復讐のアガルタ
地下に追いやられたアガルタ人は、常にソティスと竜族(ナバテア人)に対する復讐の機会をうかがっていました。
アガルタの視点で、最も悲願成就に迫ったのは、解放王ネメシスを手先にして、フォドラに騒乱を起こした時でした。
この時は、盗賊の首領ネメシスに、聖墓で眠りにつくソティスの亡骸を奪わせ、その心臓と骨から「天帝の剣」を作って、ザナドに暮らすナバテア人を虐殺しました。
サラリと書きましたが、これは次のような奇跡が重なった、確率的には稀有の快挙です。
・ソティスの亡骸を奪うことに成功した。
・天帝の剣を作ることに成功した。
・ネメシスがソティスの血を取り入れて、炎の紋章を発現させた。
これだけの偶然は、数千年に一度の好機でしたが、結局はソティスの末子セイロスの奮戦によって、夢が断たれてしまいます。
オープニングで描かれたタルティーン会戦は、勝利の目前に迫ったアガルタを砕く、ナバテア側の見事な逆転劇でした。

フォドラ争乱の黒幕
アガルタ人がフォドラ社会に介入したのは、ネメシスの争乱だけではありません。
中世においては、獅子王ルーグと結託して、アドラステア帝国を分割することに成功しています。
獅子王ルーグは、闇に蠢く者たちの力を得てファーガスの乱を起こし、帝国軍に大勝してファーガス神聖王国を建国しました。
帝国歴 747年 ファーガスの乱
・かつて帝国と争った氏族の子孫、ルーグが帝国からの独立を求めて挙兵す。
ファーガス地方を巻き込んだ争乱となる。
この一連の争乱を「鷲獅子戦争」とも呼ぶ。
帝国歴 751年 タルティーンの戦い
・ルーグら独立軍が帝国軍に大勝。
セイロス聖教会が二者を仲裁し、ファーガス地方はファーガス神聖王国として独立す。
歴史上は伏せられていますが、騎士団諜報部はアガルタ人の暗躍を察知していました。
報告書の燃えさし 第十八項の五
・…ファーガスの乱。ルーグの挙兵には幾つかの疑問点がある。
帝国に気取られず兵を集められた理由。
彼らが使用した、英雄の遺産に類似する謎の武具の入手方法。
ルーグを助け、その軍略のすべてを差配したという軍師パーンの正体。
彼もまたフォドラの闇に蠢き、主に…
奇しくも、解放王ネメシスがあと一歩まで迫りながら、敗れ去ったタルティーン平原で、獅子王ルーグは帝国軍に勝っています。
これはアガルタ視点で見れば、因縁の地でリベンジを果たしたことになります。
フォドラ三国志 byアガルタ

アガルタの暗躍はこれで終わらず、次はファーガス神聖王国を分割して、レスター諸侯同盟が成立するようにお膳立てをしました。
フォドラ大陸における三国の鼎立は、アガルタが裏で糸を引いていたわけです。
帝国歴 801年 レスター大乱
・帝国のレスター地方で内乱が勃発す。帝国軍は鎮圧に失敗。
神聖王国がこれに乗じてレスター地方を制圧し、領土とす。
帝国歴 861年 ファーガス神聖王国分裂
・国王クラウス1世の崩御に伴い、3人の王子がそれぞれ大公となり、王国を三分割して統治す。
帝国歴 881年 三日月戦争
・王国のレスター地方を治むる大公が病没す。
レスター地方の諸侯は、次の大公を立てず、諸侯の共同体となることを画策す。
帝国歴 901年 レスター諸侯同盟領の成立
・諸侯同盟に反目する諸侯を討伐し、ファーガス地方からの干渉も排除したリーガン公を中心に、同盟領が成立す。
こちらも歴史上は伏せられていますが、騎士団諜報部は真相に迫っています。
報告書の燃えさし 第二十二項の二
・…ファーガス国王クラウス1世は暗殺された、というのが騎士団暗部の見方である。
後継者を定めず、3人の王子に領土を三分割するという狂気に満ちた遺書が偽物であるというのは、誰でも考えることだ。
その目的はレスター地方を加え、帝国を上回る勢いを見せるファ…
光の杭と煉獄のアリル
アガルタは専ら工作活動によって、フォドラに騒乱を生んできましたが、直接攻撃を仕掛けたこともありました。
ソティスを手負いにした伝家の宝刀「光の杭」です。
アガルタは、光の杭でガルグ・マクを狙いましたが、ソティスの加護によって、その試みは失敗に終わりました。
ガルグ・マクに落ちるはずだった光の杭は、不自然に軌道を変えて近郊のアリルに落ち、そこを煉獄の焦土と化しました。
ソティスが築いた聖墓は、永眠の場であると同時に、「破邪の力を宿す巨大な神器」だったのです。

