エルデンリング考察 死衾の乙女フィア (2)

死衾の乙女フィア (2) ブログ

なぜDを殺害したのか?

 死衾の乙女フィアは、なぜ死を狩る者・Dを殺害したのでしょうか?

 死に生きる者をめぐる思想が、相容れなかったことはあるでしょう。

 「正しい死」を守りたいDと、「異なる死」を認めて欲しいフィアは、根本的に対立しています。

 しかし、そこにはより直接的な理由がありました。

 それはDが、フィアが探し求める「聖痕」を持っていたからです。

 Dはそれをリムグレイブにある呼び水の村、つまり主人公と出会った場所で、偶然に発見したようです。

死を狩る者・D
・俺は別にやることができた。この村で、環百足の刻印を見つけたのだ。
 決してあるべきでない、忌まわしい印をな。
 …何者かが、黄金の律を穢そうとしている。根絶しなければならない。

魔術師ロジェール
・そう言えば、Dから少し聞いたのですが、環百足の刻印が見つかったそうなのです。
 環百足は、呪痕にまつわる古い刻印。
 それを知り、用いる者が、もしも邪悪でなかったら、お互いに助け合えるかもしれません。

 この頃は序盤も序盤。1週目の主人公には、意味が分かりませんが、Dとフィアには重要な事件だったようです。

 フィアは何らの理由により、Dが聖痕を持つことを知って、奇襲するに及びました。

フィア
・やっと、取り戻せました。貴い方が、奪われた聖痕を。
 …貴方とも、お別れです。最後に、円卓の皆にお伝えください。

 我はフィア、死衾の乙女。
 円卓よ、貴い方、ゴッドウィンの死を侵すことなかれ。
 我らはただ、死に生きる。そしていつか、王を得る。
 何者が咎められようか。民が、弱き者が、自らの王を戴くことを。

聖痕=死の呪痕

 聖痕とは何でしょうか?

 作中で「聖痕」と呼ぶのはフィアだけです。それ以外の人物は「死の呪痕」と呼びます。それ故に分かりにくいところです。

 アイテムとしての名称も、死の呪痕になっています。

 死の呪痕とは、デミゴッド最初の死に刻まれる特殊な刻印です。作中では最初に、そして不完全な死に方をしたデミゴッドが二人いました。

 すなわち、肉体だけが死んだラニと、魂だけが死んだゴッドウィンです。この二人に刻まれた刻印が、死の呪痕になります。

死の呪痕
・月の王女ラニの、棄てた肉体に刻まれた呪痕。
 百足傷の欠環とも呼ばれる。
 呪痕は、デミゴッド最初の死に刻まれ、円環を成すはずである。
 だが、デミゴッド最初の死者は二人あり、呪痕は二つの欠環となった。
 ラニは肉体だけの最初の死者であり、ゆえに死王子は、魂だけの最初の死者なのだ。

 正しく死んだのであれば、呪痕は円(円環)になるはずでした。

 しかし、不完全な死に方をしたラニとゴッドウィンは、あるべき円の呪痕が分割されて、それぞれに半円(欠環)の呪痕が刻まれました。

 フィアは、半円の死の呪痕(彼女にとっては聖痕)を二つ集めて、あるべき円に戻すことを願っています。

 そして、二つが揃った時に死王子ゴッドウィンと同衾して、英雄から預かった生命力を移転することで、子(死王子の修復ルーン)を生もうというわけです。

フィアに味方した場合

 一方の聖痕(死の呪痕)は、Dがリムグレイブで偶然に発見しました。詳細は分かりませんが、ゴッドウィンの肉体から誰かが持ち出したようです。

 他方の聖痕(死の呪痕)は、主人公が神授塔を訪れて、ラニの滅んだ肉体を調べれば入手できます。

 主人公がこれをフィアに渡すと、彼女は深い敬意を示します。

 死を生きる者たちを認める世界を作って欲しい。私たちの王になって欲しいと。

フィア
・これは…、もうひとつの聖痕…。どうして、貴方が…。
 ああ、ありがとうございます。
 これでゴッドウィンは、あるべき最初の死者となり、きっと再びの、偉大な生を得るでしょう。
 貴方は私の、いえ私たちの英雄です。

・私はもうすぐ、ゴッドウィンと同衾します。
 そして、きっと宿すでしょう。黄金の王子にしてデミゴッド最初の死者たる彼の、再びの生を。
 死に生きる者たちのためのルーンを。
 貴方にお願いしたいのです。私の子を、ルーンを掲げ、王になってはもらえませんか。
 死に生きる者たち、そのあり様を許す、我らの、エルデの王に。

フィアと敵対した場合

 主人公はその選択によって、フィアと敵対することもできます。

 その時の毅然とした態度には、彼女の覚悟と芯の強さがよく見えます。騎士ライオネルは、こういうところに惹かれたのでしょうか。

フィア
・あの乱暴な、黄金律の原理主義者たちのように、我らのすべてを否定するのですか?

