生き証人トロイア
前提情報を整理したところで、余談から本題(ダマスカルの8月事件)に戻りましょう。
文字を捨てたダマスカル王国には、記録が残されていません。
しかし、生き証人はまだ残っていました。それは最初の調停者トロイアです。心核を持つ彼女には、数千年の寿命があります。
トロイア
・バロールは苛烈な神だったと伝えられる。
何がきっかけだったかは分からないが、他の神々に戦いを挑んだバロールは最終的に殺され、バロール神殿の墓所に入れられたのさ。
墓所はダグザ大帝によって厳重に封印され、それですべては終わったはずだったんだが。
何者かによってダグザの封印が破られ、遺骸が持ち出されてしまったのさ。
セオドラ
・まさか、そのようなことがあったとは…
では、ダマスカル王国の滅亡は…?
トロイア
・神殿はひた隠しにしているが、バロール神殿の封印が破られたことと無関係ではないはずさ。
ある時、海賊ドレイクが物々交換の目的で、森の部族の元に遺骸を持ち込んだ。
ドレイクも元々はダマスカル王国の出であり、森の部族とは親しい存在だったからね。
彼は、これがバロールの遺骸だということには、始めから気づいていたようだった。
森に暮らすダマスカルの末裔たちにとって、大恩あるユ・ファスの父君であることに加え、憎きダグザ大帝の大敵だったバロールは特別な存在だ。
皆がそれを欲しがったのさ。
そうして遺骸は細かく分けられ、様々な部族に分配されていった。
マハマドゥが腕を得たのも、そうやって右腕と巡り合ったからなのさ。

トロイアによれば、ダマスカル王国の滅亡は、バロール神殿の封印が解かれて、バロールの遺骸が盗まれたことに関係しているようです。
そうであれば、バロールの復活を企てる勢力が黒幕ということになります。
言うまでもなく、バロールの娘たちでしょう。
獅子身中の虫
クレールによれば、ラクシャ導師がダグザ神族に取り入ったのは、遅くとも1,400年前からです。建国とほぼ同時期に現れて、延々と内部工作していたわけです。
クレール
・まさか、ラクシャは始めからこれ(※バロール復活)を狙って僕たちに近づいてきたっていうのか?
1,400年前、自分の正体を偽って、僕たちの前に初めて姿を見せた時から?
いやもっと昔…もしかすると、兄さんとユ・ファスが出会ったその直後から?
ダマスカルの8月事件が起きた881年には、ダグザ大帝は既にフラーマに侵されていました。正常な判断力を失っていた可能性があります。
ダグザ大帝からすれば、ダマスカル王国を潰すことには、次のようなメリットがあります。
・危険視している白き卵の民を殲滅できる。
・フラーマを大量に抽出できる。
・敵対するバロール側の勢力を滅ぼせる。
真相は描かれていませんが、こうした打算を利用される形で、ミトラス修道会の口車に乗ってしまったのかもしれません。
アウロラによれば、ドレイクの財宝が出回ったのは、約500年前からとされています。
アウロラ
・ドレイクの財宝と呼ばれるものが歴史上に現れたのは、およそ500年前から。
海賊ドレイクが、どこからか手に入れた財宝の力で、ダナン海の支配者になったことに由来するの。
ダマスカルの8月事件が881年、第1部の時点で1449年ですから、時期的にはおおよそ合っており、齟齬はありません。
冒険王の火遊び
私は少ない情報を手掛かりに、あれこれと考えて悩んでいたのですが、意外なところで経緯を知りました。
タリムーンとセオドラの支援会話です。これはストーリーに含めるべき情報だと思いますが。

タリムーン
・ダマスカル…ね。面白い話をしてやろうか?
冒険王ヴァンダル、最後の冒険のお話さ。
セオドラ
・ヴァンダル…お前の父親が、ダマスカルとどう絡むというのだ?
タリムーン
・むかーしむかし…親父は一人の美女に唆され、嘆きの島と呼ばれる場所へ赴いた。
だが実は、そこはバロールの島だったのさ。
あいつは自らの血で墓の封印を解いちまった。
そうして、愛する妻マリアに贈ったのさ。バロールの遺骸って宝をな。
セオドラ
・…お前の父親が墓を暴いたというのか。
そしてダマスカルが、その咎めを受けたのだな。
タリムーン
・そう、親父の火遊びが、あんたのご先祖の国を滅ぼした…
どう思う、俺たち親子のこと?
セオドラ
・何も思いはせん。お前にも、お前の父親にも。
タリムーン
・ほう? 思ったより反応薄いな。殴られることも覚悟してたんだが。
セオドラ
・父親の愚行を詫びるでもなく、何のためにそのような詭弁を弄する?
タリムーン
・詫びはしないさ。気持ちはよくわかるんだ。好奇心は冒険家の性だからな。
だがまぁ、俺としては親父の行いに、思うところがまったくないわけでもない。
それに立派な女王様が、俺みたいな人間をどう思うかも、気になったのさ。
セオドラ
・商人風情が我が器を試そうとは、見くびられたものだな。
お前の父親など単なる口実でしかあるまい。あの神威大帝ダグザにとってはな。
ダマスカルはユ・ファス様の寵愛を受けし王国。
ダグザはそれを疎み、破壊を望んだ。
許されぬというなら奴だ。もっとも、それもすでに斃(たお)れたがな。

