戦車の試練
第2部 戦争編は、第1部から一転して、緊迫した展開になります。
白髪鬼ベルトランが、ブレザラント王国の新しい王として、軍勢を率いて登場した時、ゾクゾクした人は多いでしょう。
しかし、彼が王に即位した経緯は、今ひとつ明らかはありません。今回はこれについて掘り下げてみます。

まず、彼が闘技場地下の牢に繋がれ、「戦車の試練」という極刑を受けていた頃に遡ります。
戦車の試練とは、闘技場の剣闘で勝ち続け、その報酬として得た黄金で、戦車が一杯になるまで満たすことを求められる試練です。
この過酷な要求をこなせば、晴れて自由の身になれるけれど、途中で死んだらそれで終わりという、ある意味で死刑より厳しい刑でした。
ボナパルテ
・ベルトランがその身の潔白を証明し、自由を得るための条件は、軍神マーズの戦車を戦いで得た黄金で満たすこと。
白髪鬼は、これまでの5年の間に、すでに1,000に近い数の勝利をあげているそうです。
そもそも、ベルトランが戦車の試練を課された理由は何でしょうか?
それは祖国アラゴ王国において、王殺しの濡れ衣を着せられたからです。ハスドルバル王の暗殺が、彼の凶行ということにされました。
ベルトランは、親友と信じていたギルキルスに裏切られ、罠にハメられたのです。
そして、それを画策した黒幕は、宰相マルティラとしてアラゴ王国に取り入った、バロールの娘マリアでした。
ダグザ帝国がラクシャ導師とイリアナによって内部崩壊したように、アラゴ王国はマリアによって傀儡と化していたのです。

シドニア事変
ベルトランは、ギルキルスに頼まれて、彼の代わりに紛争の地カッシートへ出向きました。
レダの父親・キジェルモが治める領都です。
ベルトランは当初、話し合いで紛争を収めるつもりでしたが、マリアの陰謀によって、意図的に戦争を起こされました。
このため、不本意ながらベルトランは、領都カッシートを制圧して、キジェルモを討ち取ることになります。いわゆる「シドニア事変」です。

ベルトラン
・…あの時、俺はギルキルスに頼まれ、奴の代わりに作戦に参加することになった。
攻撃が始まる直前、キジェルモ殿と会談を行ったが、進展しかけたところで…
シドニア陣営から放たれた一本の矢(※レヒネルが故意に放った矢)によって、一気に戦端が開かれることになってしまった。
ベルトランがシドニア事変に巻き込まれている時、彼の不在を狙って、国王の暗殺が行われました。犯人はマリアとギルキルスです。
そして、帰還したベルトランを、王殺しの犯人に仕立て上げ、投獄して死刑を宣告しました。
ベルトラン
・俺は無力感に苛まれながら王都に戻った。
そこで待っていたのは、国王の遺体だった。俺は国王殺しの大罪人として捕らえられた。
何がなんだか分からなかった。
やがて、俺は自分が罠に嵌(は)められたことを知った。
自分が親友だと思っていた男…あの、ギルキルスによって。

ボナパルテ
・白髪鬼の正体はベルトランという男で、元々アラゴ王国の将軍でした。
非情に優秀で将来を期待されており、アラゴの王女(※アスワン)とは恋仲だったとか。
例のシドニア事変にも関与していたが、直後に国王を暗殺した咎で捕らえられ…
処刑の寸前に救い出され、神威法王の裁きにより、「戦車の試練」という極刑を与えられたと。
この不自然な展開に、疑問を抱いた者もいたようですが、封殺されてしまいました。
権力の上層部が仕組んだことであり、誰も逆らえなかったのです。
ボナパルテ
・王女との結婚が国王から認められなかったことが、凶行の原因というのがもっぱらの噂ですが。
セオドラ
・恐らく陰謀だろうな。いくらなんでも短絡的過ぎる。
よくそれで周囲が信じたものだ。それとも恐怖によって疑念を無理やり封殺したか。
ボナパルテ
・陰謀だとすると、黒幕はアラゴ王国でも最高の権力を握る者、ということになりますな。
一方、ギルキルスは新しい王となり、宰相マルティラの傀儡として、アラゴ王国を支配することになりました。
親友を蹴落として、ハスドルバル王を殺しておきながら、その娘のアスワンに愛されたいと考えるギルキルスは、相当なサイコパスと言えるでしょう。

