風花雪月考察 フレスベルグの裏切り (2)

フレスベルグ (2) ブログ

敵の敵は味方

 エーデルガルトは、確かに紋章によって人生を狂わされましたが、なぜ怒りの矛先が貴族社会に向かったのでしょうか?

 彼女を苦しめたのは、アガルタに強要された「血の実験」です。

 そうであれば、標的はアガルタであるのが自然に思えますが、実際は闇に蠢く者たちと手を組んでいます。

 この点は不可解に思えますが、エーデルガルトが置かれた立場を考えれば、政治・軍事の力学としてやむを得なかったのかもしれません。

 アドラステア帝国は、皇帝の血筋・フレスベルグ家さえ乗っ取られていますから、内部はガタガタの状態です。

 ここでアガルタと対決姿勢を見せると、帝国内で深刻な内乱が起きて、フォドラ三国志の中で立場を危うくするだけです。

 このため、まずはアガルタの力を利用してフォドラを統一し、既得権層である竜族(ナバテア人)の支配を終わらせて、その後にアガルタの影響力を排除する構想だったようです。

 「ナバテア VS アガルタ」という構図に、第三極として割って入るわけですから、いきなり二正面で戦うことはできません。

 最初は一方と組んで他方を倒し、その過程で勢力を伸ばして、最後は雌雄を決することを目論んだようです。

 この方向性はエーデルガルトではなく、腹心のヒューベルトが主導しました。

 エーデルガルトの強い反対を押し切って、アガルタと一時的に手を組むことを献策しています。

 こうした究極の提案を呑めるあたり、エーデルガルトにはやはり将器があるのでしょう。

ヒューベルト
・話とは、エーデルガルト様の伯父にして、帝国の摂政、アランデル公のことです。
 あの者は、今はエーデルガルト様の協力者ということになっていますが…
 実は独自の戦力を持って動いています。
 我々とは別の企みがあるようなのです。

 先生も覚えておいででしょう、5年前に策動していた者たちのことを。
 ソロンやクロニエ…彼らこそが、アランデル公の手先だったのですよ。

ヒューベルト
・…先生。彼らが貴殿の父(※ジェラルト)の仇だったというのは、重々承知しています。
 その仲間と手を組むとなれば、苦渋どころではない思いがあるでしょう。

 しかし、彼らは戦力として現状、不可欠。
 エーデルガルト様も強く反対しましたが…
 セイロス教団という恐ろしい者たちを相手取るに、帝国軍だけでは抗せません。

 アランデル公の率いる者たちは、教団に強い敵意を持っています。
 敵の敵は味方…ということですな。

ヒューベルトの遺書

 アガルタと一時的に手を組むとはいえ、エーデルガルトとヒューベルトは、闇に蠢く者たちを少しも信用していませんでした。

 その本音は、ヒューベルトが残した遺書に、明確に綴られています。

 彼は奇抜な言動が目に付きましたが、狂信者などでは決してなく、冷静な戦略眼を持つ軍師でした。帝国最高の人材だったと言えるでしょう。

ヒューベルト
・この手紙を貴殿が受け取ったということは、私は死に、きっと陛下も…。
 我が主が他者に降るはずもありません。
 貴殿に命があるのが残念でなりませんよ。

 さて、生き残ったからには、貴殿には我らに代わって後始末をしてもらいたい。
 闇に蠢く不穏の者たちを、討ち滅ぼさねばならないのです。

 モニカやトマシュを覚えているでしょう。
 彼らの仲間は、いまだ残っています。
 女神の眷属と地上の人間すべてに深い恨みを抱き、復讐の時を待っています。
 もしも捨て置けば、いずれ彼らは未曽有の災いをもたらす…それは確実です。

 貴殿らがメリセウス要塞を落とした際、私は彼らが発する魔道を感知しました。
 そこから割り出した彼らの本拠…シャンバラの場所を別紙に記してあります。

 彼らはまごうことなきフォドラの敵。
 そのこと、ゆめゆめお忘れなきように。
 最後に…大司教殿は宮城の隠し部屋にて、健やかに、とは言えませんがお過ごしです。
 隠し部屋の入り口は、この手紙を預けた者に伝えてあります。

 …私は主の勝利を信じている。
 だが、信じた上で敗北した場合の策も講じる。

 貴様らが世を統べるというのであれば、この私の予想を超える働きをしてみせろ。
 それがエーデルガルト様への手向けであり、勝者の義務だ…!

