどです。
坩堝と聞いて思い浮かぶのは、強敵「坩堝の騎士」でしょう。
ただの騎士でも強いのに、坩堝の騎士は「尾・角・翼・喉袋・針」など、他の生物の特徴を生かして攻撃してきます。
その名前の通り、人間とそれ以外の種が混ざっているのです。

狭間の地において、忌むべき対象とされる坩堝は、しかし黄金樹勢力による統一戦争の頃は、特に差別されていませんでした。
実際に16人の坩堝の騎士が、ゴッドフレイ軍の精鋭として活躍しています。
坩堝の足甲
・最初の王、ゴッドフレイに仕えた坩堝の騎士たちの足甲。
原初の黄金樹、生命の坩堝の力を宿し、坩堝の諸相の祈祷を強化する。
その姿、そして力は、後に秩序無きものとして蔑まれた。
16人という数字は途中で削除されたらしく、今は根拠を確認できないのですが、黄金樹勢力を支えた武力であることは確かです。
それが「後に秩序無きものとして蔑まれた」となっています。
つまり坩堝は、黄金律が覇権を獲得した後に、価値観の変化によって、忌むべき存在になったのです。
古代はむしろ神聖視された特徴であり、統一戦争では大きく貢献したにも関わらず、なぜ坩堝は嫌われてしまったのでしょうか?
そこには、マリカの過去のトラウマが深く関係しています。
逆襲の巫女
テキストによれば、マリカは「稀人/まれびと」であるとされています。稀人は、狭間の地の外からやって来た新参の種でした。
稀人のルーン
・稀人は、かつて狭間の外からやってきた、女王マリカの同族であるという。
稀人が移住した時点で、影の地の支配的な勢力は「角人/つのびと」でした。
その時点における強者・角人は、新参の弱者・稀人を迫害します。
角人は、まさしく坩堝の特徴を持った種です。坩堝に属する角人が、より人間に近い稀人を迫害する構図でした。

小黄金樹の祈祷
・マリカは故郷の村を黄金で包んだ。癒すべき何者も、いないと知っていても。
この祈祷は「巫女の村」で入手できます。そこが「故郷の村」とされています。つまり、マリカは稀人の巫女だったことになります。
角人による稀人の迫害、とりわけ巫女に対する仕打ちは、想像を絶するものでした。テキストを読むだけで陰鬱とします。
ボ二の解体包丁
・ボ二村の大壺師たちの得物。
牢獄に納める大壺を作るために、人体を切り分ける大包丁。
中身肉
・大壺を満たす肉の切れ端。
ピクピクと蠢く薄紅色のそれには、怨霊がこびり付いている。
善き人になるために切り刻まれ、大壺に詰め込まれた罪人どものなれの果てである。
ボニ村 霊体
・さぁ、大人しく壺に入りなさい。そして、善き人になりなさい。
お前たちは、巫子なのだから。
歯の鞭
・汚れた歯は、あらゆる雑菌に塗れており、その歯傷には猛毒が蓄積する。
やがて傷はじゅくじゅくと膿み爛れ、巫子たちは、他の肉とよく馴染んだという。
これによれば、罪人と巫女を解体包丁で切り刻み、大壺の中に一緒に詰め込むことで、善き人に生まれ変わらせるようです。
角人はこれを「人の手による輪廻」と呼びましたが、単なる拷問・虐殺でしかありません。
巫女の出自を持つマリカは、故郷の村で起きた惨事に深く心を痛めています。
影の城裏門のマリカ像
・慈悲を。攫われた巫子たちに。
小黄金樹の祈祷(再掲)
・マリカは故郷の村を黄金で包んだ。癒すべき何者も、いないと知っていても。
マリカは二本指に唆される形で、大いなる意志の傀儡になりましたが、そこには稀人や巫女が置かれた環境を、どうにかしたいという思いがあったのでしょう。
結果として、マリカは神になり、狭間の地に侵攻して勢力を拡げ、やがて覇権を握ります。