なんと、タリムーンの父親・冒険王ヴァンダルの火遊びが、8月事件のきっかけだったのです。
ヴァンダルは、心を寄せた美女マリアの気を引くために、バロール神殿の封印を解いて、遺骸を持ち出したのでした。
マリアはバロールの娘です。素直に考えれば、彼女がヴァンダルを利用したのでしょう。
ヴァンダルが封印を解除できた理由は不明ですが、封印を施したダグザ大帝の血を彼が引いていることが、どうやら関係しているようです。
マリアの姉・ラクシャ導師は、この管理不手際を口実にして、ダグザ大帝を唆したものと思われます。
そして、フラーマ中毒に陥っていた大帝は、得体の知れない白き卵の民を殲滅した上、大量のフラーマを飲めるなら一石二鳥とばかりに、ダマスカル侵攻に踏み切ったのではないでしょうか。
このあたりの真相は分かりません。追加DLCで語られるのを期待したいところです。
3匹目のドジョウ
ダグザ大帝は、白き卵の民を執拗なまでに敵視し、同時に大量のフラーマを渇望しました。
2匹目のドジョウでは飽き足らず、3匹目まで狙っています。
ダグザ大帝
・あの地虫(※アガルタ、及び元アガルタの白き卵の民)たちとその子孫を、わずかでも取り逃がした儂の誤りであった。
此度、そのすべてを滅ぼし、過ちの一切を正さなければならぬ。
ラクシャよ、我が名において直ちに布告を出せい!
ダグザ帝国は、サラミスと称する蛮族が領土を不正に占拠する状況を断じて認めぬ。
サラミスに対して殲滅戦を仕掛け、全ての痕跡をこのダグザの地から消し去ると!
よいか皆のもの、これは聖戦である!即刻、支度を開始せよ!

551年にコンロンを攻め落とし、881年にダマスカル王国を滅ぼしたダグザ大帝は、1454年に今度はサラミス王国を狙いました。第2部 戦争編で描かれる物語です。
しかし、サラミス・ブレザラント連合に敗れたダグザ大帝は、なんと自国民(帝都ダグシオンの民)を大量処刑して、フラーマを抽出することを指示します。
彼はそこまでフラーマ中毒に陥っていたのでした。
ダグザ
・ラクシャよ、儂が神祖に並ぶためには、あと100万余の人間の魂が必要ど言っていたな。
ラクシャ
・その通りにございます。
それ故に、サラミスの国を滅ぼさなければなりませぬ。
ダグザ
・よく考えてみれば、そんな必要などなかったのだ。
サラミスの連中を捕らえ、生贄にするなどという回りくどいことをする必要など。
ラクシャよ、100万の魂はここにある。このダグシオンに初めからいるではないか。

建国の君主は、途中から完全に狂っていたのです。ダマスカルの8月事件の時点で、既におかしかったのでしょう。
ブロンテス湖の謎
少し脱線しますが、気になる情報があります。
ダマスカルの8月事件が起きたキュベレーと、ほど近い場所にブロンテス湖があります。ニネを仲間に誘う際に要求される、カガヤキウオが採れる場所です。
トロイアによれば、このブロンテス湖は、光の杭が落ちた痕跡だとされています。
セオドラ
・お前(※ボナパルテ)も見たことがあるだろう?
キュベレーにあるブロンテス湖を。
トロイアが言うには、あれは昔、星(※光の杭)が落ちた痕跡なのだそうだ。信じられるか?
これも謎設定の一つですが、ダマスカル王国を守ろうとしたトロイアが、緊急で光の杭を発動したのかもしれません。
作中に登場した、光の杭を操れる人物は、調停者トロイアしかいません。
彼女はアグリス関の戦いにおいて、巨竜に顕現したダグザ大帝に光の杭を撃ち込み、これを撃退しています。長きにわたる恨みを果たし、民族の溜飲を下げた瞬間でした。
なぜ処刑した?
ここまで見てきた内容で、ダマスカルの8月事件はおおよその推測がつきましたが、一つ大きな謎が残されています。
それはなぜ、ユ・ファスを処刑する必要があったのか、ということです。
ミトラス修道会の目的は、バロールを復活させることですから、姉妹の中では唯一、真面目に鎮魂しようとするユ・ファスは、その障害になっていたのでしょうか。
あるいは、別記事で考察した通り、ユ・ファスの色香に惑って、ダグザ神族が混乱したことも影響しているのかもしれません。
このあたりも、追加DLCで語られることを期待しましょう。
ひとつ手掛かりになり得る、興味深い情報があります。それは「時期」の問題です。次の会話をご覧ください。