軍師の恋愛

 軍師ヒューベルトは、その恋愛偏差値の高さも、目を見張るものがあります。

エーデルガルト
・想い人…!? 貴方、まさか…!

ヒューベルト
・おや、心当たりがありますか?
 貴方様には特に秘密にしていたのですがね。

エーデルガルト
・いいから…誰なのか、教えなさい。

ヒューベルト
・…エーデルガルト様です。まさか他にいるとお思いで?

エーデルガルト
・……。ふふふふ…。

ヒューベルト
・くっくっくっく…。

あやうい歴史認識

 エーデルガルトは、彼女なりの信念を持って挙兵しましたが、その歴史認識にはやや疑わしいところがあります。

エーデルガルト
・教団は、フォドラを支配せんとする欲望のために教義を利用し、人々を欺いてきた。
 かつて帝国を分裂させて王国を作り、王国を分裂させて同盟を生んだのもそうだ。

 それらはすべて人々を争わせ、民の安寧を脅かすことで己の権勢を保つためだった。
 女神に救いを求める人々の信仰心を利用し、金を掻き集め、贅を尽くす偽善者たち…。

 彼らはフォドラを導くことなどできない。
 そんな信仰は、打ち砕かれるべきだ。
 故に、私は決断した!

 アドラステア皇帝エーデルガルト=フォン=フレスベルグの名において…
 ここにセイロス教団との開戦を宣言する!

 何回見てもシビれる檄文ですが、エーデルガルトが本当にこう思っていたなら、間違っていることになります。

 なぜなら、帝国を分裂させて王国をつくり、王国を分裂させて同盟を生んだのは、セイロス教会ではなく闇に蠢く者たちだからです。

 獅子王ルーグが独立戦争を起こしたのも、クラウス1世の暗殺で王国が分裂したのも、裏で糸を引いたのはアガルタでした。

 詳しくは別記事「闇に蠢くアガルタ」をご参照ください。

 一方、教会権力が腐敗して、大衆を食い物にしているという点は、おそらくその通りなのでしょう。

 中世ヨーロッパでも、聖書は聖職者たちの利権でした。あることないことを「神の教え」と説いて、自分たちに利益誘導していたのです。

 それを暴いたのが活版印刷術でした。

 この技術によって聖書が大衆化した結果、「そんな教えはないじゃないか」ということで、今までの適当な嘘がバレてしまったのです。

 事実を知った大衆の怒りは、やがて宗教戦争に結実して、大量の血を流すことになります。

誤解に基づく怒り

エーデルガルト
・…師は、フォドラ十傑の伝承を正しく知っているのかしら。
 人が創り出した武器である英雄の遺産を、セイロスが十傑を殺して集めたことを。
 力ある王だったネメシスを、セイロスが人間を操って打ち倒したことを…。

エーデルガルト
・それはセイロス教団が広めた偽りの歴史。
 本当は、ただ争ったに過ぎない。
 教団はネメシスが邪に染まったという偽りの歴史を広めた。本当は、ただ争っただけ。

エーデルガルト
・人の上に立つのが人なのか、それとも人ならざるものなのか…。
 結果は、セイロスが勝った。
 「白きもの」とその眷属が、このフォドラを支配したの。