力関係が逆転した時、マリカは角人に報復戦争を仕掛けました。息子のメスメルを送り込み、影の地を炎で焼き尽くしたのです。
そして、坩堝を忌み嫌う価値観が徐々に広がり、かつては強者だった角人は、一転して迫害される立場に転落しました。
針の騎士レダ
マリカ様はメスメル卿に命じ、塔の一族を粛清した。火をかけ、焼き払った。
…角人殿が黄金樹を許せぬのも、当たり前だ。
だが、いつだって、人は人を虐げるものだ。塔の一族も、何も変わらない。
奴らもまた、無辜なる善などではない。
ただ、敗者となったにすぎぬ。…やりきれんな。
原初か分種か、それが問題だ
三本指によれば、この世界の原初は「大きなひとつ」でした。そこから生命が「分かたれ、生まれ、心を持った」とされます。
三本指
・すべては、大きなひとつから、分かたれた。分かたれ、生まれ、心を持った。
けれどそれは、大いなる意志の過ちだった。
苦難、絶望、そして呪い。あらゆる罪と苦しみ。それらはみな、過ちにより生じた。
だから、戻さなくてはならない。
混沌の黄色い火で、何もかもを焼き溶かし、すべてを、大きなひとつに。
黄金律(二本指)は、この分種に賛成であり、原初や混種を忌避します。
生きる者を尊び、生命が分かたれる流れが続くことを望んでおり、「秩序を好み、混沌を嫌う」スタンスです。これは勝ち組に支持される傾向があります。
マリカ
・あの頂きに、巨人たちを打ち滅ぼし、火を封じよう。
そして、始めようじゃないか。輝ける生命の時代を。エルデンリングを掲げ、我ら黄金樹の時代を!
これに対して、狂い火(三本指)は分種に反対であり、原初に戻すことを目指します。
生きる者を否定し、すべてを焼き尽くして、元の「大きなひとつ」に戻すことを望んでいます。
「秩序を嫌い、混沌を好む」スタンスであり、こちらは負け組に支持される傾向があります。
種の差があるから、苦痛・絶望・呪いがある。そうであれば、「種をリセットしろ」という言い分になるわけです。
ハイータ
・私に、ブドウをくださった方々は、皆言葉なく叫んでいました。
決して、産まれてきたくはなかったと。
…彼らの 王に、おなりください。
苦痛、絶望、そして呪い。あらゆる罪と苦しみを、焼き溶かす混沌の王に…。
もう誰も分かたれず、産まれぬように…。

勝ち組に属したマリカと黄金律は、当然「分種」を支持しました。
勝ち組が特権を享受するには、負け組の存在が欠かせません。必然的に二極化と競争を志向します。
それに付随して、原初や混種は秩序なきもの、律が及びにくい存在として嫌われることになりました。
黄金律が繁栄するほどに、原初の生命・種が混じる坩堝・亜人などは忌避されたのです。
ゴッドフレイ軍を支えた坩堝の騎士や、巨人を裏切って戦況を変えたトロルは、その多大な功績にも関わらず、黄金律の社会で蔑まれる存在になっていきます。
秩序を好み、混沌を嫌う
黄金律が好んだのは、秩序ある優れた種の生命循環です。
一方、その秩序を乱す次のような存在を嫌っており、かなり冷淡な扱いをしています。
・坩堝(混種・巨人・亜人)
・蛇
・死に生きる者
・人造(しろがね人)
坩堝という単語は、混種に近いような印象を受けますが、それだけではありません。
次のテキストによれば、巨人も坩堝に含まれるようです。
全ての坩堝のタリスマン
・坩堝の諸相、その全てが混ざった巨大な塊。
かつて巨人の身体に生じたものとされ、塔の神話では坩堝の母とも呼ばれている。

生命が入り混じった存在、分種が進んでいない存在は、どうやら坩堝に分類されるらしく、そうであれば亜人も似たようなものでしょう。
文明的ではない、人間らしくない、原初的などの特徴は、混沌に近しい(律から遠い)として蔑まれたようです。
坩堝鱗のタリスマン
・古い時代、人の身体に生じたという、諸相の混ざった鱗のタリスマン。
それは、生命の原初たる坩堝の名残である。
部分的な先祖返りであり、古くは神聖視されたが、文明の後には穢れとして扱われた。
坩堝の諸相
・それは黄金樹の原初たる生命の力。
坩堝の諸相のひとつである。かつて、生命は混じり合っていた。
坩堝の装備
・原初の黄金樹、生命の坩堝の力を宿し、脈管がびっしりと浮き上がっている。
その姿、そして力は、後に混沌に近しいとして蔑まれた。
過去のトラウマもあってか、マリカの坩堝嫌いは筋金入りで、角を持って生まれた我が子を、王都の地下に廃棄・封印しています。
かつては神聖視されたものを、呪いと呼んで忌避しました。
蛇を忌避する
原初的な生命の中でも、とりわけ黄金律が嫌った存在があります。それは「蛇」です。
蛇と言えば、法務官ライカードでしょう。彼は冒涜の力に手を染め、「神喰らいの蛇」と一体化して、黄金律に反旗を翻しました。
その力によって、王都の遠征軍を退けましたが、一方でゲルミア火山は荒廃し、配下だったゲルミア騎士は離散しました。

神喰らいの蛇には、黒炎と同じく神殺しの力があります。
加えて、他の生命を食らって、その力を取り込みますから、黄金律が定める生命循環のルールを乱します。
秩序から程遠い、混沌に近しい存在として唾棄されました。
気の毒なのがメスメルです。黄金樹勢力の王子でありながら、黄金律が嫌う「炎と蛇」を宿した彼は、母マリカから嫌悪されます。
忌み捨ての廃棄処分は免れたものの、影の地に送られて、角人の虐殺という汚れ役を命じられました。
メスメルは母の愛を求めて、忠実に任務を果たしましたが、叶わぬ望みであることは理解していたようです。最期の台詞には本音が零れました。
メスメル
・我が使命は不変なり。黄金の祝福無きすべてに、死を。…メスメルの火を。
・母よ、マリカよ。私は、呪う。貴方を…。
注
この記事は個人の考察であり、フロムソフトウェア社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
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