白髪鬼
死刑になるはずだったベルトランを、帝都ダグシオンに移送したのは、軍神マーズによる要請でした。
マーズは死刑の代わりに、ベルトランに「戦車の試練」という極刑を与えます。
そこには、ベルトランの処断を止めることの他に、もう一つ含みがありました。
それはベルトランが、ブレザラント王国の王に相応しいか否かを見極める、試練としての意味合いです。
土壇場でベルトランを救ったマーズですが、彼の側にも思惑があったのです。
なぜベルトランを救ったのか、そしてブレザラント王の候補として見たのかは、後で詳しく説明します。
処刑は免れたベルトランですが、しかし一連の事件による心労と、過酷な試練の日々によって、20代の若さで総白髪になってしまいました。
一見して別人のような見た目になり、闘技場の「白髪鬼」として知られるようになります。

風花雪月においても、エーデルガルトやリシテアのように、若くして総白髪になった気の毒な人物がいました。
万紫千紅では、ベルトランが過酷な業を背負わされたようです。
ブレザラントの熱視線
ダグシオン大剣闘祭の開幕時、闘士グルジンと白髪鬼ベルトランの特別試合が組まれました。
闘士グルジンは、ブレザラント闘技場からの刺客と紹介されています。
彼は意味深な言動をしながら、その後に一切登場しません。
これはおそらく、ベルトラン編が割愛されたことの影響でしょう。未回収の伏線のような形になりました。
グルジン
・少しはやるようだが、まだまだだな。お前(※ベルトラン)の負けだ、小僧。
…お前は生き残るがいい。自分に何が足りぬのかを問い続けろ。

グルジンは、ベルトランの資質を見るために剣を交えたのです。
つまり、ブレザラント王国の関係者、かつマーズの知己ということになります。
一方のベルトランは、自分が王候補と見られていることなど、当然ですが知りません。戦車の試練を果たすことに必死です。
もったいぶらずに答えを言いましょう。
グルジンの正体は、建国の王ブレザの子(マーズの孫)にして、かつてのブレザラント王・グラディウスです。
ボナパルテ
・あのグルジンという男、ブレザラント王国の戦士ということですが。
風貌と体さばきから推測するに、すでに老練の域であること、間違いございません。
ということは、これまで長い期間、戦士として活躍してきた者であるはず。
それが、あれほどの者の噂話が一切、ワタクシの耳に届かないとは奇妙なことのように存じます。
トビヤス
・自分が聞いたことがなくて恥ずかしいと白状してしまえば潔かろうに…。
ボナパルテ
・なっ…!? 違うぞ、トビヤス。ワタクシが言いたいのは…
セオドラ
・偽名を使っている、と言いたいのだろう。奴は身分を隠して試合に出ていると。
セオドラ
・あのグルジンという男と白髪鬼、二人とも恐らくその技の源流が同じところにあるように思える。
表面上は異なるものに見えるが、足の運び方、呼吸…私の目はごまかせん。
セオドラ
・わからん。だが、この特別試合、何らかの意味があるに違いない。
グラディウスは、神殿でマーズに謁見した時に、雑談のように語られる情報です。
ストーリーまたはクエストで登場する名前なら、もう少し気づきやすかったのかもしれません。
ブレザラント王国を建国したのは、マーズの子・ブレザでした。グラディウスは、ブレザの子(マーズの孫)に当たります。
マーズによれば、グラディウスは「王座はとうに退き、既に老成の域に達しているが、その武は今だに健在」とされています。