 なぜそれを知っているかって?
 代々の皇帝に伝えられてきたからよ。
 セイロスに操られ協力した人間というのが、帝国の初代皇帝なのだから…。

 上記の発言にも、歪んだ認識が見られます。

 エーデルガルトは「セイロスが、人間が創った英雄の遺産を、十傑を殺して奪い集めた」と認識していますが、事実は異なります。

 解放王ネメシスが、ザナドに棲むソティスの眷属を殺して、アガルタの技術で、その亡骸から英雄の遺産を創りました。

 聖者セイロスは、確かにネメシスと十傑を倒して、英雄の遺産を手にしましたが、彼女からすれば、盗賊から同胞の亡骸を取り戻しただけです。

 エーデルガルトは、アガルタから「真実」の歴史を吹き込まれているため、ややアガルタ寄りの認識になっているようです。

 この誤解は、エーデルガルトの得物「アイムール」が影響しているかもしれません。

 英雄の遺産は、竜族の遺骸から次の三点セットを揃えなければ、使用することができません。

・心臓=紋章石
・骨=英雄の遺産
・血=紋章

 エーデルガルトが持つのは、セイロスの紋章と炎の紋章ですから、どちらもこの条件を満たすことができません。

 セイロスは本人が生きていますし、ソティスの心臓はベレトの体内にあります。

 つまり、アイムールは英雄の遺産ではなく、それっぽく見えるアガルタ製の武器なのです。

 ここから「英雄の遺産は人間が創った」と誤解したとしても、それは無理からぬ話でしょう。実は竜族の亡骸だということは、ナバテアの重要機密です。

セイロスの二面性

 ガルグ・マクでは慈愛に満ちた姿だった大司教レアは、戦士セイロスに戻ってから非情な言動を見せるようになります。

 この二面性がセイロスの怖さであり、また魅力でもあります。

 風花雪月に登場する22の紋章は、タロットカードの大アルカナを模していますが、タロットカードにはその解釈上、正位置(プラス面)・逆位置(マイナス面)という2つの視点があります。

 セイロスは、この視点の差が最もよく表れている人物の一人と言えます。

レア
・ベレト…よくも裏切ってくれましたね…。
 あなたは完全なる失敗作…私の手で、処分しなくては…!

レア
・セテス…フレン…お母様のみならず、あの二人までをも、奪うのですね。
 あなたは…私からすべてを奪うというのですね!

 もはやどれほど悔いようとも、その魂が救済されることなどありません。
 煉獄の谷を泳がせ、永劫の砂漠を歩かせ、身も骨も朽ち果てさせてしまいたい。

 必ずやあなたに代償を払わせます。償わせますよ、ベレト。
 …我らナバテアの名に懸けて。

レア
・今は、セイロスと呼びなさい。
 私はもう大司教ではありません。一人の、戦士です。

レア
・セイロス騎士団よ、撤退はありません!
 一人でも多くの敵を屠り、地獄へ送ってやりなさい!

レア
・…かつて私は、戦士セイロスとして、この地で邪王ネメシスを討ち取りました。
 そして今、奇しくもあの男と同じ剣を持つあなたと対峙している…。
 あなたが辿るべき運命もあの男と同じ…
 私の剣に貫かれ、血を吐いて死ぬのです!

レア
・市街に火を放ちなさい。攻め入る帝国軍を、煉獄の炎で焼き尽くすのです。

レア
・愚かな問いは不要です。いかな犠牲も払わねばなりません。
 私からすべてを奪っていくあの背教者を……
 この手で踏み潰してくれましょう。

 本性を見せたセイロスは、神でも聖職者でもなく、感情をむき出しにした人間と同じです。

 目的を果たすためなら、手段も犠牲も厭わないという姿勢を隠しません。

 一方、信じていたフレスベルグの血筋に裏切られたことは、いつまでも引きずっている様子です。

レア
・初代のアドラステア皇帝となった、フレスベルグの祖は…私を助け、支えてくれました。
 ネメシスの討滅に尽力してくれたのですよ。
 その裔を、このタルティーンの野で我が手にかけるとは…。