・分かりました。では、私を殺しなさい。
 私はゴッドウィンの、死王子の同衾者。死に生きるものたちの母であったつもりです。
 ならば彼らへの恨み、憎しみは、すべて我が身の受けるべきものです。
 さぁ、殺しなさい。否定するのでしょう?
 ただ死に生き、自らの王を戴こうとする我らを。

 黄金律の原理主義者とは、D兄弟のことを指しています。

 いつの世でも、一神教の原理主義者には、寛容さがまるでありません。

 同じく黄金律の原理主義者、あるいは黄金律の犬と呼ばれるラダゴンも、おそらく似たような思想の人物なのでしょう。

短剣の謎

 フィアはDを殺害する時、主人公に短剣を渡して、「これを持ち主に返して欲しい」と伝えます。

 主人公がその短剣をDに渡すと、彼は見た瞬間に何かを悟り、「返しておく」と言ってこれを受け取ります。

 その後、Dはフィアに殺害されました。短剣を餌にして呼び出し、奇襲したことになります。

 Dは短剣に強く反応した上に、フィアに会う時は油断していたわけですから、謎は深まるばかりです。

蝕まれた短剣
・死衾の乙女フィアから預かった短剣。彼女はこれを持ち主に返すことを望んでいる。
 元々は、黄金と白銀が絡み合った、特別な武器であったようだが、今は黒い傷に蝕まれ、ボロボロである。

 「黄金と白銀が絡み合った」というテキストがあるため、D兄弟の所有物だったことは明らかでしょう。

 他の双児装備にも、すべて「黄金と白銀、絡み合う双児」という表現があります。

 これが「黒い傷に蝕まれた」と記載されています。

 ELDEN RINGにおいて、黒は死の色です。黒き刃しかり、黒き剣のマリケスしかり、神殺しの黒炎しかり。

 何やら死をめぐる因縁がありそうですが、詳細は明かされないままです。

双児の鎧
・黄金と白銀、絡み合う双児を象った鎧。
 分かたれぬ双児、Dは二人いる。二つの身体、二つの意志、そして一つの魂。
 共に起きることはなく、言葉を交わすこともない。

献身の理由

 フィアは死王子ゴッドウィンに、献身的に尽くしているように見えます。一見忠臣のようですが、意外なことに二人は、おそらく何の関係もありません。

 配下でも恋人でもないのに、フィアが一方的に「死王子の律」にこだわっています。

 フィアはゴッドウィン個人に、忠誠を誓ったのではありません。

 死王子ゴッドウィンという存在が、黄金律から排除された者たち、つまり死に生きる者を救済する象徴になったため、彼を新しい世界の中心として選んだのです。

 彼女の行動原理は、「死とは何か」「生命は誰のものか」という思想にあります。

 死に生きる者は、死んだのに終われない、黄金樹へ還れない、異端として排除されるという扱いを受けます。

 フィアは、ここに強い問題意識を持ったようです。

 黄金律の象徴であるゴッドウィンが、黄金律によって救済されない死者になった。彼女はこの点に、大きな意味を見出します。

 ゴッドウィンの不完全な死を、大部分の人は「異常」と考えましたが、フィアはそこに「新しい可能性」を見ました。

 フィアはゴッドウィンを、元の姿に蘇らせたいわけではありません。

 彼女が望んでいるのは、死王子ゴッドウィンを、狭間の地において認めさせること。

 ゴッドウィンを、元の姿で生き返らせることではなく、死王子ゴッドウィンという存在を、新しい秩序の一部にすることでした。

死衾の誇り

 フィアは、ゴッドウィン個人に忠誠を誓ったのではなく、彼の存在に己の理想を投影したのです。

 なぜ、そのような理想を持ったのかと言えば、フィア自身が異端の存在だったからでしょう。

 死衾の乙女が、生者の社会において、表や中心にいることはできません。彼女らは常に死者の傍にあります。

 そのため、黄金律の秩序を外れたゴッドウィンや、死に生きる者たちに、強く共感したのではないでしょうか。

フィア
・私は、満足しているのです。
 押し付けられた遺体でなく、自らの意志でゴッドウィンと同衾し…子を宿すのですから。
 それに、その子はきっと、貴方の温もりを継いでいる。
 死衾の乙女として生まれ、これ以上の幸福があるでしょうか。

 この発言を見る限り、フィアは自分の境遇と任務に、誇りを持っていたようです。

 死衾の乙女は、生者と死者の橋渡しを行う存在です。

 同衾するとは言え、娼婦や慰め役ではありません。おそらくは宗教性を持つ、彼女たちにとって神聖な行為だったのでしょう。

 ELDEN RINGには、バトルでは活躍しなくても、実際は闘い続けた強い女性が何人か登場します。

 それはマリカであり、ラニであり、そしてフィアでした。

 つづく。

 注
 この記事は個人の考察であり、フロムソフトウェア社の見解ではありません。
 内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。

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