クロード
・…しかし妙だな(中略)
光の杭のことだよ。メリセウスでは、あれで俺たちを殺そうとしたよな。
じゃあ、何でガルグ=マクにあれを落とさないんだ?
俺たちがここにいることくらい、とっくに知っていそうなもんだが…。
レア
・それは…落とさないのではなく、落とせないのです(中略)
かつて、この大修道院にも巨大な光の塊が落ちてきたことがありました。
ですが、その光は上空で俄かに軌道を変え、大修道院ではなく、アリルに……。
レオニー
・煉獄の谷アリル…あれは、光の杭の爪痕だったのか。
レア
・聖墓は神祖永眠の地であると同時に、破邪の力を宿す巨大な神器…。
神祖は邪なる光より眷属を守るため、自らの手で聖墓を築いたのだそうです。
クロード
・それで女神の眷属たちは、修道院に近いザナドに寄り集まって暮らしていた…?
ジュディット
・ヒューベルトの手紙には、要塞陥落時に魔道を感知したって書いてあったよね。
つまりは奴らが光の杭を使ったことで、ヒューベルトは拠点を突き止められたんだ。
レオニー
・じゃあ、拠点を知られたくなかったから、今までは使わなかったってこと?
光の杭による攻撃は、この時だけだったようです。
ソティスの加護によって防がれてしまう上、光の杭を打つと潜伏場所がバレるため、アガルタ側も安易に使うことはできませんでした。
セイロス教会が隠した技術革新
光の杭という超兵器からも分かる通り、アガルタ人は現在のフォドラ人より優れた文明を築いています。
セイロス教会が支配的な地上では、宗教上都合が悪い技術が抑制されるのに対して、地下にはそうした制約がありませんでした。
ガルグ・マクの地下アビスにある書物には、教会が禁止した技術に関する記載があります。
・眼鏡を元に作られた、遠くを見るための道具。
眼鏡の鏡部分を二枚重ね合わせることで、遥か遠くをはっきりと見られるようになる。
大司教は以下の三つの危険性を挙げ、作成を禁じた。
「敵陣の把握による戦争の激化」
「遠方からの狙撃が容易に」
「天の観察による主の神秘性の減退」
これはおそらく望遠鏡を指しています。
セイロス教会は戦争利用を懸念していますが、望遠鏡は航海術や天文学とも強い関連があります。
大航海時代の到来や外界との接触は、セイロス教会が望まないことだったのでしょう。
・燃える黒水。ファーガス北部で発見された、粘ついた黒色の液体。
激しく燃え、悪臭と有毒な空気を発する。
大司教は以下の危険性を挙げ、邪なるものとして利用を禁じた。
「誤って使用しての事故死」
「魔法を使えない者の戦術的利用」
「争奪による対立の発生」
これはおそらく石油を指しています。
石油は近代文明に欠かせない資源です。神祖と争ったアガルタのように、文明が発達し過ぎることの恐怖が、レアには身に沁みているのでしょう。
・金属製の字型を使用した書物の制作機。
当初、木版に代わる有用な発明として歓迎されたが、熟考を重ねた結果、多くの理由により禁忌となった。
大司教は以下の理由を特に挙げた。
「誤った情報や悪意のある噂が流布される危険」
「字の読めない平民にとって無益」
「教会同士の対立が激化する恐れ」
これはおそらく活版印刷術を指しています。
活版印刷術は、中世ヨーロッパにおいても、聖書の大衆化を促したことで、宗教戦争を起こす引き金になりました。セイロス教会としては、看過できない技術だったようです。