混乱の歴史
ブレザラント側が、ベルトランに注目したのは、ブレザラントが王不在のまま混乱していたからです。
ボナパルテ
・彼の国(※ブレザラント王国)は先王が倒れ、後継者も立てられず、長きに亘り混乱が続いているとの噂でした。
統率力の低下を期待していたのですが…
最近になって新しい王(※ベルトラン)を擁立したとのこと。
武を重んじるブレザラントの地は、強力な王が存在しない時期は、分裂しがちになるようです。
彼の国には、かねてより混乱の歴史がありました。
ベラフィ
・この場に集った者たちに、今、私は尋ねたい。
皆は「モンス動乱」をご存知か?
…そう、それはブレザラント王国で巻き起こった、国を真っ二つに割ったお家騒動。
時はあの悪名高き黄道帯事件の混乱からなお冷めやらぬ、ダグザ歴1232年。
第4王子ヘルメリックは、ケトール族の協力を得て城塞都市モンスにて挙兵。
マリウス王の構える王都ブレストンに対して進軍を開始した。
そして、ここパラス大橋にて、両軍は激突する。
ベルトランを支える仲間にゲイツがいますが、彼の正体はブレザラントの騎士です。
また、ベルトランを兄貴と慕うゴライアスは、ブレザラントの部族・ケトール族の戦士です。
実は、ブレザラント関係者で固められていたわけです。
ゴライアス
・どうせこっちは剣闘士上がりで、あんたはお偉い将軍様だ。
ゲイツ
・…私が身分を偽って、闘技場に出入りしていた話か。
すまない。馬鹿にするつもりはなかった。王を見定めるには、必要なことだった。
ゴライアス
・兄貴(※ベルトラン)が言ってたぜ。
前から旦那は身一つの感じがしなかった、軍人だろうと思ってたってな。

ゲイツ
・ベルトランを王座に就かせ、民に希望をもたらすことができたのは、我が生涯の誇りだ。
ゲイツ
・私もグラディウス様の豪短さにはよく困らされた。
勝者の天冠
それでは、肝心のベルトラン自身は、ブレザラント王国とどう関係があるのでしょうか?
ここでは彼の血筋、すなわち天冠が重要なヒントになります。

ベルトランは、勝者の天冠(ダフネルの紋章)を持っています。
これは軍神マーズの系譜。つまり、ベルトランはマーズの血を継いでいます。カーラとレダのような関係なのです。
カーラが殊更レダを可愛がったように、マーズもまた自身に連なるベルトランを気にかけたのかもしれません。
寸でのところでベルトランを救ったのは、彼がマーズの子孫だからです。
カーラ
・妾(わらわ)は、自分の血に連なる其方(※レダ)に対し、特別な想いを抱いておる。
其方を見ておると、かつてのコーエンの姿が浮かぶことがある。
妾としては…其方に出来る限りの事をしてやりたいと考えている。
マーズに割当てられた大アルカナは「7. 戦車(Chariot)」であり、「戦車の試練」の名はここから来ています。
この系譜を頭に置けば、次の発言の意味が理解できるでしょう。
ベルトラン
・…!? 俺の血が…あの男(※グルジン)と共鳴している?
グラディウスはマーズの孫であり、かつ王位に就いた嫡流ですから、勝者の天冠があるのは間違いありません。
二人に流れるマーズの血が、共鳴したというわけです。

女傑ブルンヒルド
アラゴ王国の将軍を務めたベルトランに、なぜ遥か南方に位置するブレザラント王国の血が入っているのでしょうか?
その答えは、ベルトランの祖母にあります。
カストール
・お前さんは、なかなか変わった技を使っているな。
それは見た所、ブレザラント王国に伝わるものに似ているようだ。
ベルトラン
・うちの家に古くから伝わっていた技だ。当主だった祖母から、俺が受け継いだ。

詳細は分かりませんが、何らかの事情によって、ブレザラント王族の女性が、アラゴ王国に移住したようです。
断片的ではありますが、ヒントになる情報が一つありました。
赤き斧のハンノ
・そうだ、忘れもしない。我が弟マゴの命を受けたあの女だ…
ブレザの妹ブルンヒルドの刃を受け、俺は生命を落とし、玉座を奪われたのだ…!
冥将として召喚された、かつての英雄ハンノ王が、過去の恨み言をこぼしています。
ハンノはドレイクの財宝に心を侵食されて、晩年は乱心したとされます。
狂ったハンノ王を討ち取ったのが、ブレザの妹・ブルンヒルドでした。彼女はハンノの弟・マゴとの関係が示唆されています。

ベルトランの血筋は、おそらくブルンヒルドから連なるものでしょう。
女傑の血が、時を経て祖国へ還ったというわけです。
尺の都合で割愛されてしまったベルトラン編。是非とも、何らかの形で世に出て欲しいものですね。
注
この記事は個人の考察であり、任天堂及びインテリジェントシステムズ社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
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