万紫千紅考察 ダマスカルの8月事件 (1)

ダマスカルの8月事件 (1) ブログ

悲劇の民族

 今回は万紫千紅における大きな謎の一つ、ダマスカルの8月事件について考えてみます。

 この事件は、ダグザ帝国がダマスカル王国を滅ぼし、ユ・ファスをダグザの大釜で処刑したという、重大な事件であるにも関わらず、その詳細が謎に包まれています。

 数少ない情報を取り上げて、推測してみましょう。

 まず、ダマスカル王国をおさらいします。

 ややこしいのですが、次の民または国は、すべて白き卵の民の流れを汲んでいます。広義では同族ということになります。

・白き卵の民
・ダマスカル王国
・森の民
・ハル・ハリ族
・サラミス王国

フェザーンの戦い

 帝国歴551年、「フェザーンの戦い」が起こりました。

 ダグザ帝国が、白き卵の民の里・コンロンを攻め落として、10万に及ぶ捕虜を帝都ダグシオンに連行し、ダグザの大釜で大量処刑します。

 この虐殺に心を痛めたユ・ファスが、子供約5,000人の助命を嘆願して、文字を捨てることを条件に救い出しました。

 この子供たちがキュベレーの地に逃れて定住し、そして興した国がダマスカル王国です。

 一方、白き卵の民は、フェザーンの戦いで全滅したわけではありません。

 少数ながら地下深層に避難した者は助かり、そのままコンロンの里で細々と生きていくことになります。

 ただし、ダグザ大帝が巨壁を築いて閉塞したため、砂漠の中に取り残されたような形で、劣悪な環境を強いられることになりました。

 フェザーンの戦いは、白き卵の民に過酷な運命を課した、非常に痛ましい事件でした。この時の恨みを果たさんと、復讐の人生に染まったのがコウカです。

ダマスカルの8月事件

 約300年の後、帝国歴881年に、今度は「ダマスカルの8月事件」が起こります。

 ダグザ帝国が、将軍ガイウスを派遣して侵攻し、ダマスカル王国を一夜にして滅亡させました。二度までも滅ぼしたわけです。

 この時、離散して散り散りになった生き残りが、森の民と呼ばれるようになります。

 彼らは国としての体は成しておらず、部族や氏族のような形で、森と共生していたようです。

 そこで登場したのが英雄マハマドゥであり、彼はドレイクの財宝の力を借りて、バラバラだった森の民をまとめ上げ、サラミス王国を建国しました。

トロイア
・彼(※マハマドゥ)は大地の精霊から強靭な右腕を授かったんだ。
 マハマドゥはたちまち周辺の部族をまとめ上げ、森の部族の大集団を完成させた。
 それがサラミス族であり、お前の国サラミスの前身なのさ。

セオドラ
・マハマドゥの伝説なら聞いたことがある。サラミス王家の祖でもあるからな。

 ただし、森の民すべてを糾合したわけではなく、一部はハル・ハリ族として分立することになりました。

 ハル・ハリ族は、憎きダグザ帝国の敵に当たるバロールを信仰しました。

 サラミス王国はそのまま継続して、現女王セオドラの代に至っています。

 ユ・ファスを敬愛する一方、平時でもダグザ帝国を警戒していますが、それは上記のような経緯があるからです。

ヌッツォ先生に聞いてみよう

 おさらいがてら、ハル・ハリ族の戦士ヌッツォの発言を見てみましょう。分かりやすい歴史講義になっています。

ヌッツォ
・ダマスカル王国について知るには、まず、白き卵の民を知らねばならぬ。
 はるか西の地の砂漠(※クロノス砂漠)の片隅(※コンロン)に暮らしていたのだという。

 その白き卵の民とダグザ帝国の間で、あるとき大きな戦い(※フェザーンの戦い)が起こった。
 天も地も割れるような長く激しい戦いの末に、白き卵の民はついにダグザに敗れた。

 10万人もの人間がダグシオンに連れ去られ、「ダグザの大釜」で残酷に処刑されてしまった。
 それに心を痛めた女神ユ・ファスは、ダグザ大帝に彼らの助命を懇願した。
 そして、虜囚のうち幼い男女5,000人が助命されることとなった。