・人体の解剖、妄りな頭や胸への切開。
医学的に役立つとの主張が根強くあったが、遺体を辱める行為が死者への冒涜であり、白魔法の発展により解決できるとして禁忌となった。
枢機卿の一人が、信仰を必要とする白魔法に医学が勝ることがあれば、教会の地盤が揺らぐと強固に主張した。
これはおそらく解剖学を指しています。
医学の発展が、教会の白魔法を脅かすことを懸念しています。既得権益らしい保守的な発想です。
セイロス教はこうした技術を禁止しましたが、アガルタの地下文明は、先進技術を積極利用していたと思われます。
その割りには、「他人に化ける」という魔術のような工作活動を好んでいますが。
最高傑作・炎帝エーデルガルト
アガルタは、古代では解放王ネメシスを、中世では獅子王ルーグを傀儡のように操りました。
彼らがどこまで支配されていたのかは分かりません。彼らは彼らで思惑があり、傀儡にされていたというより、相互に利用していたのかもしれません。
その触手は、現代では炎帝エーデルガルトに向けられました。
アガルタはフレスブルグ家を乗っ取って、皇帝イオニアス9世を無力化し、その子息らに「血の実験」を施しました。
ほとんどの子は失敗して亡くなりましたが、唯一エーデルガルトだけは生き延びて、後天的に炎の紋章を宿すことに成功します。
「炎帝」の名は、もちろん炎の紋章に由来しています。
これはアガルタ視点で言えば、古代のネメシス以来の快挙でした。
彼らは夢破れたタルティーン会戦から、約1,100年の長きにわたり、炎の紋章の再現に心血を注ぎ続けて、ようやくエーデルガルトという手駒を得たのです。
アガルタの首領タレスは、エーデルガルトをして「最高傑作」と呼んでいます。
タレス
・おぬしは我らの最高傑作。
穢れた獣の血を薪とし、神をも燃やし尽くす炎なのだから。
今こそ、その力でフォドラを洗い流す時。
それこそが、我らの救いとなる。

エーデルガルトは、アガルタに人生を狂わされましたが、しかし傀儡ではありません。
彼女には、フォドラの貴族制度を潰すという思惑があり、そのために闇に蠢く者たちと一時的に手を組んでいます。
互いに利用し合う関係でしたが、アガルタから見れば、やはり優秀な工作員ということになるのでしょう。
実際にエーデルガルトは、アガルタの望み通りフォドラ大陸に戦乱を起こして、セイロス教会の根城ガルグ・マクを壊滅させています。
なお、アガルタの工作を受けたのは、アドラステア帝国だけではありません。
タレスはアランドル伯に化けて帝国に浸透しましたが、クレオブレスはコルネリアに化けてファーガス神聖王国を混乱に陥れました。
ディミトリの人生を狂わせた「ダスカーの悲劇」を、裏で操ったのもアガルタの民でした。
元ネタ
地下王国アガルタ
アガルタ人には、元ネタがあります。
19~20世紀のオカルト界隈で、ヒマラヤの山中など、アジアの地下に存在すると信じられた王国があり、それが「アガルタ(Agartha)」と呼ばれました。
今でいう都市伝説の類ですが、地底に広がる高度な文明を持った理想郷、あるいは世界を裏で導く聖地と、一部の人には考えられていました。
作中において、アガルタの民は地下都市シャンバラに潜んでいますが、シャンバラはチベット仏教に登場する理想郷であり、サンスクリット語で「幸福を集めた場所」を意味します。
一方、ナバテア人が棲んだザナドは、ザナドゥに因んでいるようです。
ザナドゥは、元朝の皇帝フビライ・ハーンが築いた上都であり、シャンバラと同じく理想郷を意味します。
この二つの単語は、風化雪月に限らず、多くの作品において採用されています。
レプティリアン?
アガルタの元ネタは明確ですが、ナバテアの元ネタはよく分かりません。
竜族(ナバテア人)を連想させるものは幾つかありますが、私は「レプティリアン」を連想してしまいました。
レプティリアンとは、地球を裏から支配するとされるヒト型の爬虫類です。
爬虫類が人間に擬態して、社会に溶け込んで暮らしており、王族・政治家・富豪など影響力のあるポジションを占めていると、この説は主張しています。
これもまたアガルタと同じく都市伝説の類であり、一部の陰謀論者が好んで取り上げることがあります。
現世界の支配層であるアングロ・サクソン系は、掘りが深い顔立ちが多いので、見ようによっては爬虫類的に映るのかもしれません。
レプティリアンの概念は、イギリスの著述家デイヴィッド・アイクらが1990年代以降に広めました。
竜は爬虫類を連想させる上、竜族(ナバテア人)は人間に擬態して、フォドラ宗教界の要職に溶け込んで影響力を行使しています。
また、竜族の血が濃く出た紋章持ちは、フォドラ社会の貴族階級とされます。
半人半竜が社会を支配しており、かつ大衆はそれを認知していないため、レプティリアン説と似ている点があると言えばあります。
注
この記事は個人の考察であり、任天堂及びインテリジェントシステムズ社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
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