性格の悪い女
前回、マリアがどこへ消えたのかを考えましたが、今回はその姉イリアナのその後について考えてみましょう。
彼女もまた、第1部で黒幕感を漂わせながら、プツリと消息を絶ってしまい、第2部以降に姿を現しませんでした。
マリアのように、冥界兵として召喚されることもなく、文字通り消えたわけです。愛玩具オットーちゃんとともに。
いつかボスとして戦うことになるだろう、と思った方は多いのではないでしょうか。
作中随一の性格の悪さなので、成敗される瞬間のカタルシスが欲しかったのですが、クリア後に残ったのは謎のモヤモヤ感だけでした。
イリアナ
・アハハハハハハ!可笑しい!
ねえ、どんな気持ち?
愛した者が、お腹を痛めて産んだ子供が、自分より先に死んでしまうって!?
私ね、とても興味があるの!
イリアナ
・この子ったらおかしいわ、ライラーお姉さま。
マーナ(※マリア)ったら、人間相手に本気で恋をしているのだもの。
まるで無駄なことをしている愚かな子を見るのって、楽しい!

イリアナ
・ふふ、それにしても…
自分の足元がここまで揺らいでいるなどと、あの男(※ソレル)が気づいた時にどんな顔をするのかしら。
本当に楽しみだわ、ねぇ、オットーちゃん。

バロールの器
イリアナの使命
イリアナは、果たしてどこへ消えたのでしょうか。最初に言い訳しておくと、答えはよく分かりません。
結論は推測の域なのですが、一つ興味深い手掛かりがありますので、まずそれを見てみましょう。
イリアナ
・お父様(※バロール)…ついに再会できるのね。
そうなると、オットーちゃんとも、もうすぐお別れね。少し名残惜しいわ。
マリア
・お姉様、ようやく吹っ切れたみたいね。
そうであってもらわないと困るわ。
お姉様には、最後の最も重要なお役目を果たしてもらわなければならないのだから…
イリアナ
・どんな気分なのかしら…自分の父親だけでなく、冥界そのものをこの顕世(うつしよ)に産み落とすって。
あぁ…早く見てみたい! 私はその瞬間が待ち遠しいわ!

この会話を見る限り、イリアナは最初は躊躇していたことを、やがて吹っ切れて自分の使命として受け入れ、自発的に望むようになりました。
それは何かと言えば、父親と冥界を顕世に産み落とすことです。
この発言を根拠とすれば、イリアナは「バロールを産むための器」だったことになります。
そうであるなら、途中から消えてしまったことも、冥界兵として召喚されなかったことも、一応の筋は通ります。マリアのように死んではいないからです。
ライラーの使命
しかし、ややこしいのは、次の似たようなやり取りです。
マリア
・いっときの感情に流されて、本来の目的を忘れてしまうなど、絶対に許されないのだから。
ラクシャ
・わかっている。私たちは、そのために多くのものを捧げてきたのだから。
マリア
・…そうであってもらわなければ困るわ。
特に「無明の天冠」を宿すお姉様には、お父様を再びこの地上に受肉させるという、何よりも大切な役目があるのだから。

この会話によれば、ライラー(ラクシャ導師)には、バロールを「この地上に受肉させる」役割があるとされます。
辞書を引くと、「受肉」とは、神が人間の姿をとって現れることとあります。元々は、キリスト教で使われ始めた単語でした。
どうやらライラーにも、バロールの復活に際して、「器」的な役割があるようです。
比較してみましょう。
イリアナの役割
・バロールと冥界を、顕世に産み落とすこと。
ライラーの役割
・バロールを、地上に受肉させること。
言いたいことは何となく分かりますが、文言だけを見ると、この二つの違いが今一つピンと来ません。
単なる復活ではなく…
そこで少し角度を変えて、今度は鍛冶の神・クレールの発言を見てみましょう。
やや長くなりますが、説明文として優れているので、そのまま掲載します。
クレール
・フラーマには人間の生命力と魂が溶け込んでいる…
もし、ラクシャがすでにバロールの心臓を手に入れているとして…
おまけに、これまでミトラス修道会が集めたドレイクの財宝…
そこに、けた違いに凝縮したフラーマ。
これを注ぐと、いったい何が起きる…?
…まさか、バロールを復活させることがラクシャたちの目的なのか!?
いや、理屈としてはあり得る…
だとしても、これほど大掛かりな仕掛けが必要な理由が…
それとも単純な復活が目的じゃない…のか?
でも、そんな馬鹿なことが…
もしかすると、奴らが企んでいるのは、もっと遥かに危険なことなんじゃないか…?
(中略)
バロールはナバテアの最古の7人で、神祖が直接生み出した君主の1柱だ。
君主としてのバロールの支配地は冥界…
じゃあ、冥界はどこにある?
そこは、高次元に存在する閉じた空間で、バロールの魂の内側にある、ある種の場だ。
まさか…いや、いくら何でも、そんな…あり得な…くはない。
これはあり得る!
まさか、ラクシャは始めからこれを狙って僕たちに近づいてきたっていうのか?
1400年前、自分の正体を偽って、僕たちの前に初めて姿を見せた時から?
いやもっと昔…もしかすると、兄さんとユ・ファスが出会ったその直後から?
みんな! すぐに「ダグザの大釜」に向かってくれ!
急いで彼女を止めないと!
ラクシャの真の狙いは恐らく、この地上にバロールの世界を…冥界を生み出すことだ!

