エルデンリング考察 マリカの大逆計画 (3)

マリカの大逆計画 (3) ブログ

黄金樹を焼くメリナ

 これまで見てきた通り、マリカは様々な手を打って、自分を支配する存在(大いなる意志・エルデの獣・二本指)に抵抗しました。

 ここでもう一つ、仮説ではありますが、大事な存在を挙げておきたいと思います。

 それは主人公を導く「メリナ」です。

 彼女は終盤、巨人たちの山嶺において、火の巨人が守り続けた「滅びの火」に身を投じることになります。

 そして自分を種火にして黄金樹を焼き払い、侵入者を拒んでいた拒絶の刺(トゲ)を除きます。

 これがなければ、ラダゴンやエルデの獣がいる場所へ到達できなかったのですから、極めて重要な役回りだったと言えるでしょう。

母の使命?

 メリナの発言を並べてみると、直接のテキストはないものの、マリカの仕込みであった可能性は十分にあります。

メリナ
・私は、黄金樹の麓で産まれた。
 そこで母から使命を授かり…けれど、すべて無くしてしまった。
 …それを、確かめなくてはならない。
 焼け爛れ、霊の身体となってまで、私が生き続けている理由を。

 メリナは「黄金樹の麓で産まれた」とあります。そして「母の使命」を授かったと。

 この二点だけでも、相当に怪しいと言えるでしょう。信仰の対象である黄金樹の麓で産まれるとしたら、それは王族か高貴な者に限られます。

 その中で「母が使命を与える」など、作中ではマリカ以外に候補が見当たりません。

 この時のメリナは記憶が曖昧ですが、後に自分の使命を思い出します。

 それは滅びの火を利用して、黄金樹を焼き払うこと。黄金樹の中へ至る道を拓くことです。

 そこにはラダゴンとエルデの獣がいます。すなわち、黄金律の心臓部です。

 主人公にとっても重要なイベントですが、同時にまさしくマリカの望んだことでした。

ラダゴンに運命の死を

メリナ
・黄金樹の内に、入れなかったのでしょう?
 棘の覆いが、貴方を拒んだ。
 …それは、拒絶の刺。黄金樹が、外のすべてを拒む、自我の殻。
 エルデンリングに見え、エルデの王になるためには、その刺を越えなければならない。

 …私の使命は、そのためのものだった。だから、また私と旅をして欲しい。
 遥か雲の上、雪深い巨人たちの山嶺、その頂にある、滅びの火まで。
 そうしたら、黄金樹を焼くことができる。
 …そして貴方を導ける。エルデの王たる道に。

・伝えておきたいことがある。私の使命は、母から授かったもの。
 けれど、今はもう私の意志になった。
 母の意志とは関係なく、ただ私が望む、世界の姿のために。私が心に決めたもの。
 …誰にも、それを侮辱させない。もちろん、貴方にも。

・黄金樹よ、燃えるがよい、新しい王のために。
 …ありがとう、私を連れてきてくれて。
 炎と共に歩む者、いつか運命の死に見えん。さようなら。

 燃えるがよい、新しい王のために。これは十分に機能しなくなったとは言え、まだ王配の立場にあるラダゴンを否定する発言です。

 いつか運命の死に見えん。この世界で「運命の死」と言えば、神や王、デミゴッドなど特別な者の死、つまりは神殺しを意味します。

 端的に言えば、ラダゴンを討てということでしょう。

 黄金樹勢力はかつて、ゴッドフレイ軍の活躍によって、巨人戦争に勝ちましたが、しかし滅びの火を消すことはできませんでした。

 それ故、火の巨人だけは残し、刻印の呪いを施して、その火を管理させました。黄金樹勢力からすれば、封印に近い措置です。

火の巨人の追憶
・火の巨人は、巨人戦争の生き残りである。
 釜の火が不滅であると知った時、女王マリカは刻印の呪いを施したのだ。
 小さき巨人よ。永遠の火守りとして生きるがよい。

火付け
・滅びの火は、黄金樹の禁忌であり、預言者は信仰の内にそれを垣間見る。

 炎は樹の天敵、したがって滅びの火は黄金樹の禁忌です。敗れて一時は封じられた「火の神」の力が、黄金樹にリベンジを果たしたわけです。

兄妹が宿した種火

メスメルの種火
・串刺し公、メスメルの内に燃えていた種火。それは暗く、邪な蛇に蝕まれている。
 ラウフの古遺跡にあるという、封印の木を焼くことができる。
 メスメルもまた、その妹と同じように、火の幻視を宿していた。

