フレスベルグよ、なぜ裏切った?
フレスベルグ家は、数ある名家の中でも、セイロスとの関係がとりわけ深い家でした。
初代皇帝フレスベルグ1世は、聖者セイロスの盟友であり、その血を分け与えられて、共に解放王ネメシスの軍を討ち果たしています。
アドラステア帝国の代々の皇帝は、皆がセイロスの紋章を持っていました。
約1,100年にも及ぶ友好関係があったにも関わらず、エーデルガルトはセイロス(=レア)に対して反旗を翻します。
帝国側は代替わりしていますが、セイロスは同一人物ですから、その心中は複雑だったことでしょう。
最大の味方とみなしていた血筋が、牙を剥いて大修道院ガルグ・マクを襲撃し、これを壊滅させてしまったのです。
フレスベルグの一族は、セイロスの子とは言えませんが、血を与えた分け身のような存在です。
セイロスの紋章を持つエーデルガルトが、セイロス教団の撲滅に兵を挙げたことは、セイロスにとっては強烈な皮肉になりました。

エーデルガルト
・教団は、フォドラを支配せんとする欲望のために教義を利用し、人々を欺いてきた。
かつて帝国を分裂させて王国を作り、王国を分裂させて同盟を生んだのもそうだ。
それらはすべて人々を争わせ、民の安寧を脅かすことで己の権勢を保つためだった。
女神に救いを求める人々の信仰心を利用し、金を掻き集め、贅を尽くす偽善者たち…。
彼らはフォドラを導くことなどできない。
そんな信仰は、打ち砕かれるべきだ。
故に、私は決断した!
アドラステア皇帝エーデルガルト=フォン=フレスベルグの名において…
ここにセイロス教団との開戦を宣言する!
紋章社会を壊せ!
なぜエーデルガルトは、セイロス教団を消滅させようとしたのでしょうか?
それは彼女によれば、貴族制度を破壊するためでした。
エーデルガルト
・私は既存の貴族制度を壊すつもりでいる。
貴族を貴族たらしめているのは紋章の血脈。その価値をなくせば貴族も自ずと消えるわ。
貴族の血筋には、一族の誰かに、22の紋章のうち一つが発現しています。
この「紋章」とは、実は竜族(ナバテア人)の血であり、竜族の力を振るうことができる資格に相当します。
これが人間社会では尊ばれて、貴族という扱いになっています。
エーデルガルトは、貴族制度を憎んでいました。
そして貴族制度、言い換えれば紋章重視の社会を破壊しようと考えますが、そのためには紋章の実体である竜族の血を、避けて通ることはできません。
セイロスは竜族の生き残りであり、セイロス教団は紋章を重んじる価値観の中心にあったため、これを破壊しようとしたわけです。
しかし、戦乱となれば、竜族の力は逆に存在感を増してしまいます。
アドラステア帝国の挙兵は、当初こそ順調でしたが、すぐに行き詰まりました。紋章社会を壊すために、紋章の力を必要とするという矛盾に、早々につまづいてしまったのです。
これを打開するのは挙兵から5年後、神祖の力を継いだベレトが陣営に加わってからです。
結局は竜族頼みなのですから、エーデルガルトの理想はこの時点で破綻していたと言えるでしょう。

おぞましき血の実験
なぜエーデルガルトは貴族社会を、ひいては紋章(竜族の血)を憎んだのでしょうか?
それは「血の実験」という、凄惨な幼少期があったからです。
闇に蠢く者たち(アガルタ人)は、帝国のアランドル伯を殺害してこれに擬態し、工作活動によって帝国を混乱に陥れました。
その流れでフレスベルグ家を乗っ取り、皇帝イオニアス9世を無力化して、その子弟らに血の実験を施しました。
帝国貴族名鑑2 アランデル家
・元は帝国の小貴族だったが、現当主であるフォルクハルトの妹が皇帝イオニアス9世の室となってから急伸し、アランデル大公の位を贈られる。
エーギル家に協力し、七貴族の変を起こした主犯格の一人と目される。
帝国貴族名鑑によれば、妹を皇帝の側室にして、それを足掛かりに権力を得ていったようです。やがて七貴族の変を策謀して、皇帝の権能を剥奪しました。
血の実験とは、後天的に紋章を宿らせるための人体実験です。
被験者のほとんどは、失敗して命を落としましたが、唯一エーデルガルトだけは生き延びて、炎の紋章を宿すことに成功します。
彼女は生来、セイロスの紋章を有していましたが、これに加えて炎の紋章を得たわけです。
紋章とは竜族の血ですから、これが複数発現することは、本来はあり得ません。
エーデルガルト
・紋章学の理屈上、1つの体に2つの紋章を宿すなんてあり得ない。
人為的に、血の改造を施さない限りは。
それを無理やり発現させたため、失敗すれば命を落とし、成功したとしても白髪になって、寿命が大幅に縮まるという不利益がありました。
エーデルガルトの髪は、美しい銀髪ではありません。生命力を失った白髪です。幼少期の彼女は髪は栗色でした。
血の実験によって、家族と人生を破壊されたために、エーデルガルトは紋章を憎むようになったのです。