アンナ
・ソレル様…かねてから、私は一つ疑問に思っていました。
ミトラス修道会はもともと、ダグザ大帝がラクシャ導師の功績を認め、結成された組織。
ソレル様が神威法王の立場についた時(※帝国歴940年)、彼らを解体することも考えておられた筈です。
それが…なぜミトラス修道会のことを信用なさったのです?
ソレル
・私が、彼らに大きな借りがあるからだ。…私の妻、ユ・ファスの件で。
だが、それによって、これほどまでに歪みが大きくなってしまったのであれば、私はそれを正す必要がある。
それが私の…果たさねばならない責任だ。

ダマスカルの8月事件が起きたのは、帝国歴881年です。その直後にユ・ファスは、ダグザの大釜で処刑されています。
ダグザの大釜が損壊したのが、帝国歴932年です。これでフラーマを絶たれたダグザ大帝は、急速に乱心の度合いを強めていきます。
そして、その8年後の帝国歴940年、錯乱して妻・ジュラを殺そうとしたダグザ大帝を、ソレルら家族が団結してなんとか倒し、これを封印しました。
外向けには「長い眠りについた」と説明して、ソレルが大帝の代行者、つまり神威法王に就任します。
ジュラ
・500年ほど前、ダグザ大帝は一度正気を失い、世話係を皆殺しにしてしまったことがありました。
止めようとした私ですら殺されかけました。
そこに「赤き斧」を持ったソレルが現れました。
私たちは必死になって大帝を倒し、それを納めた棺を密かに封印したのです。
周囲にはダグザ大帝は長い眠りについたと説明し、ソレルがその代行者としての地位につきました。

ユ・ファスの処刑から、ソレルの法王就任までは59年であり、神々の時間軸で考えれば、ごく短いことになります。
そして、ソレルが神威法王に就任した時点で、既にミトラス修道会に「大きな借り」があったことになっています。
わずかな間隙に、イリアナがユ・ファスに擬態して、ソレルに取り入り始めていたのです。
その結果、ソレルはミトラス修道会を解体する機会を逸したばかりか、その操り人形になっていくわけですから、ここにも作為的なものを感じざるを得ません。
やはりユ・ファスの処刑は、ミトラス修道会が黒幕だと考えるべきでしょう。
破戒僧・楊界
最後に、白き卵の民つながりで、意外な人物を紹介しましょう。
それは破戒僧・ヨーカイです。
ディートリヒ編で、最初の傭兵候補として、並みいる美女を押しのけて彼が登場した時、がっかりした方は多いでしょう。
ヨーカイは優秀な回復役ですが、登場のタイミングが「そこじゃないだろ」ということで、やや不当な批判を受けました。おじさんの扱いは、いつだって不当です。
そんなヨーカイは、実は白き卵の民だったのです。
アナトリア
・おや? あれはヨーカイ…随分盛り上がっているようですね。
彼もまた、調停者たる僕が守るべき存在。ああして楽しそうにしているのは良いことです。
ヨーカイ
・では、とっておきを聞かせてやろう!
「星」と呼ばれる古代兵器(※光の杭)があってのう!
おおっと、こいつに関する知識は秘密だぞ!
禁断の地(※コンロン)の掟に背いたと言われてしまうわ!
アナトリア
・掟のことまでべらべらと…!看過できません!
(中略)
まったく、いくら何でも口が軽すぎます。「アルテミス」のことまで喋るなんて。
万が一、神殿の密偵にでも聞かれて、目をつけられたらどうするのですか?
どこに敵が潜んでいるかわからないのですよ。
神殿の中にはいまだに僕たちを敵視している者も…
ヨーカイ
・運否天賦、なるようになるわい。それがしはかつて神官(※コンロンの敵方)だったこともあるのだぞ。
アナトリア
・ええっ!? 白き卵の民の血を引いているのに…ですか!?

ヨーカイ
・祖父からコンロンの惨状や裏切った調停者(※シュキオン)のことを散々聞かされておったからのう。
だが、お主をしばらく見て驚いたわい。何とも生真面目な娘っ子だとな。
ヨーカイ
・それがしの祖父は、コンロンの里での生活に耐えられずに、命からがら逃げだした者だ。
そして、ボンバエの隠れ里にて孫…つまり、それがしと暮らしていた。
続きまして、これも小ネタですが、ヨーカイの名前には、白き卵の民の伝統を覗かせる理由がありました。
こういう細かな設定は、ファンには興味深いですね。
アナトリア編で、白き卵の民の伝統文化が語られるのを見てみたいです。
どうやらユダヤ人をベースに、東アジアの要素を加味した扱いになっていますが、現時点では謎めいた集団です。
サラン
・それにしても、ヨーカイはよく飲むわね。
元神官だっていうのに、まるで堅苦しくないわ。
ヨーカイ
・ははは、さもあらん。それがしは「楊界」、世をしなやかに渡る者、だからな。
サラン
・…あら、それってひょっとして古代文字の話?
あなたもコンロンに連なる者だものね。
ヨーカイ
・うむ。かく言うサランも同じように、古代文字の名を持っているのではないか?
サラン
・ええ。私の「沙蘭」は、砂漠に咲く薔薇という意味だそうよ。
日本がモデルと思われる「サイの国」も、いつか陽の目を浴びる日が来るのでしょうか。
注
この記事は個人の考察であり、任天堂及びインテリジェントシステムズ社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
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