 ユ・ファスは自ら彼らを率いてこの地(※キュベレー)に移住させ、土地を開拓し、作物を育てる様子を見守った。
 そして、それはやがて、ダマスカル王国という国家として、この地に芽吹いたのだ。

 …だがそれも、結局ダグザ帝国によって滅ぼされてしまった(※ダマスカルの8月事件)。

 王都は帝国軍の大軍に包囲され、攻め込まれた。街も城も、ユ・ファス神殿も破壊された。
 帝国の兵士に慈悲などなかった。王族は皆捕らえられ、断首に処された。
 逃げ惑う子供も、男も女も、年寄りも…
 あらゆる者が捕らえられ、殺され、街が焼かれた。

 ユ・ファスが処刑されたのもその頃だ。
 そのこともあり、我々はダグザの神々を憎んでいる。

 だが、我々にとってユ・ファスと、彼女の父たる魔人バロールだけは特別なのだ。

 特に、かつてダグザを凌ぐほどの力を誇ったと言われる魔人バロール…
 それは、我ら力を信仰するハル・ハリ族で特別な崇拝の対象になっている。

ダグザが恐れた文明

 ダグザ大帝が子供5,000人を助命するに当たり、文字を捨てることを条件にしたのは、白き卵の民が持つ高度な文明を恐れたからです。

 とりわけ、彼らが持つ奥の手・光の杭を恐れました。

 光の杭は別記事で解説しますが、ひと言でいえば、宇宙にある衛星から放つ、超重金属弾に重力を乗せた遠隔射撃です。

 これがかつて神祖ソティスをも手負いにし、大厄災の引き金を引くことになりました。

 母親が何より怖いダグザ大帝は、過去のトラウマが忘れられません。

ダグザ
・あれ(※光の杭)と同じものを儂は見たことがある…
 そう…遠い、遠い昔のことだ。神祖が世界を焼き尽くした、あの時(※大厄災)に…

 そうか…まだあれを使うか、人間どもよ…
 それは、神祖の眠りを妨げる、この地上にあってはならない危険な力なのだ。
 そうだ…かつての過ち(※神祖を起こして、大厄災に繋がったこと)が二度と繰り返されてはならない…

 それ故、ダグザ大帝は文字を捨てろ、文明を捨てろと命じたのです。

 ダマスカルの後継・サラミスは、その要求を、大恩あるユ・ファスの言いつけとして、今に至るまで守っています。

セオドラ
・文字は嫌いだ。私たちは遠くダマスカルの時代から、ユ・ファス様より文字の使用を禁じられている。

トロイア
・お前は疑問に思ったことはないのかい?
 どうしてユ・ファス様がそんなことを命じなさったのか。

セオドラ
・…文字が人を堕落させる、悪しきものだからではないのか?

トロイア
・違うよ…ダグザ大帝にとって都合が悪いからさ。
 ダグザは卵の民たちの知識を恐れていたんだ。
 ユ・ファス様がお前たちの祖先に文字を捨てるように命じなさったのは、そこまでしない限り、子供たちといえども命を救うことをダグザが許さなかったからさ。

 文字を持たなかったが故に、ダマスカルの8月事件は謎に満ちています。

 一切の記録が存在しないからです。

セントリオン
・ダマスカルの8月事件…
 発端が何だったかは、神殿の記録には一切残されていません。
 また、ダマスカル王国は文字を持たなかった故、まとまった記録が存在していなかったのです。

歪んだ歴史観

 ダグザ帝国が、白き卵の民を迫害し続けた歴史は、その多くが謎に包まれています。

 ダグザ帝国側には、多少の情報が残っていますが、勝者が都合よく描いたストーリーですから、まったく当てになりません。

 日本の大東亜戦争に関する歴史と同じて、真実からはかけ離れています。

 適当なことを述べていますが、一応目を通しておきましょう。

 この歪んだ歴史観は、そのまま白き卵の民に対する、人々の差別意識に繋がっています。

ベラフィ
・誰しもその名は知っておろう。ダグザ歴551年、フェザーンの地で巻き起こった戦いを。
 クロノス砂漠、それは灼熱の砂の海。あらゆる生者を拒み続ける、死の大地。

 そこに眠る、山よりも巨大な卵が、あるとき目を覚ましてしまった。
 恐ろしい災いを呼び起こす、呪われた者共が、ついに地上に這い出してきたのだ!