才女リシテアの悲劇
このおぞましき血の実験は、エーデルガルト以外にも被害者がいました。
それはレスター諸侯同盟、コーデリア家のリシテアです。
リシテアの幼少期、コーデリア家はアドラステア帝国の内紛に巻き込まれて、闇に蠢く者たちの介入を受けることになりました。
リシテア
・…今から18年前、コーデリア家が帝国の内乱に関与したことがありました。
いえ、実際には救援要請に応じただけで、政治的な関与はなかったのですが。
内乱の鎮圧後、コーデリア家は責任の一端を負わされ、帝国から干渉を受けました。
当時の同盟諸侯は日和見で…誰も救いの手を差し伸べてはくれませんでした。
結果、コーデリア家の重臣は殺され、代わりに帝国の人間が送り込まれました。
その中に、怪しげな魔道士もいました。
青白い肌の、不気味な魔道士たちです。
彼らによって、家中の若者たちが次々と捕らえられ、投獄されました。
やがて、恐ろしい儀式が…
いえ、実験と言ったほうが正しいかもしれません。
これはいわゆる「フリュムの乱」です。
アドラステア帝国の内紛を利用する形で、闇に蠢く者たちが帝国のフリュム家と、同盟のコーデリア家を乗っ取りました。
やがてアランドル家を乗っ取り、遂には本命のフレスブルグ家まで傀儡にしてしまいました。
帝国貴族名鑑2 フリュム家
・帝国の子爵。皇帝イオニアス9世の中央集権政策に反発し、帝国からの独立と同盟への参画を目論むも、帝国軍の介入にあって失敗する。
後始末として本家は断絶、現在では養子を当主として迎え入れている。
リシテア
・帝国の監視下、父と母は何もできないまま、その惨状を見ているしかありませんでした。
みんなが次々と命を落としていく中、唯一生き残ったのが…私でした。
…私ね、小さい頃は、こんな髪の色じゃなかったんですよ?
彼らの実験で、血に何かをされて…
ある日、目が覚めたら、こんな髪に…。
私の変貌を見た彼らは喜んでいました。
ついに実験が成功したと思ったのでしょう。
調べてみると確かに、私はこの体に2つの紋章を宿していました。
ただし…2つの紋章を得た代償は、髪の色を失っただけではなかったようです。
魔道士たちからは…長くは生きられないと宣告されました。
もって5年…いえ、もっと早いかもしれません。
リシテアもまた、美しい銀髪ではありません。生徒の中では最年少の彼女が、総白髪になってしまったのです。
短命と宣告された彼女は、猛烈な努力で才能を開花させますが、それは悲痛な過去に起因しています。
リシテア
・私の両親は、貴族であるがゆえに、とても苦しい人生を強いられてきました。
私自身、紋章のせいで、まっとうな人生さえ送れない体になった。
貴族制度も紋章も、うんざりなんです。

炎の紋章
少し脱線しますが、炎の紋章について触れておきましょう。
作中、炎の紋章を持つ人物は4名登場します。
・神祖ソティス
・解放王ネメシス
・炎帝エーデルガルト
・主人公ベレト
興味深いのは、同じ炎の紋章でありながら、それを得た経緯がまるで異なることです。
神祖ソティスは本人ですから、炎の大紋章を持っていたのは当然です。
ソティスに限らず、セイロスと四聖人(マクイル・インデッハ・キッホル・セスリーン)はそれぞれ、本人が大紋章を持っています。
解放王ネメシスは、聖墓に眠るソティスの亡骸を盗み、そこから血を奪って取り込みました。
竜族の血を取り込めば、必ず紋章を得るわけではありません。人間側に適性がなければ、言わば拒否反応のような形で、危険な状態に陥ることがあります。
盗賊ネメシスは、奇跡的にソティスの亡骸を盗み、奇跡的にその血に適合した、アガルタから見れば古代の傑作でした。
ネメシスは解放王を名乗り、天帝の剣を振るって、フォドラ制圧まであと一歩というところに迫りますが、タルティーンの野で聖者セイロスに敗れました。
ちなみに、「解放」とはアガルタ視点であり、竜族(ナバテア人)からの解放を意味しています。
この時以来、アガルタは炎の紋章を再現することに心血を注ぎましたが、1,100年もの間それは実現しませんでした。
彼らの悲願がようやく叶ったのが、炎帝エーデルガルトです。
エーデルガルトは、アガルタの技術によって、人工的に炎の紋章を宿しました。アガルタの首領・タレスは、エーデルガルトをして「最高傑作」と呼んでいます。
おそらくは、地下に保存したネメシスの遺骸から、その血を流用したのでしょう。
そして、最後は我らがベレトです。
ベレトは、セイロスが犯した禁忌によって、ソティスの心臓(紋章石)を埋め込まれました。
ベレトが、紋章石を欠く天帝の剣を扱えたのは、自分の心臓として、その紋章石が体内にあったからです。ベレトの炎の紋章も、この心臓に由来しています。
アガルタが人体実験でエーデルガルトを改造したと聞くと、「なんと酷いことを…」と思いますが、竜族(ナバテア)も人体実験でベレトを改造しているのですから、実はどっちもどっちだったりします。
タレスは炎帝を作るために、フレスベルグ家とコーデリア家の子弟を多く殺しましたが、一方でセイロスも神祖の器を作るために、12人の実験体を間接的に殺しています。
その中には、ジェラルトの妻にしてベレトの母、シトリーも含まれています。真相はかなり残酷な話でした。

つづく。
注
この記事は個人の考察であり、任天堂及びインテリジェントシステムズ社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
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