クレールの推測によれば、ミトラス修道会の目的は二段階です。
第一段階は、バロールを復活させること。
第二段階は、バロールの世界(冥界)を、地上に生み出すこと。
イリアナとライラーは、似たような使命を負っていましたが、おそらくこの二つに対応した役割なのでしょう。
つまり、イリアナが第一段階の器であり、ライラーが第二段階の責任者です。
神祖への反逆
クレールの発言には、重要な前提があります。
それは7柱の君主の支配域は、神祖ソティスによって定められており、互いの領域には不干渉の原則があること。
たとえば、ダグザの領域はダグザ大陸ですから、いかにそこの君主とは言え、フォドラ大陸に干渉することは許されません。
同じように、バロールの領域は冥界ですから、そこを出て地上に干渉することは許されません。

この前提に照らせば、ミトラス修道会の狙い、すなわちバロールと冥界を地上に受肉させることは、神々のルールを犯すことが分かるでしょう。
神祖ソティスに対する、明確な反逆になります。
だからこそ、クレールは最初は発想もせず、しかし考えていったら「まさか…!」と気づいたのです。
ミトラス修道会が集めていたフラーマは、バロールを単に復活させるのであれば、過剰な量だったようです。
その用途は復活の先、つまり領域干渉にありました。
因みに「冥界」とは、バロールの魂の内側にある、高次元の閉じた空間を指すとあります。
上記のクレールの発言のほか、イリアナも似たような説明をしています。
イリアナ
・冥界とは、お父様の魂の内側にある空間。お父様の精神が形作る異形の世界。

これを地上に、つまり他の神の領域に展開しようというのが、ミトラス修道会の真意だったわけです。
要は、神祖が定めた律を破って、君主間の戦争を仕掛けたのです。
防衛側の君主・ダグザ大帝が、冥将として部下に落ちているのが笑えるところですが。
役立たずの君主に代わって奮闘したのが、神祖の写し身たるフォトナでした。
形態を変えて登場
ライラーがやったことは、ダグザ大陸の各地に冥界の門を開いて、大量の魂を集めつつ、完全な日蝕を待つことでした。
これが、冥界を「地上に受肉させる」ことを指しているようです。言うなれば、領域干渉のための儀式です。
ライラー
・お父様、お待たせいたしました。私たちは、ようやくこの時を迎えました。
あらゆる者たちを謀り、贄として捧げ、ここまで本当に…長い、長い道のりでした。
ですが、私たちは遂にここに至ることができました。
そう、その御身と魂に内包されし冥界を、この顕世に受肉させるその時が!
(中略)
私はお父様を再びこの顕世に産み落とす母となりましょう。
一方、イリアナは、次の一部または全部の器となることが、その使命だったと思われます。
・邪竜バロール
・冥界という空間そのもの
・冥界の柱
そして、使命を果たした時、自我は失われてしまったのでしょう。
イシュマールは、ソレルの心臓を基にして、ジョカの人工子宮で肉体を製造しました。
同じように、バロールの心臓(とドレイクの財宝)を基にして、イリアナがその肉体を形成したのかもしれません。
冥界の柱というのは、バロールを倒した後に登場する、不気味な卵のような存在です。
最後、フォトナとイシュマールの二人だけで、冥界の最奥に乗り込みますが、その時に発見した次の画像の物体です。

乱暴に比喩すれば、バロールの心臓を「卵子」的なものとして、イリアナが「胎児」的な役割を果たし、ライラーが「出産」的な役割を果たしそうになったのではないかと、私は推測しています。
もしこれが正しければ、イリアナは消えたというより、形態を変えて登場していたことになります。
ただ、流石に分かりにくいですね。もう少し納得しやすい説明があっても、よかったのではないかと思います。仮に正しかったとしても、初見で理解するのは難しいでしょう。
注
この記事は個人の考察であり、任天堂及びインテリジェントシステムズ社の見解ではありません。
内容の正確性を保証するものではなく、作品をより楽しむための娯楽的推測であることをご了承ください。
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