 確かにエーデルガルトは、高邁な理想を持っているとはいえ、アガルタの手駒という一面がありますから、セイロスとしては、納得のいかない裏切りに見えたのかもしれません。

 セイロスの一生は、ソティスとアガルタが起こした抗争の尻拭いとも言えました。

 セイロス教会も、一部に腐敗があったとは言え、基本的には征服や支配というより、争乱を防ぐ安定を志向していました。

 セイロスが見せた欲は、「母に会いたい」だけです。

 そのために禁忌を犯したのは罪ですが、それ以外は驚くほど清廉な支配者だったのかもしれません。

モヤっとした理想

 エーデルガルトは、少なくない誤解に基づいて争乱を起こしましたが、思い描く理想も論理破綻に近い代物でした。

 たとえ竜族を駆逐して、貴族制度を廃止したとしても、支配層が新しくなるだけです。大衆や弱者を救うことには、おそらくなりません。

 ディミトリとの問答を見る限り、エーデルガルトの関心は、目の前の被害者を減らすことにあったようです。

 それ自体は立派なことですが、実は大したビジョンがないとも言えます。今ある構造を破壊することしか考えていません。

 救いたいはずの弱者に関しては、破壊の後も「弱者のままでいるのは甘えだ」と冷淡に断じています。

ディミトリ
・君は、なぜこんな戦争を起こした。
 無駄な犠牲を生むような方法を取らずとも、国家の在り方を変えることはできたはずだ。

エーデルガルト
・それが最も犠牲が少ないからよ。わからない?

ディミトリ
・…わかるものか。現にこの戦いで、数え切れぬほどの人が命を落としてきた。

エーデルガルト
・変革に時間がかかるほど、今の歪んだ世に産み落とされる犠牲者は増えていくわ。
 戦争の犠牲者と、それとを天秤にかけて、私は前者を生むことを選んだ。
 それが最善の道だと、私は思っている。

ディミトリ
・戦禍に喘ぐ民衆の顔を見てもなお、彼らに未来のために命を投げ打てと強いるのか。

 弱い者の、持たざる者の悲鳴に耳を貸さず、戦に血道を上げ続ける…
 そんなやり方では、結局、強者が弱者を支配する構造を変えることはできない。

エーデルガルト
・そんなことはない。その構造を、私は破壊し尽くそうとしているのよ。
 それでも弱者が変わらず弱者であろうというのであれば、それは、ただの甘えだわ。

 多少の腐敗があるとは言え、セイロス教を潰してしまえば、社会規範や民衆の拠り処は消えてしまいます。

 宗教は悪くすれば洗脳ですが、一方でその国の民にとっては、道徳・常識・生活の基盤でもあります。

 優れた為政者なら、別の国教を定めるでしょうが、それも下々からすれば利権が入れ替わるだけ。むしろ旧教と新教の存在が、国民に埋めがたい溝を生みかねません。

 結局、科学の発達によって、宗教の比重を相対的に弱める以外に、健全な発展の道はないのです。

 単に現状を破壊して、信仰を否定することしか考えていないエーデルガルトを、ディミトリは「独善」と指弾しています。

ディミトリ
・君のような強い人間ならば、そんなことが言えるのかもしれない。
 だが、それを他者に強いるな。
 人は、君が思うほど強い生き物じゃない。

 信仰に縋らねば生きられぬ者も…
 生きる目的を失ったまま、歩き出せない者もいる。
 君のやり方では、彼らは決して救えない。
 それは強い者のための、強い者のやり方だ。

エーデルガルト
・ふふ…私が強い者だと言うのね、貴方は。
 信仰に縋ろうと、女神は応えてくれない。目的を失ったまま、更に多くの者を失う。

 私は、そうして死んでいった者のうちの、1人だというのに。
 だからこそ私は、弱き者に代わって、この世界を正す必要がある!

ディミトリ
・…君は、女神にでもなるつもりなのか。
 心折れた者から、立ち上がる力も奪うのか。

 世界の在り方を変えるのは君主ではない。
 この大地に生きる、一人ひとりの人間だ。
 己の正義と理想とを、民草の一人にまで押しつけるのは…それは、ただの独善だ。

 注
 この記事は個人の考察であり、任天堂及びインテリジェントシステムズ社の見解ではありません。
 内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。

【関連記事】 フレスベルグの裏切り (1)
【関連記事】 オープニングが意味すること
【関連記事】 聖者セイロスと四聖人
【関連記事】 風花雪月の元ネタ (1)
【関連記事】 風花雪月の元ネタ (2)
【関連記事】 フォドラの関ケ原
【関連記事】 闇に蠢くアガルタ (1)
【関連記事】 闇に蠢くアガルタ (2)
【関連記事】 主人公は人造人間

コメント