 DLCでは、メスメルの種火が登場しました。

 メスメルは「その妹と同じように、火の幻視を宿していた」とされます。

 このアイテムも、やはりメリナがマリカの娘(メスメルの妹)であることを示唆しています。

 メスメルが目に宿した炎は、古遺跡の封印の木を焼き払いました。また、影の地を炎で包んで、角人らを虐殺しています。

 一方、妹と思われるメリナが目に宿した炎は、滅びの火の力を借りて、黄金樹を焼き払いました。自身を種火とする壮絶な放火でした。

 この文言が明かされたことで、メリナをマリカの娘と見る説は、一気に確度が高まりました。

メリナが持つ「M」

 メリナがマリカの娘ではないかという説には、もう一つ理由があります。

 それは彼女の名前が、命名ルールに沿っていることです。

 マリカの子は、ゴッドウィンを除いて、名前に「MarikaのM」を含むという特徴があります。

・モーグ Mohg
・モーゴット Morgott
・ミケラ Miquella
・マレニア Malenia
・メスメル Messmer

 これに対して、レナラの子は全員、名前に「RennalaのR」を含むという特徴があります。

・ラニ Ranni
・ラダーン Radahn
・ライカード Rykard

 この傾向に照らした場合、メリナ(Melina)は「MarikaのM」を含みます。

 この「M」を持つ娘が、母の使命を授かって、黄金樹を焼くのです。メスメルの種火と似たような炎を使って。

 偶然として一蹴するには、あまりにも整い過ぎているでしょう。

 メリナがマリカの娘だとした場合、彼女も大逆計画の一部だったことになります。

マリカの大逆計画

 マリカが張り巡らした策を整理してみましょう。

 不可解に思えた事象が、かなりの程度、綺麗に収まることに気づくと思います。

・ゴッドフレイとその精鋭を、褪せ人として呼び戻す前提で、いったん狭間の地を追放する。
・鍛冶師ヒューグに、神殺しの武器を作れと命じる。
・メリナに黄金樹を焼く使命を与える。
・死の番人たるマリケスから、死のルーンの一部を奪う。
・黒き刃の陰謀の夜で、ラダゴンの魂だけを滅ぼす(失敗)。
・エルデンリングを破砕する。

 黒き刃の陰謀の夜は、ラニは目的を達しましたが、マリカにとっては失敗でした。

 しかし、それ以外はすべて狙いが当たっているので、見事な打率だと言えるでしょう。

 こうして並べてみると、エルデンリングの破砕すら、狂人が衝動的に行ったことではなく、決死の反逆に見えてきます。

 よもや自分の肉体を磔にさせることで、ラダゴンを封じることまで考えていたのでしょうか。そこはさすがに結果論かもしれませんが。

 主人公は、ラダゴンとエルデの獣を倒した後、エンディングを選ぶこと、つまり秩序のあり方を選ぶことができますが、その自由はマリカが命懸けで拓いた道だったのかもしれません。

輝ける金仮面の完全律

 この記事は、マリカの大逆計画という観点から整理しているので、「半身のラダゴンが疎ましい」という見え方になりますが、その逆の立場に立つ人もいました。

 つまり、半身のマリカが疎ましい、ラダゴンだけにした方がよいと考える者です。

 それは「輝ける金仮面」です。

 彼にとってマリカは、息子を失って錯乱したことで、世界の秩序を乱した存在と映ったようです。

 人間のような心を持つ神など不要であり、そのような感情は「律の瑕疵」に過ぎないと断じています。

完全律の修復ルーン
・現黄金律の不完全は、即ち視座の揺らぎであった。
 人のごとき、心持つ神など不要であり、律の瑕疵であったのだ。

律の時代

 金仮面卿は、今の黄金律は「視座の揺らぎ」が弱点であると指摘しています。

 つまり、分割によって理性を得たラダゴンと、人情を得たマリカが、一つの肉体を共有しているために起きる混乱だと捉えたわけです。

 不要な半身、すなわちマリカの要素を除いて、黄金律に忠実なラダゴンに統一すれば、黄金律の弱点を克服した「完全律」になると、彼は考えたのでしょう。

 金仮面卿もまた、ラダゴンと同じ黄金律原理主義なのです。

 当代きっての大学者かと思いきや、その結論は一神教の狂信者と大差ありませんでした。

 金仮面卿を崇拝した聖職者コリンは、灰と化した都ローデイルでこう言い放ちます。

コリン
・ようやく気付いたのですよ。先生は、ただの狂人でした。
 傲慢な誇大妄想を信じ込み、黄金律の完全を否定し、独りよがりな完全を為そうとする、信仰破綻者だったのですよ!
 はははっ、なんと滑稽なことでしょう。
 見てください。あれほどに探求した完全が、あのように燃えているのですよ!あーっはっはっはっ。

 いやいや、あなたも十分狂人ですよと、皆様は思ったことでしょう。その首輪からして。

 金仮面卿が提供する「完全律の修復ルーン」で、破砕したエルデンリングを修復した場合、律の時代エンドを迎えることができます。

 そこはラダゴンと金仮面卿が目指した、視座が振れない完全律の世界。すなわち、マリカの全否定です。

 注
 この記事は個人の考察であり、フロムソフトウェア社の見解ではありません。
 内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。

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