 彼らを止めるべく、我らがダグザ大帝は、討伐軍を率い、大いなる親征を開始した。
 そして砂漠の地で、ダグザの地の存亡を賭けた戦い、フェザーンの戦いが巻き起こる…!

ベラフィ
・ダマスカルの8月事件…
 それは輝かしき我らが帝国史において最も忌まわしき出来事。

 呪われし国ダマスカル。
 それは、ユ・ファスの慈悲により、この世に産み落とされた忌み子。
 この国の記述は少なく、謎が多い。
 皆の中には、その国家としての姿を想像できない者も多かろう。

 かつて栄華を誇ったダマスカル王国は、ダグザ大帝に対し、突如反旗を翻した。
 ダグザ大帝はこれに怒り、ガイウス将軍を派遣し、10万人の大軍団によって、呪われし王国ダマスカルをこのダグザの地から完全に消し去ることを命じたのだ!

フェザーンの真実

 ダマスカル王国は、文字が持たなかったが故に、ダマスカルの8月事件は闇の中です。

 一方、白き卵の民は、高度な文明を誇っていたため、フェザーンの戦いに関する真実は、ジョカの記録として残っています。

 今回のテーマとはズレてしまいますが、資料として載せておきましょう。

 勝者たるダグザ帝国が伝える「歴史」が、いかに出鱈目かが分かります。

フェザーンの戦い
・地上のすべてを破壊し尽くした、あの忌まわしい大厄災の後、ジョカが砂漠に硬着陸を果たし、地上に根を張ったときから数えておよそ2,250年が経過した頃、ジョカの未来を決定づける事件が起こる。
 ダグザ帝国においてフェザーンの戦いと呼ばれる軍事衝突である。

 ジョカは、ダグザ帝国に発見され、派遣された総数30万の軍団による苛烈な攻撃に晒される。
 気候変動により周辺の砂漠の緑化が進行した結果、気候操作装置による人工砂嵐の目隠しが弱まったことが、我々が帝国に補足される要因となったことは疑いようがなかった。

 当初、帝国軍はジョカ居住区の強固な外殻を突破することができず、膠着状態に陥った。
 だが、一頭の巨大な竜(※空を暗く覆うもの=竜に顕現したダグザ大帝)が出現し、恐ろしいまでの力で外殻を破壊し、内部に帝国軍が雪崩れ込んできた時から、状況が一変してしまった。

 数の不利は言うに及ばなかったが、我々はあの巨竜に対抗する術を持っていなかった。
 アルテミス(※光の杭)ならば可能性があったかもしれないが、我々の頭上を飛翔する巨竜に対し、アルテミスを使うことは、自らに神の杖を振り下ろすのと同義であり、その時の私(※ゼノン)にはそれを命じる勇気はなかったのだ。

 戦いの混乱の中で、気になる報告が混じっていた。敵の中に、500年ほど前にジョカから失踪したシュキオンの姿があるのを見たというものだった。
 まさか、調停者である彼が我々を裏切るようなことがあるなど、到底信じられないが…。

 戦いの中で、戦闘隊長であるロクサーナをはじめ、多くの船員たちが倒れていった。
 地獄のような混乱の果てに、我々はついに降伏する道を選んだ。

 居住区の表層部分にいた多くの同胞たちも連れ去られてしまった(※ダグシオン虜囚)。
 生き延びたのは、深層に避難していたわずかな者たちだけだ。

 この砂漠の厳しい環境の中、生命維持装置の大半が破壊され尽くした現在のジョカで、生き残った同胞たちをいつまで生き永らえさせることが出来るかはわからない。
 …だが、彼らの命を未来へ繋いでいくことは、ジョカの船長たる私に課せられた使命なのだ。

 つづく。

 注
 この記事は個人の考察であり、任天堂及びインテリジェントシステムズ社の見解ではありません。
 内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。

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コメント

  1. JamesD より:

    『風花雪月』の「光の杭」は、ムービーの描写や「発射軌道から地下都市シャンバラの位置を特定した」という設定を見る限り、地上(地下サイロ)から撃ち上げる弾道ミサイル(ICBM)のような兵器に見えますね。そのため、宇宙空間の衛星から直接撃ち込む軌道兵器として描かれた『万紫千紅』の「アルテミス(アルテミスの矢)」とは、同じ技術体系でも仕組みが異なる別物のように思えます。